表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/54

26 ストライク三つなら、アウトだよ

あわてなくても大丈夫ですよ」

 プライデーはやけに落ち着いた声でそう言うと、赤い【エンジン停止】というボタンを押した。

「な、何すんだよ! おれを殺す気か!」

 おれは一瞬、プライデーのアシモフ回路がまたこわれて、再び悪の手先てさきに戻ったのかと思い、ふるがった。

 だが、プライデーはエンジンが停止したのを確認すると、ポッドの天井からブラ下がっているかわのようなものをグイッと引いた。

 すぐにシュパパパパッというような音がし、ガクンと落下速度が落ちた。

「非常用パラシュートを開きました。遠くへは行けませんが、とりあえず安全に着陸できると思います。その間に、ちょっと失礼して、充電させていただきますね」

 プライデーはボディからプラグを引き出すとポッドのコンセントに差し込んだ。

「うーん、今日も元気だ、電気が美味うまい」

 おれは何か文句を言ってやろうとかまえていたが、その様子を見て自分の空腹を思い出してしまった。ええい、おれだってってやる。

 シャロンからもらったハンバーガーにかぶりつきながら、ポッドの小さな丸い観測窓から外の様子をうかがった。多少風に流されているが、落下速度はかなりゆるくなったので、墜落ついらくの心配はないだろう。

 問題は、どこに着陸するのか、である。

 観測窓では真下が見えないため、おれはアンダービューモニターのスイッチを入れた。

 風に吹き戻されたせいか、難民キャンプの上空に戻っていた。

 しかも……。

「おい、プライデー! 急いで補助ジェットか何かかせ! このまんまじゃ、ゴルゴラ星人のキャンプに落ちるぞ!」

「残念ながら、一旦いったんエンジンを停止してしまうと、補助ジェットも使えません」

「なに落ち着いてんだよ! ゴルゴラ星人だぞ! 肉食恐竜だぞ!」

「いえいえ、ゴルゴラ星人といえども、可哀想かわいそうな難民です。いたわってあげるべきです」

 どこまでお人好ひとよし、いや、おロボット好しになったんだよ。それにメチャメチャ会話力が上がって、饒舌じょうぜつになってるし。アシモフ回路がなおったからって、変わりぎだよ。

 おれの心配をよそに、脱出ポッドはまさにゴルゴラ星人の難民キャンプのど真ん中に着陸した。

 すみやかに脱出するためか、ポッドのそこが接地するや否や、パカッと天井が割れ、おれたちの姿は外から丸見えになった。

 すでに周囲は、何十人というゴルゴラ星人に取り囲まれている。

 おれは必死で宇宙語を思い出して、彼らに話しかけた。

『わさしたち、あしやい、もの、ちゃうよ』

 緊張のため、普段以上にヒドい宇宙語で、みんな首をかしげている。

「わたしが話しましょう」とプライデーに言われ、正直、ホッとした。

 プライデーはすっくと立ち上がり、難民キャンプの中心で叫んだ。

『ええい、みなの者、ひかえおろう! ここにおわすおかたをどなたと心得こころえる。おそれ多くも、ドラード臨時政府特別暫定ざんてい保安官ほあんかん補佐ほさ見習みならさまなるぞ! が高~いっ!』

 おれは急いでプライデーの腕を引っ張って座らせ、声を殺してささやいた。

「な、何言ってんだよ、おまえ。そんなこと言ったらケンカになるだろ。第一、そんなセリフ、どこで覚えたんだよ」

「テレビですよ。ドクターが時代劇を好きだったので。でも、言い方はともかく、わたしの言ったことに間違いはないでしょう?」

「そりゃ、間違いじゃないけどさ」

 その時、ゴルゴラ星人側から、プライデーに負けない大音声だいおんじょうの宇宙語が聞こえて来た。

『これは大変失礼いたしました。わたくしは、このゴルゴラ星人難民キャンプ村の村長をつとめます、ボルゲと申します。今この時に臨時政府の保安官がお見えになるとは、まさに天の助け。どうか、お力をお貸しください』

 プライデーがニヤリと笑い、「ね、こういう時は、一発かましてやるのが一番なんですよ」と胸を張った。

「でも、なんか力を貸せとか言ってるぞ。どんな無理難題むりなんだいを頼まれるか、わかったもんじゃないぞ」

「心配いりませんって。わたしにまかせてくださいよ」

 プライデーは再び立ち上がった。

殊勝しゅしょう心掛こころがけである。苦しゅうない、何でも申すが良い』

『ははあーっ、ありがとうございます。実は、わたくしたちは、ちょうど食事の時間だったのですが、大事な食糧しょくりょうを何者かにけがされてしまったのです。是非ぜひとも、その犯人をつかまえ、きびしくばっしてください』

 おれはハッとして、そっと背伸びしてのぞいてみると、黄色いカラーボールのあとが三つ付いたバグケラスの姿が見えた。

 どうして、こっちは三球ともストライクなんだよ!

 おれが、ドッとイヤな汗をかいている間に、プライデーは勝手に返事を始めた。

『ああ、それなら心配ない。そのカラーボールは、こちらのドラード臨時政府特別暫定保安官補佐見習いさまが、悪いドクターを捕まえるために投げられたものだ。気にせず、食事を続けるがいい』

 その途端とたん、ゴルゴラ星人たちはガウウーというような低いうなり声を出し始め、それが頂点に達したとき、先ほどの村長がえた。

『ふざけるんじゃねえ! 汚された食い物をらえだと! そんな下衆げすなことができるかよ! わりに、てめえらを喰ってやる!』

 もう、どうして、いつもこうなるんだよお。誰か助けてくれよお~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ