33〜フェイリルさんとお風呂〜
「あーもうたべられないでひゅー」
フェイリルさんが寝言を言っている。
もう陽は沈み星空が綺麗な時間帯になっているのだがフェイリルさんはまだ起きない。
フェイリルさんは朝ごはんの時に寝てしまったから大体もう11時間は寝ている。
ちなみにその間、
私は床と天井の修復を済ました。
そのあと部屋の掃除をした。
食べ損ねた朝ごはんを作って食べた。
謎のパワーアップを果たした身体に慣れるために負荷を外してジョギング、昼ごはん、素振り、ランニングなどのメニューをこなした頃には夜になっていた。
結構うるさかったはずなんだけど全然起きない。
「私は美味しくないですよー…うにゃ…むにゃ」
そしてこの寝言である。
寝相はとてもいい。
背筋をピンと伸ばして全く動こうとしない。
寝返りは背中の翼のせいで出来ないのかな?
歯軋りもしないし、いびきもかかない。
けどそれなりの声量で寝言を言う。
押しても引いても動かないし起きない。
どうしよう……これ。
ふと私の目の焦点がフェイリルさんの翼に移る。
ふわふわしてそうで気持ち良さそう…
恐る恐る触れてみる。
「これは…」
それは高級羽毛布団のような柔らかさ…
ふわふわである。
何で高級羽毛布団の柔らかさを知っているのかは聞かないでほしい。
高級羽毛布団5つセット……50万円……サービスで今ならもう1セット?……うぅ…頭が……
とにかく天使の翼はふわふわだった。
フサフサ 「ん…」
なかなかクセになる触り心地だね…
フサフサフサフサ 「あぅ…」
なんかいい匂いもする。
フサフサフサフサ。
「ライカちゃんっそれ以上はダメだよぉ」
どうやらフェイリルさんが起きたらしい。
顔が真っ赤だし多分体調が悪いんだろうなぁ…
それにしてもこの羽触り心地ヤバイ。
もうやみつきになっちゃうなぁ。
フサフサモフモフ
「ちょっと⁈ライカちゃ…はぅっ」
ついでに顔をうずめてみる。
うんやっぱめっちゃ気持ちいい!
いい匂いもするし。
スー…ハー…
「 はぁ…ライカ…ちゃん…」
なんだろうなぁ、アロマの香りかな?
スー…ハー…
「もう…やめ…て…」
フローラル的な感じの匂いだね。
こんな香水欲しいなぁ。
それにしてもなんか体がベタつく。
スンスン
匂いを嗅ぐと私の体が汗臭い。
そういえば運動してからお風呂に入ってないし『浄化』もつかってなかったなぁ。
「フェイリルさん!お風呂入ろ!」
風邪引いてるときはお風呂に入るといいってお母さんが言ってたような…まぁお風呂は気持ちいいしきっと風邪にも効果があるはず。
「……ふぅ、え?お風呂?ライカちゃん?…女の子同士でそういうのは…いけないと思うなぁ…」
フェイリルさんが顔を真っ赤にしたままもじもじしながらそんなことを言った。
『そういうの』って何?
さっぱり分からん!
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥
的なことわざがあったはずだから私は聞きます!
「フェイリルさん、『そういうの』って何?」
私、気になります!
どんな返答が返ってくるのか期待してフェイリルさんを見つめる。
マギナさんも『知らないことを知るのは大事だし、何より楽しいよね!』って言ってたし。
私がフェイリルさんを見つめているとフェイリルさんが
『私ってこんなに穢れてしまってたのね…』と呟くのが聞こえた。
「なんでもないよ!ライカちゃん。お風呂入りに行こっか。」
なんでもないことないでしょ!
すっごく気になるんだけど!
とりあえずお風呂に案内する。
我が家のお風呂は魔法で入れる。
「『クリエイトウォーター』『ヒート』」
木で出来た湯船に湯を張る。
43度くらいが私の好みだ。
さぁ、フェイリルさん。お風呂の虜になるがいい!
あっもちろん服は脱いでくださいね?
フェイリルさんが服を脱ぎ始めるのだが…
服着にくそう…
背中の翼が特に邪魔そうだ。
私には翼がなくてよかったと思う。
翼なくても飛べるし…
「えっとライカちゃん?先に入ってていいよ。」
お気遣いありがとうございます。
私は手早く服を脱ぎ捨て…といっても無限収納の中に収納して素っ裸になった後走ってお風呂にダイブした。
お行儀としては良くないかもしれない。
でもっ、温泉にダイブするのってやれなかったことだからやってみてもいいじゃんっ!
「ふぁぁーきもちぃー」
生きかえるぅぅう!
命の湯とはよく言ったものだよ!
フェイリルさんが裸で入ってくる。
タオルなんて無粋なものは家庭の風呂にはいらないのだ!
フェイリルさんは飛び込んだりせずにゆっくり入ってくる。
股と乳を手で隠すのは無意識なのだろうか?
私も見習わないとなぁ…
裸族じゃないけど前世の酒癖は悪かったからなぁ…
あとから私の数少ない仲の良かった女子に『酔ったあんたって可愛いな』とか言いながら見せられた半裸写真は私の黒歴史の一つだ。
あの時が私の自宅で開いた鍋パーティでほんとよかった。
「ふぅぅー……気持ちいいねー」
「でしょー!やっぱりお風呂はサイコーだよー」
「でも…その…隠さないのはやっぱりはしたないよ?飛び込むのは行儀が悪いし…」
うぅ…ご指摘の通りでございます…
「それに…ライカさんは淑女としての嗜みが全く足りてませんね」
フェイリルさんのお仕事スイッチが入った!
というか淑女の嗜みって何?
「淑女の嗜みって……剣を振るのは?」
「違いますね」
「気配を消すのは?」
「違いますね」
「魔法をぶっぱするのは?」
「違いますね」
「鍛治をするのは?」
「違いますね」
「回復魔法!」
「どこで習ったんですか…でも違いますね」
「龍言語魔法!」
「それどこからっ…でも違いますね」
なんだと…カミサマーズから教えてもらったことが何一つ通用しない…だと。
淑女とは一体どんな魔物なんだ…
「というか戦いから一旦頭を離してください…」
回復魔法は戦いと関係ないと思いまーす。
「いいですか?淑女というのは品格あるレディのことです。大声をあげて剣を振ったり、気配を絶って人の後ろに回ったり、爆発するような派手な魔法を使ったり、鍛治場に篭ってススまみれになったりするのは淑女ではありません。」
回復魔法と龍言語魔法はどこにいったの?
「淑女とは教養を身につけていて、美しく、気品溢れる佇まいでありながら落ち着いた雰囲気を持っている人のことです。あとそういう人はダンスや紅茶などを嗜むこともできますね。」
「つまり…貴族?」
「女性高位の冒険者やら魔術士は淑女であることが多いですが大体は貴族ですね」
むぅ…私は貴族なんかにならんぞ…
「それに貴族でなくとも女性として!それらは必要なことです!そんなわけで私はライカさんを淑女にして見せます!」
「…はい…そうですか…」
目の前で誘惑の翼が揺れる。
ゆらゆらと猫じゃらしのように揺れる。
こんなにまじめにフェイリルさんが話をしていてダメだとはわかっているんだけど…
「うにゃぁああー!」
無理!もう耐えられない!
私は翼に飛びつく。
やべぇー!フサフサたまらん!
「きゃっライカちゃん!翼はダメだって!」
あぁーダメだー獣人の血が疼くんじゃー
「もう…ライカちゃん…翼は敏感なんだから…」
え?………
つまり私はそういうエッチなことを知らず知らずのうちにしていた…と。
「えっとフェイリルさん…ごめんなさい…」
「別に……いいですよ……」
めっちゃ気まずい!
え?どうすんの?この空気?
「…ふぅ……なんかクラクラしてきちゃいました。」
フェイリルさんがのぼせてしまったのでどうにかその場を乗り切ることが出来た。
PV8000行きました!
ありがとうございます!




