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40 やっぱり、おれが行かなきゃダメかよ

 おれの言葉が終わるや否や、シャロンが反応した。

「あら、あたしは一緒はイヤよ。行くなら一人で行ってちょうだい」

「誰も、おまえとは言ってない。おれが連れて行くのはプライデーだ」

 荒川氏から不安の声が上がった。

「大丈夫かの? 元は敵方てきがたのロボットじゃろう」

「ああ、それはドクター三角みすみがアシモフ回路を逆につないでいたからで、今はなおってますから」

 シャロンが不機嫌ふきげんな声で「直したのは、あたしよ!」と主張した。

「わかってるさ。それは感謝してる。おかげで仲間が増えた」

 荒川氏が「まあ、いいじゃろう」とうなずいた。

「なんなら、わしが少し改良してパワーアップしておこう。では、事前に中央湖ちゅうおうこについて解説しておこうかの」

 荒川氏はホワイトボードの略図をマーカーの先で示した。

「これは図じゃが、実際の中央湖も、ほぼ真ん丸な形をしておる。中野くんは、何故なぜじゃと思う?」

「えーと、もしかして、人工的に作られたものですか?」

 シャロンがバカにしたように鼻先で笑った。

「大きさを考えなさいよ。ドーム球場千個分ぐらいあるのよ。カルデラ湖に決まってるじゃん」

 黒田夫人が、少し眉を上げた笑顔で「シャロン?」とたしなめた。

 シャロンも夫人には弱いらしく、ペロッと舌を出して笑った。

 荒川氏は苦笑して話を続けた。

「うむ、シャロンちゃんの言うとおり、中央湖は昔の火山のカルデラに水がまったものじゃ。ちなみに、火山活動が終息しゅうそくしてから数万年はっておる。心配ないとは思うが、最近の調査で湖底こていの温度が急上昇しているのが確認された。万が一、火山活動が活発化するようなことになったら、黄金神殿そのものが失われてしまう。そうなる前に、元素転換機げんそてんかんきを回収したいんじゃ」

 おれの背中を冷たい汗がツーッと流れた。

「あのー、とてもイヤな予感がするんですが、今の話だと、噴火ふんかする可能性がある、ってことですよね?」

「万が一、の話じゃよ」

 そう言われれば言われるほど、不安がつのる。

 黒田氏が「きみなら、きっと大丈夫だ。わがはいは信じている」とはげましてくれたが、少しも気持ちは高揚こうようしない。

 シャロンが「やっぱり、あたしが行くわ」と言い出さなければ、断りたいくらいだったが、そう言われては決心するしかない。

「いや、おれが行くよ。乗りかかった宇宙船、って言うじゃないか。はは、はは」

 自分の笑えないジョークに自分で笑ってみせたが、笑顔が引きつっているのが自分でもわかった。

 荒川氏がホッとしたように「ありがとう、中野くん」と微笑ほほえんだ。

「そうと決まれば、善は急げじゃ。水中用カラス天狗スーツを持って来よう。おお、そうじゃ。ついでに、そのブレードランナーとかいうロボットにも、ここに来るように言っておこう」

 どうしたらプライデーがブレードランナーに聞こえるんだよ!

 荒川氏が出て行くのと同時に、モフモフも「中野さま、よろしくお願いいたします。申し訳ありませんが、わたくしは一旦いったん職務に戻らせていただきます」と告げて退室した。

 それを見送って、黒田夫人が「中野さん、危ない橋を渡らせて、ごめんなさいね」と頭を下げた。

「あ、いえ、去年、文字どおり危ない橋は何度か渡りましたから」

 夫人は少し安堵あんどしたように、「ふふふ、そうだったわね」と笑顔を見せた。

《地球人の若者よ、いや、中野くん》と、またしても突然、森の精霊の声がした。

「わっ、あ、はい」

《神殿で、もし、困ったことが起きたら、『アクラ』と叫びたまえ。われらの古代語で、『友』という意味だ》

「はあ、ありがとうございます」

 一応礼は言ったものの、湖の底にオランチュラがいるわけはない。

 シャロンが「わかんないわあ。なんでみんな、こいつを助けるの?」と不満を述べた。

 おれが反論する前に、黒田氏が「そこが大事なんだよ」と笑った。

「昔、中国大陸に空前の大帝国を作ったかん劉邦りゅうほうは、あまりにも何もできないため周囲がほうって置けず、みんなが何くれとなく力を貸してくれたおかげで天下を取ったという。まさに、中野くんのようではないかね」

 いきなり古代中国の話になって、おれは面食めんくらってしまった。

「えーと、それってめられてます? それとも、けなされてます?」

「もちろん、褒めておるのさ。きみこそ、黒田星商せいしょうの未来の……」

 そこまで黒田氏が言ったところで、夫人がそでを引いて「あなた、あなた」と止めたが、時すでに遅く、シャロンがバンとテーブルをたたいた。

「冗談じゃないわ! いくらおじいさまだって許せない!」

 シャロンは、そのまま部屋から飛び出して行った。

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