ルナ=マギラウス という人物1
アーサーサイドでもライカサイドでもありません。
「ルナにはやはり火属性をだな…」
藍色の髪、空色の瞳、西洋人のようなはっきりした顔立ち、つまるところイケメンという種族が私の前で女性と言い合っている。
「あなた?何を言ってるの?ルナちゃんには水属性です。これだけは譲りません。」
ツヤツヤの明るい茶髪、透き通るような青と緑色が混ざった色の瞳、顔立ちはきつめな美人ですが私には優しく微笑んでくれます。でも今はその満面の笑顔が怖いです。
「火属性だ。水属性などあてにならん。水属性を覚えさせるくらいなら土属性を覚えさせるわ。」
「水属性が弱いですって?それよりも土属性だなんて笑わせないでください、そんなものを覚えさせるくらいなら風属性を覚えさせます。」
「それなら光」
「闇」
「じゃあ火」
広い応接室の真ん中で私の父と母は言い争い続ける。
元々は仲良く暮らしてたのに…
「水「土「風」・・・・・
どうしてこうなったんだろう…
窓の外では当然のように爆発音が鳴ってるし…またイース家の人たちか。
この日常が始まったのはいつからだったかな…
「光!「闇!「マーク様!エレーナ様!ハウル様がいらしてるんですよ!」
「いや、気にせんでええよ。ところでお嬢ちゃん、雷属性に興味はあるかい?」
「「ハウル様?!」」
そうだ、この日常が始まったのは私のマナ属性を調べた1年前から…いや、私が産まれた6年前から始まってるんだ。
私はハウル様の問いかけに「興味はあります」と答え窓の外を見る。
そこには雲ひとつない果てしなく青い空があった。空中に浮かぶ巨大な水球と小さな人影があった。そして雷による本日5度目の水蒸気爆発がそこで起きた。
なんだあれ。
めっちゃ気になる。
あ、ちなみに私は転生者です。
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日曜日の少し空いた電車の中で私は本を読んでいた。
[まもなく〜終点〜終点…………]
(よし降りる用意をしないと…)
私は読んでいた本をショルダーバッグの中に入れる。
電車は減速しそしてホームに着くと扉を開く。
残っている乗客が規則正しく扉から出て行く。
当然私も、そして私の隣にいる親友も。
「瑠奈、またね!」
親友でありゲーム仲間でもある沙耶と駅前で別れる。駅前に設置されている無駄に巨大なオブジェである時計塔の針は午後9:30を指している。急がないと…と思いつつも私は会話を続ける。
「うん、またね、ところで沙耶、噂の彼とは上手くいってるの?」
そう、この親友リア充なのだ。
親友としては応援したいがそれと同時にどこか妬ましいものを感じる。
というか彼女の周りにはリア充が多すぎる、というか交流関係が謎な人が多い。
財閥の社長令嬢と友達ってどこで知り合ったんだよ。
「噂のって…もう付き合って5年だよ?ところで瑠奈はまだ傷心中?」
まぁそうだね、まさか惚れ込んだ男が結婚詐欺師だとは思わなかったし、知った時は目の前が真っ暗になったよ。それが今から2年前の話。大学に入って浮かれていた私はその男に60万ほど貢いじゃってね……まぁマジ女神様なお姉さんに出会ったことでなんとか私の精神状態は持ちこたえたんだけどね。
予約してた最新のオンラインRPGを予約してたんだけど確か10:00までに受け取りに行けばよかったかな。
「早く結婚しろ」
とりあえずこの言葉を言っておけばこの親友は会話を切り上げることが多い。
今の私はちょっと急いでいるのだよ。
まぁ会話を続けたのは私だけどね。
「やだなー照れるなーじゃあまたね、私カズキ君にご飯作らないといけないから!」
うん、知ってた。
「末永く爆発しろー!じゃあまたね!」
こうして確か、私はマジ女神様な“光さん”と出会った交差点を渡ったんだ。
そしてしばらく歩くとリンゴを山ほど抱えたお婆ちゃんが公園の前で息を切らしていた。
このおばあちゃんいつも土曜日にいるはずなんだけど珍しいな…
「大丈夫ですか?よかったら運びますよ?」
こういう人助けは光さんにつられて始めたことだ。
大学では一応ボランティアサークルに入っている。
「いえいえ、大丈夫ですよ。よっこいしょっとっと」
おばあちゃんがつまづいたので私はおばあちゃんを支える。
「大丈夫じゃないじゃないですか…半分持ちますよ」
「ごめんねぇ、…あなたにはまだ熟したのは早いからこれをあげるわ」
おばあちゃんが何やらじっと私を見つめた後、私に黄色がかった赤色のリンゴを差し出してきた。
「今お食べ。美味しいから」
光さんもそういえばもらっていたなぁと思い私はリンゴをかじってみた。
うーまーいーぞー!
うまっ!なにこれヤバイ、うまい。
しかも種無しのリンゴなんて珍しい。
「美味しいです。おばあちゃんありがとう」
「そうかい、そうかい、それは嬉しいねぇ」
そして私はおばあちゃんの荷物を持ち移動していた。
その間私はおばあちゃんと会話をしながら歩いていた。
最近おばあちゃんにちょっかいをかけてくる若者がいるらしく、それをどうにかするために知り合いを呼んだらその人がやらかしてちょっと怒っているそうだ。
話を聞く限りこのおばあちゃんはどこかの社長さんかそれに準ずる偉い人なのでは?と思い始めてきた。
そしておばあちゃんについて行き高速道路の高架の横を通る時だった
何か“黒い影”が視界の隅に見えたのだ。
そして上を見上げるとトラックが落ちてきていた。
人は死を感じると時間が進むのを遅く感じるようで私はその光景を今でもくっきりと覚えている。
トラックの中の運転手は何やら黒いモヤに取り憑かれ白目を剥き、泡を吹いて気絶していた。
おばあちゃんは焦るような表情を見せることもなく何やら顔をしかめていた。
とても体が重い。
私がトラックにぶつかるのは避けられないだろうけどおばあちゃんだけは助けれるかもしれない…そう思った時には私の体は勝手に動いていた。
「おばあちゃん!ごめん!」
私はおばあちゃんを突き飛ばす。
骨折とかしたらごめんね。
その数瞬後私の意識はプツリと途切れた。
その時のおばあちゃんの姿や表情だけはよく覚えていない。
ただ「すまない…」と呟く若々しい女性の声だけが耳に残った。




