表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/54

11 どこまで悪いやつらなんだよ

「わしが迂闊うかつであった。あとで調べてみたところ、マンドラという毒キノコは特定外来宇宙生物に指定されていて、惑星を統括とうかつする政府の許可がないと持ち込めないんじゃ。まんまとだまされたよ」

 荒川氏が後悔をにじませた。

 おれは、マンドラという言葉に聞き覚えがあるなと考えていたが、ようやく思い出した。

「そういえば、黒田さんに初めてお会いした時、猛毒だと聞いた気がします。それに比べれば、ドングリは地球人向きの食べ物だと」

「うむ。確かにマンドラは、わしらのような哺乳類には猛毒なんじゃが、虫たちにとっては、ある種の麻薬まやくのような働きをするらしい。ギメガ星人はそうやって虫たちを手なずけ、自分たちの手足として使っているんじゃ。そのため、中野くんはもう気がついたと思うが」

 そう言うと、荒川氏は今おれたちのいる部屋を示した。

「この部屋は、わしが命じて完全に密閉みっぺい状態にした。わしらの内部情報が、あまりにも連中にれるので、おかしいと思って調べたところ、あちこちに虫のスパイがいたんじゃ。きみたちにも気をつけて欲しいんじゃが、この部屋を一歩でも出たら、会話はすべて盗聴されていると思った方がいい」

 改めて周辺を見回すおれを見て、シャロンが鼻で笑った。

「今、荒川のおじさまがこの部屋は密閉した、って言ったじゃん。記憶喪失アムネジアなの?」

「わ、わかってるさ。一応、念のためだ」

 最初からそうだが、どうしてこのJKは、おれにだけキツく当たるのだろう。

 気の毒に思ったのか、荒川氏はおれの味方みかたをしてくれた。

「むろん、用心するに越したことはないわい。ギメガ星人は油断のならん相手じゃからな。それに、最初は虫たちだけの独立を狙っておるのかと思ったが、最近では、ドラードそのものの乗っ取りを画策かくさくしておるようなんじゃ」

「そんなことが可能なんですか?」

「うむ。マムスターやオランチュラと統一政府を作ろうと言って来おった。じゃが、そうなると、圧倒的に虫たちの方が数が多い。多数決となれば、向こうの思いどおりじゃ」

 シャロンが「ねえねえ、荒川のおじさま」と割り込んできた。

「なんか対抗する方法ってないの? 例えば、ドバッと上空から殺虫剤をいちゃうとかさ」

「いかんいかん、そんなことをしたら、それこそ動物虐待ぎゃくたいじゃ。わしらの方が非合法勢力ひごうほうせいりょく見做みなされてしまう。今、絹代さんが星連司法裁判所に提訴ていそする準備をしておるところじゃ。ギメガ星人が麻薬を使って不当ふとうに虫たちを支配しておる、とな。それより、実は起死回生きしかいせいの方法があるかもしれんのじゃ。それこそ、シャロンちゃん、きみを呼んだ理由じゃよ」

 やっぱり本当の国賓はシャロンかよ、と思ったものの、その方法というのは知りたかった。

「ああ、古代の巻物まきもののことね。でも、本当にあたしに読めるかどうかわからないし、読めたとしても、実際に役に立つものかもわからないんでしょ?」

 なんだなんだ。おれの知らないことを、シャロンはみんな聞いてるのか。じゃあ、おれは何のために呼ばれたんだよ。

 ちなみに、巻物といってもお寿司すしじゃないことは、おれにもわかった。何か書いてあるものらしい。

「うむ。いずれにせよ、一刻も早く現物を見てもらった方がええじゃろ。解読には時間がかかるじゃろうし、当分の間、この部屋はシャロンちゃんに自由に使ってもらうつもりじゃ」

 荒川氏は立ち上がり、森の精霊と反対側の、部屋の右側に歩いた。そこには、オランチュラの糸を密にんだ分厚ぶあつい布がかぶせられた四角いものがあった。

 荒川氏がその布をはずすと、黄金色こがねいろかがやく四角い箱があらわれた。

 これぞ、文字どおりの【金庫】だ。

「本当はもっと強度のある素材を使いたいんじゃが、何しろ金は重いから、盗難とうなん防止にはなるからの。安全のため、巻物はこの中に保管しておるんじゃよ」

 荒川氏はダイヤルを何度か左右に回し、カチリと小さな音がしたところで手を止め、レバーを回しながら金庫の扉をひらいた。

「あああーっ!」

 いきなり荒川氏が叫んだので、おれが後ろからのぞき込んでみると、今まさに、金庫の底にポッカリいた穴へキンコロガシが逃げて行く瞬間であった。もちろん、金庫の中に保管してあったという、その古代の巻物とかいうものはなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ