27 本当に助けは来るのかよ
プライデーは、急いで黄色の【非常時ルーフロック】というボタンを押した。
間一髪、ウイーンという音と共に天井が閉じたが、ゴルゴラ星人たちはお構いなしにガンガン体当たりをかましてくる。
「すみません。相手をちょっと甘く見ていました。テヘッ」
そう言って、プライデーはペロッと舌のようなものを出した。
「テヘペロじゃねえよ! どうすんだよ! おまえのボディはソフトビニール製だから食われないだろうけど、おれは生身だぞ!」
「おお、そうでした。それでは一矢報いるため、わたしのスプリングパンチを一発お見舞いしてやりましょう」
「一発で済むかよ! 相手は何十人も、ん、待てよ」
おれは昔の政治家が言ったという、敵の敵は味方、という言葉を思い出した。
「プライデー、おまえのそのスプリングパンチは、何メートルまで届く?」
「およそ十二メートルです」
「うーん、ギリギリかな。まあ、やってみる価値はあるだろう。いいか、よく聞けよ。今から一瞬だけ天井を開いて、バグケラスに向けてスプリングパンチを打て」
「え? それは何故ですか?」
「理由を説明する暇はない。とにかく、バグケラスを一発殴ったら、すぐにパンチを戻して天井を閉めるんだ」
「おお、なんとなくわかりました。やってみます」
おれたちはゴルゴラ星人の体当たりが途切れる瞬間を待った。
「よし、今だ!」
「はいっ!」
プライデーが緑色の【ルーフロック解除】というボタンを押すと、ウイーンという音と共に天井が開いた。
すでにバグケラスがいなくなっていたらという不安が頭をよぎったが、食糧としての価値がなくなったためか、まだその場で、強化プラスチック製の鎖に繋がれたままだった。
果たして、アフリカ象より巨大なバグケラスに効き目があるのか。
いや、迷っている場合じゃないぞ。やってみるしかない。
「プライデー、打て!」
「チェストオオオーッ!」
変な掛け声はともかく、スプリングパンチはスルスルと伸び、バグケラスの顔面に迫った。
が、バグケラスの凶暴そうな顔に届く前に、まるでうるさいハエでも払うように、短い前脚でパチンと叩き落されてしまった。
「やべっ。プライデー、天井を閉めろ!」
「えっ、でも、まだパンチの回収が」
そう言っている間にも、ポッドの天井が開いたことに気づいたゴルゴラ星人たちが、こちらに向かって押し寄せて来ている。ああ、万事休すか。
と、その時。
「GAGAGUGYAON!!!」
天地が震えるような咆哮が響き渡った。
プライデーのへなちょこパンチが功を奏し、バグケラスの怒りに火が点いたのだ。バギーンという大きな音がして、鎖が引き千切られた。
それを見て、周囲のゴルゴラ星人たちは、我先に逃げ出した。闘って勝っても食べられないから、戦意がないことおびただしい。
「よし、やったぞ!」
「やりましたね、ドラード臨時政府特別暫定保安官補佐見習いさま!」
「その肩書は、もういいよ。なんだか恥ずかしい」
「そうですか。では、やりましたね、ボス!」
それもよせと言おうとした時、開いたままの天井の端っこに、カギ爪の生えた鱗だらけの腕がぬうっと出て来た。続いてもう片方の腕、そして牙を剥き出した凶悪な顔が見えた。
おそらく、先頭に立っていたボルゲとかいう村長だろう。
『よくもやりやがったな。今思い出したが、地球でイトコのバラゲを逮捕する手助けをした中野という学生は、てめえだろう!』
もう、どうして、どいつもこいつも、おれを逆恨みするんだよ。恨むなら、元子だろう。
すぐに、おれを庇うようにプライデーが前に出た。
「ここはわたしに任せて、逃げてください、ボス!」
プライデーは入って来ようとするボルゲを止めようと立ちはだかったが、まだスプリングパンチが伸び切ったままなので、片腕一本しか使えない。ジリジリ押されている。
「くそおっ、おれはどうすりゃいいんだ」
そう呟いて、おれは自分の胸に手を当てた。
あれ、これは何だ?
ああ、荒川氏からもらった笛か。困った時に吹けと言ってたな。
うーん、ものは試し、やってみるか。
おれは胸ポケットからホイッスルのような木の笛を出すと、思い切り吹いた。
「ピロピロピー! ピロピロピー! ピロピロピー!」
すると、何か黒い影のようなものが、スーッとおれたちの頭上に飛んで来た。
「あっ、おまえは!」




