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45 伝説のドライドンって、どんな怪物だよ

 透明度が高いとはいえ、おれにはまだ何も見えない。

「河童スーツ、ビューワーで拡大しろ!」

「了解ちまちた」

 ゴーグルの内側に拡大画像が映し出されたが、よく見えない。

「どこにいるんだ?」

 画面に小さな矢印の表示が出た。

「ここでちゅ」

「はあ? なんかちっちゃいクラゲみたいのが映ってるけど、これが中央湖にむという伝説のドライドンとでも言うのか?」

 だが、それは距離感の問題だった。相当深いところから上がって来ているらしく、クラゲみたいなものはぐんぐん大きくなり、すぐにビューワーのフレームにおさまり切れないほどデカくなった。

「通常のサイズに戻せ!」

「もう戻ちてます」

「ええっ、ウソだろ。ビューワーを切れ!」

 改めてゴーグル越しに裸眼らがんで見ても、信じられないほどのデカさだ。クジラ並みじゃないか。近過ぎるし、体が半透明なので、全体の形がよくわからない。

 亜空間通信が入ってきた。

『荒川じゃ。そいつが恐らくドライドンの正体しょうたいじゃろう。以前、湖底の温度を調べるためにもぐらせた探査機プルーブが、何か巨大な生物に遭遇そうぐうした後、消息しょうそくったことがある。危険な生物かもしれん。もうじきそこにプライデーZが着くころじゃから、きみは一旦いったん離れるんじゃ」

 今しも、おれの横をプライデーZが通り過ぎて行くところだった。おれは水中スピーカーで呼び掛けた。

《あんまり無茶するなよ! 相手はまだ、敵か味方かわからないんだぞ!》

《アイアイサー! 慎重にハルマゲドンに接近します!》

《いや、ハルマゲドンじゃねーし! あ、危ないぞ!》

 プライデーZが近づいているのに、ドライドンが気づいたらしい。体のわりに細長いあしのようなものが、こちらに伸びて来たのだ。

 プライデーZが、魚のヒレのような水中翼すいちゅうよくが付いている魚雷ぎょらいパンチの方をドライドンに向けた。

 いかん。火薬なしの空砲くうほうだから、当たっても大して効果はないし、まだ敵対行動を取るべき時ではない。

《よせ、プライデーZ! かえって怒らせるだけだ!》

 だが、時すでに遅く、魚雷パンチははなたれてしまった。

 パンチが当たる寸前、巨体に似合にあわぬ素早すばやさでドライドンは、脚を引っ込めた。

 と、同時に、口のようなところから、何かをき出した。魚をあみのようなものだ。

 その時になって、おれはドライドンに細い脚が八本あるのに気づいた。恐らく、こいつは水中に適応するように進化したオランチュラだ。水中では糸の粘性ねんせいが低くなるから、あらかじめ網の形にしてから出すのだろう。

 ……などと、暢気のんきに構えている場合ではなかった。

 網のようなものはプライデーZを通り越し、真っ直ぐおれ目掛めがけて飛んで来たのだ。

 しまった、ヤツのねらいは、おれだ。

 逃げる間もなく、河童スーツごとおれの体は網にからめ取られた。

 おれは、イヤなことを思い出してしまった。オランチュラは、元々肉食性だったのだ。

《わーっ、助けてくれー! く、われるーっ! こんな死に方はイヤだー!》

 亜空間通信で、『しっかりするんじゃ、中野くん! あきらめるな!』と荒川氏のはげます声が聞こえて来たが、いくら何でも、相手が巨大過ぎる。

 おれは河童スーツに命じてフルパワーで脱出をこころみたが、網はビクともしない。

 ドライドンは獲物えもの手繰たぐり寄せるように、少しずつ、少しずつ、網を呑み込んでいる。

 今度こそ、絶体絶命だ。おれの幸運とやらも、ここまでか。

 恐怖のあまり気を失いかけた時、記憶に何かが引っかかり、おれは大声でさけんでいた。

《アクラーッ!》

 網が動かなくなった。やったあ、効果があったぞ。ありがとう、森の精霊。

 だが、すぐにドライドンから返事が来た。

《アクラ? PPP▲◇○KK*#WC?》

 しまった。アクラ以外わからないぞ。気軽に外国人に『ハロー!』と声をかけたら、メチャメチャ話しかけて来られたみたいな状況だ。

 ど、どうしよう……。

 パニクッていると、亜空間通信から意外な人物の声が聞こえて来た。

『あたしの声を直接水中スピーカーにつなげて!』

「え? シャロン、なのか?」

『いいから、もう! 河童スーツ、あたしの声を水中に出して!』

「了解ちまちた」

 水中スピーカーからシャロンの声が流れたが、おれにはまったく理解できない。

 幸いドライドンには通じたようで、何度かのやり取りの後、シャロンの普通の声が聞こえてきた。

『ふうっ、ようやく説得したわ。あんたを黄金神殿まで案内してくれるそうよ』

「おお、そうか。良かったあ、食べられなくて。助かったよ」

『ふん、あんたのためじゃないわ。ここで失敗されたら、あんたに任せたあたしの責任になっちゃうからよ。頼むわよ、ホントに』

「もちろんさ。必ず、元素転換機を持って帰るよ。期待して待っててくれ」

 シャロンは『ふん』と言って通信を切った。

 強がってああ言ったものの、おれに自信などあるわけがない。どうすりゃいいんだ?

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