9 僕とピンチとヒーローな彼女
本日3話目です。
ヒロイン復活!
路地裏で女の子に囲まれる・・・あれ?おかしいな?ハーレム状態のはずなのに嫌な予感しかしない。
「ちょっと!聞いてるの!」
現実逃避していたら目の前のピンク頭のヤンキーさんが僕に怒鳴り付けてきた。
怖いわぁ・・・
「えっと・・・あなたは誰でしょう?」
「私のことを知らないの?」
驚いたような表情のピンクさん。
素直に頷いてみるとそのピンクさんはふふんと胸を張って言った。
「じゃあ、特別に教えてあげる!私はあの有名な『烈兎隊』の幹部の一人・・・須崎雪路よ!」
ババン!とかっこよく宣言したピンクさんたが・・・幹部の人にそんな人いたかな?
僕は、何回か瑠璃さんの付き添いで秘密裏な烈兎隊の幹部の集会に行ったことがあったけど・・・こんなピンクの髪の毛の人は記憶にない。
ボケーとしていると、驚いて声も出ないと勘違いしたのかそのピンクさんは得意気に笑った。
「何?今さらビビってるの?あんたがどんな相手の物に手を出そうとしたのかを」
いえ、別に。
「いい?佐藤くんは私の物なの!あんたなんかお呼びじゃないんだよ!」
ど、どうしよう・・・別に順一を僕の物だと主張する気は微塵もないけど・・・ていうか、僕にそこまでする理由はないけど、今さら男とは言い辛い・・・
「あの・・・本当にじゅん・・・佐藤くんと付き合ってるの?話によると付き合ってないって言ってたけど・・・」
「な、そ、そんなの嘘よ!私と佐藤くんは運命で結ばれた二人なんだから!」
あ、あれ?ヤバイ。
これはいわゆるヤンデレとかメンヘラとかまでは行かないが・・・典型的な勘違い女じゃないか?
「はぁ・・・そうなんですか?」
「な、何よその顔は・・・生意気よ!」
どうやら僕のポカンとした表情が堪に触ったらしいピンクさんは僕に近づいて来ると右手を大きく振りかぶって、ビンタの体勢に入った。
だんだんと迫ってくる手の平にしかし後ろは壁なので逃げ場はないと悟って仕方なく目を瞑って衝撃に備える。
が、いくら待っても襲ってくるはずの衝撃は来ず、変わりに聞こえてきたのは僕のよく知る声・・・
「タツ」
そう呼ぶ人物を僕は一人しか知らない。
目を開けると、そこには相手の手首をつかんで僕をビンタの驚異から救ってくれた人物ーーー僕の彼女である・・・
「瑠璃さん・・・」
「遅くなってごめん。大丈夫?」
そう言って微笑んだ瑠璃さんはその場の誰よりもかっこ良かった。




