責任
どうも、こんにちは。
ライカ・イースです。
今日もいつもの様にお父さんとママが庭で戦ってます。
うん…爆発音がうるさい。自重しろ。
それにしても、ここ3ヶ月ほどなぜかママの調子が悪い。
と思ったらミーシャ曰く妊娠している、とのこと。
弟でもいいけど…うーん…やっぱり弟かな?
まぁママと子供が無事ならそれでいいか。
お茶を飲んでいた時に流れ弾が来たような気がしたけど大した威力でもなかったのでフェル達に任せて日向ぼっこを続けることにしたのですがどうやら客人が来ていたみたいで断念せざるをえませんでした。
ただ魔法談議に花が咲いてなかなか良い時間だった。
でその後なぜか私が剣も上手と言う話になって着替えさせられ今に至るわけですが
「じゃ、じゃあ僕とガヴェが今から模擬戦をするから見ててよっ!」
「ん?あぁ、わかった。よろしくな、アーサー」
はい、ちょっとやる気スイッチが入ったのですが放置プレイ中です。
そして私の隣にはこれまたかわいいまさにご令嬢といった感じの女の子がいます。
ブロンド色の髪に透き通るような水色の瞳。
顔立ちは少しキツめな美人だけど今はまだかわいいって感じ。
肌は陶器のように白い、触ったらすべすべのぷにぷにだと思う。
名前はルナ・マギラウスというらしい。
かわいい。
そんなわけでルナちゃんと一緒にアーサー王子とガヴェイル君の模擬戦を見ることにした。
もちろん椅子に座ってお茶を飲みながらだけど。
それにしてもアーサー王子とガヴェイル君が模擬剣を振り回しているのだけど危なっかしくて見てられない!
特にガヴェイル君には剣の才能がカケラもないようだ。
最近、このチートじみた身体の能力がなぜか向上してきているようで人の生まれ持った素質なんかも見え始めてきた。
まぁ注意して見なければそんなものは見えないのだけどあまりにもガヴェイル君の動きがぎこちないし危ないから……あっまた振り下ろした剣が地面に当たった。
ちなみにガヴェイル君の適正武器は槍だ。
しかもずば抜けた素質を持っている。
いわゆる天才という奴だ。
教えてあげたいと思ってしまうのはしょうがないよね?
そしてすぐに決着はついた。
アーサー王子が尻餅をついたガヴェイル君の首元に剣を突きつけている。
「勝負あり!アーサー王子の勝利。…ガヴェ。立って握手をしなさい」
クロム将軍が勝敗を告げる。
するとガヴェイル君がこっちに向かって歩いてきた。
「くそっ……俺だって……クソ親父みたいに剣が振りたいのに……」
そう言いながらガヴェイル君が地面に思いっきり剣を叩きつけるとたまたまそこに石があった。
キィンッ!
そして剣の先端が折れて飛んできた。
どうやら劣化していたらしい。
幸い私には当たりそうにもないので私はじっとしておこう。
そう考えた矢先の出来事だった。
ザシュッ……
「うっ……なに?これ?…ママ、パパ、…助け…て……うっ」
ルナちゃんの水色のドレスに赤いシミが広がっていく。
そしてすぐにくる血の匂い。
ちょっと吐き気がしてきたけどそれも最近ではだいぶ慣れた。
ルナちゃんが椅子からゆっくりと地面に向かって倒れていく。
そしてルナちゃんが地面に倒れた。
誰もまだ現状を理解できていない。
なんでさっき私は動かなかったんだ!
「ルナちゃん!ルナちゃん!しっかりして!」
「はぁっ……はぁっ…」
とりあえず声をかけて見るが返事をしない。
呼吸は荒い。
どうやら剣の破片は右腹部に刺さったらしい。
血がドバドバと出てくる。
顔色が悪い。
「お、おい!どうしたんだよ!」
今になって周りがこの状況に気付き始めた。
どうしたんだよって
「貴方がやったことでしょう!」
ガヴェイル君にはお灸が必要かな?
じゃなくてとにかくルナちゃんを助けないと!
と思ったけどルナちゃんのママとパパが来たので問題なさそうだ。
「ルナちゃん!ルナちゃん!大丈夫?あぁ私のルナ…」
「はぁっ…マ…マ……」
「今すぐ直すからね!」
「待てエレーナ!」
「何?!早くルナちゃんに『ヒール』をしないと!ルナちゃんが!」
「まず異物を摘出しないとダメだろう?『ライトハンド』……よし取り出せたぞ!」
「『メガアクアヒール』!」
ルナちゃんのパパが光の手で剣の破片を摘出するとルナちゃんのママが水系の回復魔法で傷口を洗いながら癒していった。
どうやらかなり広い範囲で奥深くまで刺さっていたようでルナちゃんのママの回復魔法でも大きな傷が残ってしまっていた。
「「ルナちゃん…」」
「パパ…ママ…」
ルナちゃんはすぐに倒れてしまった。
おそらく貧血だろう。
「ガヴェイル!…こっちに来なさい!」
どうやらお灸をすえる必要もないらしい。
クロム将軍がとても起こっている。
「…俺は…俺は…こんなことになるなんて、思ってなかったんだ……ごめん…親父…」
「…謝る相手が違うだろう」
「う、うん…………でもさ…」
「何じっとしてるんだ。早く謝ってこい」
「……でも……なんて謝ればいいかわかんないよ」
「…ふざけるのもいい加減に……いや、とにかくついて来なさい」
私が動けばこんなことにはならなかったのに…
正直に言って私がルナちゃんを守ることは容易にできたはずだ。
わざと落とした身体能力のままでも。
でも私はそれをしなかった。
「あぁ、ダメだな私…」
「そんなことはないですよ」
フェル……
「フェルやめるにゃ。主人の自己満にゃ」
「む、そうか。すいません主人様。出すぎた真似を」
おい、ミーシャ。不謹慎だぞ。
……自己満かぁ。うん、たしかに自己満足だけど、でもそれでいいじゃない。
「マーク…ちょっといいか」
「すまない。そこにいるクソガキの顔も、それにそっくりなお前の顔も見たくないんだ。……今はそっとしておいてくれ。」
クロム将軍がルナちゃんのパパのところへガヴェイル君を連れていくががっつり拒否されていた。
そこへガヴェイル君が爆弾を投下する
「ご、ごめん…」
ごめんで済むと思ってるの?
目下、私の中のガヴェイル君株が急降下中だ。
ふざけるのもいい加減にしてほしい。
女の子に傷を残しておいて、ごめん?
アホすぎる。こいつアホだ。
「あぁ、すまないな。顔も見たくないと言ったが訂正だ。俺はそのクソガキの存在が許せない……
クロム、とりあえずそれを俺の見えないところに連れてってくれ……俺はお前との関係を悪くしたいわけじゃないんだ」
おぉ…大人だ……大人がここにいる。
私だったらぶん殴ってるね。
「責任なら取るから!」
パシィッ
ルナちゃんのママのビンタがガヴェイル君に炸裂した。
「ねぇ?あなたふざけてるの?責任を取る?あなたにそれができるお金はあるの?権力があるの?力があるの?ないでしょう?」
「お金だったら家に……」
「それはあなたのお金じゃない、あなたはあなたのお父さんのように武力があるわけでもない。権力だってそう。
あなたの持ってるものは所詮全部あなたのお父さんのものなのよ?」
「じゃあ俺が将来、ルナの……」
そこまで口を開きかけたところでガヴェイル君に向かって『ファイヤランス』と『ウォーターランス』が十発ほど撃たれる
ファイヤランスが一発ほど流れて来たけどそれは相殺するまでもなく勝手に私を避けていって霧散した。
ルナちゃんのパパはかなり気遣いのできる人でかつ怒りで我を忘れないタイプのようだ。
「ガヴェイル…黙っていなさい。それ以上は俺もガヴェイルのことを庇えなくなる」
「俺は!俺は謝って……」
「いいから、黙れ!お前は言っちゃいけないことを言ったんだ!頭を冷やしなさい!」
どうやら残りの19発はクロム将軍が捌ききったらしい。
「なぁクロム。そこを退いてくれよ。そのガキが殺せないだろ?」
「すまないマーク。そういうわけにはいかない」
「クロムさん?その子は責任を取るって言ったんですよ?」
「すみません…でもこんなのでも俺の息子なんですよ」
「親父!ふざけるなよ!」
まだ話が通じそうなのがわかるとクロム将軍が剣を手放した。
「本当に申し訳ございません!どうか…ガヴェイルの命だけは勘弁してください」
クロム将軍はそう言ってぎこちない土下座をした。
ちなみにこの世界土下座文化が普通に存在する。
太古の勇者がしていた由緒正しい最上級の詫び方だそうだ。
そしてこの世界で土下座をするということは…
「じゃあなんでもいいのかしら?」
「ガヴェイルの命さえ助かるなら…」
「じゃあ……あなたの左腕をもらおうかしら?」
「……わかりました」
「おいクロム!それにエレーナもやりすぎだ!」
「あなた?クロム将軍がわざわざここまで誠意を見せてくれてるのよ?…それに左腕一本で済むならまだマシじゃないかしら?」
自分への罰を全て相手に委ねることである。
「親父!なんでだよ!なんで親父が!」
「それはね、将軍とはいえただの騎士だからだよ」
「でも将軍なんでしょ!」
「……はぁ、おいガキ爵位ってわかるか?クロムは騎士爵。そして俺は公爵だ。そして騎士爵は男爵または準男爵扱い。だから子爵あたりとのいざこざなら金積んで謝れば許してくれるだろう」
「でも将軍なら」
「そうだな。将軍クラスともなれば伯爵か侯爵扱いになるだろう」
「じゃあ!」
「でもな俺は魔法師団の副団長なんだよ、で団長は俺の兄だ」
「それとなんの問題があるんだよ」
「兄貴はお前のお父さんと同じ将軍だからな?で要は普通なら一家まとめて死刑とかもあり得るわけ」
「そ、そんな…ゆ、ゆるしてください!」
「だから左腕の一本で済ませてやろうって言ってるんだよ。わかった?」
なんだこれ。
さっさと帰って別のところでやってくれないかな。というかマークさん。たまにこっちにウインクするな。ん?後ろから気配が。
「さ、さてライカちゃん。ちょっと揉め事が起きたからちょっとの間だけ家に入っててね」
ひゃっ…ママっ…ちょっと……耳はダメっ…
「あらあら?ここかな?ここがいいのかな?」
「ふ…ふにゃぁ…」
あぁなんか気持ちいい…頭がクラクラする…
眠くなってきちゃった。
「おやすみ…」
「んにゅう」
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〈レインside〉
ふぅ、やっとライカちゃんが寝てくれた。
ソニアに撫でられている時のライカちゃんの顔は人には見せられないな…
ソニアにはとりあえずライカちゃんと一緒に家の中にいてもらうことにした。
それにソニアには今は安静にしていてほしい。
さて魔道具を使ったのはいいのだが…
『ザザ…あークロム聞こえるか?こちらマークだ』
『ズザ…ザ…あー聞こえるぞ。こちらクロム。茶番に付き合わせてしまって済まない。ところでレインさん。あの人呼んでもらえた?』
「あぁ呼んでおいたぞ。ただババァだからな…」
「誰がババァじゃ!れっきとしたピチピチのエルダーエルフ1300歳じゃよ!」
「うぉっ、ばーちゃん!いつの間に!」
「ばーちゃんじゃないわっ!」
「すまんすまん曾々々々々々祖母だったね」
「違うっ!曾々々々々々々々祖母じゃ!」
『『どうでもいい!』』
はい、というわけでこれが俺のばーちゃん。
三将軍の一人である。
別名『不死身の分隊長』
回復魔法を得意とし彼女が所属したその隊はどんな状況下でも結果的には全員無傷で帰ってくるためこんな異名がついたのだが……
これだとばーちゃんだけが不死身で一騎当千の働きをするみたいな言い方じゃないか。
「さて今日は誰を直せばいいのかの?それとも殺す方の依頼かの?」
いや、普通に一騎当千できるからあながち間違ってはいないのかもしれない。




