表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/54

15 こいつだけは、許せないよ

 ギメガ星人の巨大な二つの複眼ふくがんの上にある、細い二本の触角しょっかくいそがしく動き、おれのいる方向でピタリとまった。すると、トゲトゲのある大アゴが、ガッと横に開き、そこから耳が痛くなるような高い音が出た。

「★K?▽K?◎KKK!!!」

 完全に気づかれたとは思ったが、おれはそれ以上声を出したり動いたりしないで、ジッと我慢がまんした。

 ギメガ星人はおれの方を向いたまま、のどの辺りにある、首輪のような機械のスイッチを入れた。

『宇宙語なら通じるかね? 言っておくが、わたしの触角は熱を感知する。どうせ光学迷彩を使うなら、赤外線にも対応するタイプを使うべきだったな。体温が摂氏せっし換算かんざんで三十六度ということは、地球人だろう。わたしの翻訳機ほんやくきは、英語・ロシア語・中国語ぐらいなら対応できるぞ。使用言語を変えた方がいいか? おいおい、黙ってないで何か返事してくれよ。それとも、そのまま毒針どくばりして欲しいのかな?』

 ギメガ星人の脇腹わきばらの両側から、先が針状にとがった短いあしが一本ずつ出て来た。

 ゴーグルの内側に、拡張現実表示が出た。

【ギメガ星人の毒針:地球のはちなどとは異なり、前脚と後ろ脚の中間の脚が針に進化している。筋肉の力で数メートルほど針を飛ばすことができ、相手に刺さると針の中の猛毒が注入される。一度針を飛ばしても、数十分後には次の針が再生される】

 どうしよう。おれだって、宇宙語は第二外語で習っているのだが、成績はCマイナス。一応、聞き取りはできるが、しゃべる方はイマイチなのだ。だが、今はおれ自身の命がかかっている。

『わかたよ、ちょと、待てある』

 おれは小声でスーツに「とりあえず、ステルスモードを解除しろ。まだ死にたくない」と告げた。

 スーツも小声で「了解いたしました」と応え、ブーンという音とともに視界がチカチカした。

 念のため自分の手を見ると、黒い手袋をしているのがちゃんと見える。

 ギメガ星人にも、おれの姿が見えるようになったはずだ。

『やはり、地球人か。それにしても宇宙語が下手へただな。元々、星連の共通言語として宇宙語を作ったのは地球人じゃないか。われわれのような昆虫型生命体には発音しづらいから、こうして翻訳機まで用意しているというのに。まあ、いいだろう。そちらに合わせてやろう。何語ならできる?』

『日本語。おまえ、できるあるか?』

『ほう。ドラード人が、何故なぜ有難ありがたがって第二公用語にしている言葉か。いいだろう』

 ギメガ星人は首輪型の翻訳機をいじった。

「どうだね。これなら?」

「あ、ああ、わかる。それより、そのおっかない毒針は、しまってくれ」

「そうはいかない。まだおまえが敵か味方かわからないからね」

「おれは、その、そうだ、昔のダチのモフモフが、大統領になったから遊びに来ないかとさそわれたんだ。せっかくだから、このスーツを借りて森の中を観光してたのさ」

 われながら苦しい言い訳だが、意外にもギメガ星人はうなずいた。

「そうか。観光客なんだな。じゃあ、わたしのやることを邪魔じゃましないでくれ」

 そう言うと、せっかくつぶされることからのがれたキンコロガシに向けて、プッと毒針を飛ばした。

 キンコロガシはグサリと地面にめられ、動かなくなった。

「おいっ、何てことをするんだ! 殺す必要はないだろう!」

 おれは無意識に、背中のマシンガンを抜いて構えていた。

 ギメガ星人の大アゴがまたパックリ開いた。なんとなく、嘲笑あざわらっているように見える。

「ほう。せっかく見逃してやろうと思ったのに、わたしに銃を向けるのか。ふん、このキンコロガシがそんなに大事かね。こいつには、うばったブツをギメガ星大使館に持って来いと命じてあったのに、マンドラの誘惑に負けてここでウロウロしていたのだ。これは見せしめさ。わたしたちのモットーは弱肉強食でね。ハニワームとかいう虫も、独立宣言を出して用済ようずみになったから、美味おいしくいただいたよ。マンドラだけでは栄養がかたよるのでね。おっと、話がれてしまった。その格好かっこうから見て、おまえは天狗じいさんの子分こぶんだろう。だが、欲しいものは手に入ったし、あまりにも非力ひりきのようだからあえて事を構えることもないと、なさけをかけてやったものを」

「バカにするな! こっちこそもう手加減しないぞ!」

 おれは怒りにまかせて、マシンガンの引鉄ひきがねを引いた。もちろん、空に向けての威嚇いかく射撃だ。サバゲーで覚えたことが、こんなところで役に立つとは思わなかった。

 しかし、所詮しょせんおもちゃである。

 ポポポポポポポーンという間の抜けた音と伴に、ドングリぐらいの大きさのコルクが飛んだだけだ。これじゃ、威嚇にならない。

「ほう、面白い。たとえどんなたまだろうと、先に引鉄を引いたのはおまえだぞ。したがって、これは正当防衛だ!」

 残っていたもう一本の毒針が、おれに向かって飛んで来た!

 ああ、こんなところでおれは死ぬのか……。

 死を覚悟した瞬間、物陰ものかげから何か黒いものがおれの前に飛び出して来た。

 ドサッと音がし、目の前に毒針が刺さった大型犬ぐらいの生き物が倒れた。オランチュラだ。左の三番目の足だけ、途中で折れ曲がっている。

「チャッピー? チャッピーなのか? どうしておまえがここに……」

 チャッピーはピクリとも動かなかった。

 巻物をうばったキンコロガシを発見したというオランチュラは、おそらくチャッピーだったのだ。だが、おれに遠慮えんりょしてかくれていたのだろう。

 おれのすぐそばで、誰かが大声で叫んでいた。

 それは、おれの声だった。

「うおおおおおーっ! もう許さねえええーっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ