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20 SS 〜王子の見た英雄〜

アーサー王子視点です。

おかしいところあるかもしれません。

僕の名前はアーサー・マース・ノーヴェン。


お父様は国王陛下と呼ばれていてとても偉い人らしい。

でもいつもお父さんと呼ぶと『いいかい?ちちうえ、父上と呼びなさい』と言ってくる。


その通りに父上と呼ぶととても喜んでくれるので嬉しい。


でもいつも忙しいと言って、全然遊んでもらえないのは嫌だ。


たまに馬に一緒に乗ったり絵本を読み聞かせてくれる、最近だと一緒に竜に乗った。


風を切って進んでいくのはとても気持ちが良かったけどお父さんはずっと何かを思い出して苦い顔をしていた。


竜騎士はかっこいいけどお父さんが竜を好きじゃなさそうだからならなくてもいいや。



そのあと僕たちは北の森のキャンプというところに来ていた。

いつもは兵士さんたちがここにいるらしいけど今日は一人もいなかった。


クロムがいうにはお父さんが原因なんだって。


理由はよくわからないけどお父さんはクロムに怒られていた。


その時たくさんの竜がこちらに来ているのが見えた。


数え切れないほどたくさんの竜が空を埋めていた。


邪竜という悪い竜だとクロムが言った。

クロムはいつもめんどくさそうにしているけどほんとは真面目な頼れる人だ。


お父さんが頼り切ってるのが何よりの証拠だ。


僕はとりあえず隠れることにした。

お父さんは隠れることをしなかった。

ちょっとボタンがあったので押した後お父さんのところに戻った。


邪竜がこちらに向かって飛んでくる。


クロムが剣を鞘から抜きお父さんの前に出て構えた時、それは来た。




そこには英雄がいた。





黒と白の鱗を持つ竜の上に人影が二人いた。


そして彼らは一瞬で邪竜の群れを倒すと死の森の方へと消えていった。




僕はその時に思ったんだ。


やっぱり竜騎士カッコいい。







それから兵士さん達が慌てて来て僕達たちを家まで送り届けてくれた。


その時にお父さんは色々な人に手を振っていた。

クロムはなんかめんどくさそうにしてた。


町の人はみんな歓声をあげていたので僕も手を振った。






それから僕は王子としての振る舞いを学ぶことになった。


すぐに『僕』から『私』に一人称を変えるように言われた。


それから色々なことを学んだ。


一番楽しかったのはクロムの剣術の授業だ。

クロムはステータスがレベル70を超えていて、しかもスキル 剣術 レベル7 を持っている。

他にもクロムは スキル 魔法術(風)レベル4 も持っている魔法剣士なんだそうだ。


このスキルというのはその人の才能と努力が現れたものなんだそうだ。


でもスキルにも格というものがあって

何も付いてないのと『術』という文字が入っているスキルだ。

『術』というのが入っている方が強くて無印のスキルの10レベルの上が『術』の1レベルだとも言われている。だから『術』の1レベルは無印の11レベルとも言われていたりする。


だからクロムは本当に凄いんだ!



クロムとの練習のおかげで僕も剣レベル5と魔法(火)レベル4を取得できた。


魔法は他の先生も教えてくれるけどいつも理論とか色々うるさくてクロムの『魔法はイメージだ!』の方が何百倍もわかりやすくていいと思う。


でもクロムが少し忙しくなって来れなくなると、ずっと部屋の中で勉強する日々が続いた。


最近はクロムの授業が全然ないし歴史の勉強はつまらない。

ずっとずっと先生が話し続けてるけどつまらないし面白くない。こんなの役にたつわけない。


『王子としての自覚を持って素晴らしい……』


『王子として』その言葉はもう聞きたくない。


だから僕はお父さんがやってるように抜け出すことに決めた。



お父さんはこの家のいろんなところを改造して外にこっそり抜け出せるように秘密の道を作ってる。

僕はそこを使った。

壁に掛けてある絵画の位置を入れ替えると壁の下の方が開いた。

その空洞の中に入ってレバーを引くと壁が元の位置に戻った。


やっぱりお父さんはすごい!

秘密基地みたいな気分になる。


僕はそのままちょっと狭い通路を進んでいく。




結構歩くとそこに、はしごがあったのでそれを登る。


登り切ったところでそこにはドワーフの人が不貞寝していた。


僕はその人を起こさないように外に出る扉へと向かう。

ここはなんか酒臭いしさっさと出たかった。


扉を開けるとそこは“壁”の外だった。

高い壁はそのままだけど僕は今その外側にいるんだ…


そこからは冒険だった。

お父さんがたまにくれるお小遣いの銀貨を10枚くらい持って来て正解だった。


いろんなものを買って食べた。

家で出てくるより濃い味付けだったけどそれはそれで美味しかった。


他にもカッコいい冒険者の人とかいろんな人が見れた。

僕が街を探検していると突然腕を痛いくらいの力で掴まれて僕は裏路地に連れ込まれた。


「離してよ!」

びっくりしたのでちょっと声が上ずったかもしれない。


僕は初めて悪意に晒された。

ねっとりとした視線。

ガッチリとした体格。

それは僕にとって初めて見る悪人だった。


怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。


一度怖いと思ったらもう力が入らなかった。

足が震えてる。

掴まれてる腕が痛い。


男が「王子様?ちょっといいところに行こうか?」


と小馬鹿にしたような声で言ってくる。


怖くて涙も出てきた。

怖いよお父さん…


僕にとってはお父さんが英雄だった。

カッコいいお父さんも抜けてるお父さんも、でもどのお父さんも泣いたりしてなかった。


だから僕は涙が出ないように堪えた。


「ははは!王子様泣きそうだぜ?」

「ざまーねぇなぁ!」

「ほら、早く行こうぜ!」


これはいつまで続くんだろう。


ここで僕は半ば諦めていた。

きっと攫われるんだろうなぁと。

勉強から逃げた罰なのかなぁと。

お父さんともっともっと遊びたかったなぁと。


お父さんを思い出したら勇気がまた少し出てきたので力を振り絞って声を出す


「ちょっと!離してよ!」


そう言うと、男の顔がとても怖い顔になって乱暴な口調で


「まぁいいじゃねぇかガキ!」


さっきより腕を握る力が強い。

さっきから逃げようとしてるけど無理だった。


掴まれた腕が痛い。

男たちが怖い。

お父さんもクロムもいないのが心細い。



「ほら行くぞ?お前は裏ギルドの俺たちにとって大事だからな」


そう言ってふへへ、と気持ち悪い笑い声をあげる。


もう僕は抵抗する気が起きなくなった。

裏ギルドという言葉は先生たちから少し聞いたことがあるからだ。


人を殺したり攫ったりそういう酷いことをするのに腕利きが集まっているという厄介な集団なんだそうだ。

お父さんが潰そうとしているとも聞いた。


僕は人質に取られるのかな…


僕はそういう知識は持っていた。

人質は殺されるのだ。

用が済めば殺されるのだ。



ーーー




そんな時、また英雄が現れた。




ーーー



「うおっ、なんだガキか。驚かせるんじゃ…ん?お前なかなかいい服着てるじゃねぇか。ちょっとこっちに来い」


男がそう言いながら振り返る。


そこにいたのは


「その子の手を離しなさい」


場違いな透き通るようでいて力強いその声の主は僕とそう変わらないくらいの身長の仮面をつけた獣人の女の人だった。


獣人は背が低いままの人もいればとても大きくなる人もいるため背格好で年齢を判断してはいけない。


その仮面の人は少し男を見ると目つきが変わった。


僕はこれでもマナを感じる能力には長けているつもりだ。

実は僕には精霊が見える。

魔眼というものの一種らしい。

その魔眼はマナも見ることができる。

男たちからは濁ったようなマナが見える。



そして仮面の人からは



一切マナが出ていなかった




これが指し示すのは二つ




まず一つはその人は幻だという事



そこに存在しなければ漏れるマナなどない

でも男に触れたようなのでそれはない




そしてもう一つは



恐ろしいほどマナの扱いに長けた魔術師ということ。

自分から勝手に漏れ出すマナすらコントロールし自らの中に留めることができる魔術師は数少ないがたしかにいる。


それでも普通は一切マナが出ないというほどではなく、どんなに優れた魔術師でも僅かではあるが漏れ出しているのだ。




でもその人のそれは違った。




それは限りなく少ないのではなくゼロだった。




ーーー


考えにふけっていると僕の腕を男が離した。


でも僕は動けなかった。


もう足が竦んで動かなかったのだ。


「痛い思いをしたくなかったらを服を全部脱いでその変な仮面を捨てて頭を地面につけるんだな。まぁそれでもお前は死ぬんだけどな!」


男が言った。そして仮面の人に切りかかろうと走り出した


その時、何かに体を優しく抱きかかえられた。


一瞬だった。僕は屋根の上に普通のおじさんに抱きかかえられたまま移動していた。


それなりにがっしりした体。

落ち着いた普通の雰囲気。

どこにでもいそうな市民と変わらない。


ここは屋根の上だろうか。

この辺りを囲むように屋根の上にはもう二人ほどいた。活発そうな半袖半ズボンの獣人の女の人と獣人の執事がそこにいた。


すると屋根の下の通路から何やら気配を感じた。

なのでそちらを見ると男の剣が仮面の人のすぐ前にまで迫っていた。


ーーー


「危っ」


『危ない』と言おうとしたら口を押さえられた。

でも僕は仮面の人を見続けていた。


すると何も武器を持っていないはずの仮面の人の腰に武器が現れた。


見たことのない形だった。

シミターにしては細くサーベルにしては長い。そして普通の剣と比べればその曲がった鞘がそれとは別だと教えてくれる。


そして仮面の人の姿がブレた。





僕の目には何も見えなかった。




気づけば男の両腕は切り飛ばされ剣は真っ二つに斬られ髪の毛を刈り取られていた。



男たちが喚いた後全員で仮面の人に向かって行く。


僕はその光景を目に焼き付ける。


ーーー


仮面の人は男の短槍の突きを紙一重でかわし槍ごと腕を切りとばし流れるような動作で後ろから切りかかってきた剣使いの男の剣を短槍使いへと流しそのあと剣使いの両足を切りとばす。


弓使いが飛ばした矢を見もせずに片手で掴み奇襲しようとしたナイフ使いの足に投擲する。

ナイフ使いが矢をかわそうと横に一歩踏み出す、がそれが叶うことはなかった。

仮面の人はいつのまにかナイフ使いの横に立っていた。ナイフ使いの足は膝から下がなかった。


杖を持った男が魔法の構築を終えて魔法陣を展開し魔法を放つと仮面の人は一瞬でその魔法に対する魔法を放った。


当たり前のことだが魔法には段階がある。


どんな魔法を使うのか決定する

『選択』

マナによって事象を変えるための魔法陣を作る

『構築』

魔法陣にマナを注ぎ発動できる規模にまで大きくする

『展開』

そして魔法陣を使いマナで実際に事象を起こす

『発動』


の4つ。

これをいかに早く行うかが魔導師の腕だ。



仮面の人は『選択』から『展開』までの過程をぶっ飛ばして魔法を『発動』させた


しかも3つ。


一つ発動させるならまだしも同時発動など英雄録の英雄である。


一つは相殺され。その他の二つは弓使いと魔法使いの男に当たった。

男の使った魔法は風の矢。

その見えざる矢に仮面の人が放った魔法は…


氷の矢



上位属性と呼ばれる、光、闇、雷、氷


そのうちの一つだった。



そして男たちは氷漬けになった。


普通の『氷の矢(アイスアロー)』は当たった相手を凍らせるようなことはないのだが。


そして仮面の人は武器を鞘に収めた


そしてここまで仮面の人はわざとゆっくり動いていた


ーーー


そうして裏路地での戦いは終わった。

気づけば僕は泣いていた。


すると仮面の人は屋根の上まで飛んできた。



そして


「大丈夫?」


と聞いてきた。


涙のせいか精霊の光が周りにありえないほど集まっているように見えた。




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