表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/54

12 おれの出番って、どういう意味だよ

《天狗どの、もしや巻物をられたのか?》

 さけび声で状況をさっした森の精霊の問いかけに、荒川氏は力なく「すまん」と答えた。

「キンコロガシが金をくだいて運ぶことを知っておりながら、こういう事態を想定しておらなんだ、わしの責任じゃ」

 すると、シャロンが地団駄じだんだんだ。

「ちょっと、荒川のおじさま、落ち込んでる場合じゃないでしょ! 早く追いかけなきゃ!」

「おお、そうじゃった。すまんが、森の精霊よ、追ってくれぬか?」

《すぐに、近くにいる個体に追跡ついせきさせよう。しかし、天狗どのも知っているように、われらには一切いっさい攻撃こうげき能力がない。みずかてたからな。巻物の行方ゆくえは追うが、回収はできぬぞ》

「うむ、わかっておる。それはこちらで何とかするつもりじゃ」

 そう言うと、荒川氏は呆然ぼうぜんとしているおれの方になおった。

「見ての通りじゃ。もっとあとで説明するつもりじゃったが、やむをん。中野くん、今こそきみの出番じゃ」

「はあ?」

 あまりの急展開におれが言葉をうしなっていると、荒川氏は「ちょっと、待っておってくれ」と言って、ホワイトボードの後ろに回った。

 荒川氏は、両手で何かをかかえるようにして出て来たが、そこには何もなかった。

「中野くん、これを着てくれたまえ」

「え? こんな非常事態の時に、冗談じょうだんはやめてくださいよ」

 横にいたシャロンが、荒川氏の手元をのぞんだ。

「あら、あたしには見えるわよ。たぶん、ある程度の知能指数がないと、見えないんじゃないの」

 おれははだかの王様か!

 荒川氏もさすがに苦笑した。

「これこれ、大人をからかうもんじゃない。これはわしの作った現代版『天狗のかくみの』じゃよ。要するに、光学迷彩式こうがくめいさいしきハイパースーツじゃ。資金は、黒田に出してもろうた。ちょっと待ってくれ、今、スイッチを切るでの」

 カチリと音がし、荒川氏の両手の上に黒っぽい衣装いしょうのようなものがあらわれた。

素材そざいはもちろん、強化プラスチックじゃ。一応、わしの好みで、カラス天狗をしておる。フルフェイスヘルメットの口元がとがっておるのはガスマスクじゃ。有害な物質をさえぎるのと同時に、自動的に酸素濃度を調整する。羽根はカラスというよりコウモリに近いが、わしのハングライダーよりはスピードも出るよ」

 また、イヤな予感がして来た。

「ちょ、ちょっと、待ってください。いったい、どういうことですか? いきなり、おれの出番だとか、カラス天狗だとか」

「おお、そうじゃった。話が前後してしもうたの。中野くん、きみをドラード臨時政府の特別暫定ざんてい保安官ほあんかん補佐ほさ見習みならいに任命にんめいする。よろしく頼むぞ」

「なんなんですか、その、いかにも未熟者みじゅくものみたいなあつかいは。イヤですよ。おれには、そんなことを引き受ける義理も人情もありません!」

「あらあら」そう言ってシャロンはニヤニヤ笑った。

うわさどおりのチキンね。おじさま、こんな弱虫に頼むことないわ。あたしが、このカラス天狗スーツを着て巻物を取り返しに行くからさ」

 なんだよ。そんなこと言われたら、おれの面目めんもく丸潰まるつぶれだよ。

 荒川氏も首を振った。

「いや、か弱い女の子に、こんな危険なことは頼めんよ」

 そうだそうだって、えっ、そんな危険な任務なの?

「いいえ、あたしは、か弱くなんかないわよ!」

 言いざま、シャロンの右のハイキックがおれの顔面をおそった。

「うわっ」

 間一髪かんいっぱつ、おれは上体をらしてけた。

 が、ペタンコのくつ爪先つまさきがおれの鼻先はなさきかすめる際、水色のフワッとしたワンピースの奥に、チラリと白いものが見えた。

「危ないじゃないか。それに、そのー、見えちゃったぞ」

「ふん、パンチラぐらいで喜ばないでよ」

「誰が喜ぶかよ!」

 にらみ合うおれとシャロンの間に、荒川氏が割って入った。

「やめるんじゃ、今はそのような場合ではない。もちろん、シャロンちゃんが黒田に古武術を習ったのも聞いておる。しかし、ギメガ星人も、巻物の解読に専門家が必要なのは承知しょうちしておるはずじゃ。逆に、誘拐ゆうかいされては一大事じゃ。ここは、中野くんに頼むしかない」

 荒川氏は、改めておれに向かって頭を下げた。

「頼む。引き受けてくれ、中野くん」

「……」

 なんだよー、おれは誘拐されてもいいのかよー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ