表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/54

19 諺なんか、どっちでもいいよ

 おれがわが身の不運をなげいていると、「迷惑をかけてすまん」とびながら黒田氏が入って来た。

「あ、いえ、迷惑というわけでは」

「わがはいが代わりに行きたいくらいだが、そうもいくまい。それはともかく、こんなものが外にさっていたぞ」

 黒田氏の手にしているのは、古風な矢であった。そのやじりの根元に紙がむすんである。

 早速さっそく次の矢文やぶみが来たのだ。矢継やつばやとはこのことだ。

 荒川氏も「早いのう」とうなった。

「まるで、こちらの動きを読んでおるようじゃな。とにかく、場所を指定して来たんじゃろう。中野くん、けてみてくれんかの」

「はい」

 おれは黒田氏から矢を受け取ると、みんなに見えるようにテーブルに広げた。

【ドクター三角だ。場所を指示する。第九地区の難民キャンプの裏だ。必ず、中野一人で来い。ああ、もちろん、GPSも盗聴器もなしだぞ。少しでも不審ふしんな動きがあれば、娘の命はない。P.S.一挙両得より、一石二鳥の方がいいな。海賊の本家、イギリスのことわざだからな】

「なんだよ、そんなのおれの勝手だろ! どっちの諺でもいいじゃん!」

 だが、その瞬間、荒川氏はハッとしたように周囲を見回した。

「え? 荒川さん、どうしたんですか?」

 おれの質問には答えず、荒川氏は人差し指を立てて自分の唇に当てた。黒田氏も黙って周囲を見回している。

 一瞬目をつむって考えていた荒川氏は、パッと目をひらき、ツカツカとメイメイに歩み寄ると、かぶっているベレー帽をまみ上げた。それを裏返すと、中から小さな機械を取り出した。

 何か言おうとするメイメイに、唇に人差し指を当てたまま首を振り、その機械を持ったまま部屋の隅に行った。

 荒川氏は、キンコロガシに巻物をうばわれた金庫を開けると、機械をそっと置き、閉めた。

「ふーっ、底に穴は開いとるが、まあ、これで部屋の中の会話は聞こえんじゃろ」

 メイメイがペコペコと何度も頭を下げた。

「すみません。まったく気がつきませんでした」

「仕方あるまい。観光案内をしておる途中、ベレー帽を脱いだ時に仕込しこまれたんじゃろう」

 まるで名探偵のドラマをるような展開に驚き、おれは荒川氏にいてみた。

「メイメイのベレー帽があやしいって、どうしてわかったんですか?」

「うむ。そもそも、シャロンちゃんの誘拐のタイミングが良すぎた。あの時そばにおったのは、メイメイだけじゃ。しかも、先ほどのわしらの会話も聞かれとる。ギメガ星人の使っていた虫たちなら、この部屋の中はいないはずじゃ。となると、ほとんど服を着ないマムスターに盗聴器を仕掛しかける場所は、ほかにないからのう」

「うーん、なるほど。でも、どうして金庫にしまったんですか?」

 その質問には黒田氏が答えた。

「相手に、わがはいたちが気づいたと知られないためさ。できれば、ウソの情報を流して、こちらの動きをカムフラージュする。そうだろ、荒川?」

「そのとおりじゃ。じゃが、あまり沈黙が続くとあやしまれる。いいかの、今からわしが言うことは全部デタラメじゃぞ」

 そう言うと、荒川氏は一旦金庫にしまった盗聴器を再びベレー帽に入れ、メイメイに被らせた。

 荒川氏は片目をつむり、ペラペラとしゃべりだした。

「いくら考えても同じことじゃ。とにかく、シャロンちゃんの命が最優先じゃよ。誰もスターポールに連絡などしてはいかんぞ。巻物も別にしくはないわい。中野くん、すぐに指定の場所に行くんじゃ。もちろん、武器も通信機もすべて置いてのう」

 おれは「かしこ、かしこまりました。すぐに参ります」とこたえたが、自分でもイヤになるぐらい棒読みだった。

 すると黒田氏が声を荒げ「いいか、中野くん! シャロンに万が一のことでもあったら、ただで済むと思うな! 学生だからといって、容赦ようしゃはせんぞ!」と恫喝どうかつしてきた。本気マジでコワイよ。

 荒川氏はニヤリと笑って頷き、メイメイに「おまえさんは、もう戻りなさい。ツアーガイドの仕事があるじゃろう」と外をした。

「はい。それでは、他のドラード人たちに異変を気づかれないよう、普通に仕事をいたします。姉さんも仕事に戻って」

「そうね。あとは中野さんにすべてお任せしますわ」

 姉妹が出て行くと、黒田氏が慎重に扉を閉め、宣言した。

「さあ、作戦会議だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ