みっしょん10 開幕! ご当地キャラ大選手権大会
【ゆるキャラ】 「ゆるいマスコットキャラクター」の略称。国や都道府県、市町村などの地方公共団体、その他公共機関等が、イベント、キャンペーン、村おこし、名産品の紹介といった各種地域情報の宣伝のため、またはその活動当事団体の理念や特色を表す象徴として創作されたご当地キャラのこと。地域に根差したものについては特に「ご当地キャラ」と呼ばれることもある。一般的な特徴として、外見がカワイらしく、そして、ユルい。また、広義にそういった特徴を持つイラスト、着ぐるみ全般をさすこともある。「ゆるキャラ」の命名は、みうらじゅん氏による。
「――え~本日は晴天にも恵まれ、天もこの記念すべき濡良市始まって以来の一大イベントを応援してくれているかのようです。本〝幻の濡良遷都一三〇〇年記念・ご当地キャラ大選手権大会〟は、出場するゆるキャラの四チームはもちろんのこと、ここにお集まりの皆様もまた参加者である、まさに濡良市民全体を挙げての記念行事なのであります」
満員御礼の〝伝遷都予定地公園〟に、会場中央の壇上に立つ濡良市長・飛鳥京一の開会の言葉がスピーカーから木霊する。
「古の伝説を踏まえ、遷都伝説に最も縁のあるこの地で未来に繋がる新たな濡良市のシンボルが誕生することは、市長である私としましてもまことに感慨深いことに思われます。え~つきましては…」
「おい! 話長げーぞーっ!」
「早く始めろーっ!」
「オヤジは引っ込んで、ゆるキャラを出せーっ!」
しかし、もう待ちきれない観客席の中からは、延々と続く開会の言葉に野次の声が上がり始めている。
「そ、それでは、話も長くなりましたので、そろそろ選手権大会を始めたいと思います」
その様子を見かねた秘書課職員が市長に耳打ちをすると、飛鳥市長はようやく演説を切り上げて次に移る。
「さあ、濡良市公認ご当地キャラ候補の皆さんの登場です!」
パーパパパパーパパパパーパパパパー♪
市長の指示を受け、司会を務める地元テレビ局の女子アナが業界独特のテンションを持った声でアナウンスをし、県警楽隊のファンファーレが会場に響き渡る。そして、応援席から湧き上がった歓声と楽隊の奏でる行軍曲の中、遂に四体のゆるキャラ達がその姿を観衆の前に現した。
各ゆるキャラ達の着ぐるみは、所属団体とその名称の書かれたプラカードを掲げるミス濡良市もしくは準ミス濡良市の後について、順次、会場の広場へと入場して来る。
「最初の登場は、濡良市銭湯組合の〝せんとーくん〟です」
よく通る女子アナの声に紹介され、先ず現れたのは濡良市銭湯組合が作った「銭湯」と「遷都」をかけた名前のゆるキャラである。
市内で開業する銭湯の店主達の集まりであるこの組合が考え出したキャラクターは、禿げ頭に捻じり鉢巻きを巻き、白のランニングにズボンの裾を捲り、いかにも頑固そうな顔でデッキブラシを持った、〝古き良き昭和な銭湯のオヤジ〟といった感じのものである。
「こいつを公認キャラクターにして、銭湯業界に活気を取り戻すんだ!」
着ぐるみの介添役として左右に付いて歩く、これまたそのキャラクターに似て怖そうな顔をしたオヤジの一人が、万席の会場を見渡しながらその鼻息を荒くする。
なぜだか理由はわからないが、濡良市には銭湯が多い……なので、確かに銭湯というのは濡良市の特徴を示すものの一つではあるのだが、それにしても、このオヤジキャラクターの顔はリアルで怖過ぎる。ゆるキャラというよりは、きもキャラと言った方がいいのではないか? というような疑問を抱かせる造形である。この銭湯組合のオヤジ達、ゆるキャラのなんたるかをまるでわかっていないようだ。
「二番手は、濡良市仏教寺院連合会の〝なむなむくん〟です」
続いて現れたのは、濡良市内に存在する仏教寺院の住職達が作ったゆるキャラである。
「やはり、濡良市といえば寺の町よ……」
介添の僧侶が言うように、濡良市の特色といえば、先ず第一に挙げられるのが寺の多いことである。そこで、これは自分達の出番だと、仏教寺院連合会もこのイベントに参加することを決めたのだった。
そのキャラクターはやはりお寺ということで、小坊主さんの格好をした、カワイらしい墨染の衣姿のものとなっている。名前は「南無阿弥陀仏」や「南無妙法蓮華経」、または「南無南無…」と拝む時に唱える、その〝南無〟からとったものだ。
「続きまして三番手は、濡良市中国人会の〝マントウくん〟です!」
「イヤ、濡良市と言えば中華街ダヨ。コノ勝負、ワタシ達が絶対、勝ネ」
三番目に登場したキャラクターの介添人は黒いカンフー服を着て、どこかおもしろいイントネーションで語っている。というのも、彼らは市内にある中華街の人々や中国からの留学生等で作られる濡良市中国人会という集団の代表なのだ。
これまたどういった理由なのか定かではないが、内陸部には珍しく濡良市には中華街があり、古くより中国人が多く住んでいたりもする。それ故、このイベントを期に濡良市の中華街のことをより広く世間に知らしめようという自分達の野望とも相まって、彼らもまた出場を決意したのだった。
そんな彼らの生み出したキャラクターは、濡良の中華街の露天で売られ、隠れた名物となっている饅頭(※日本でいう饅頭と違い、中に具の入ってない蒸しパンのようなもの。ちなみに具入りの饅頭は包子)をモチーフとしたものである。その饅頭に中国といえば日本人が連想する中国武術のエッセンスを組み合わせ、白い長方形の饅頭が黒いカンフー服を着ているような、その短足胴長の造形が特徴的なゆるキャラだ。
「そして、最後に四番手は、唯一高校生の参加となります、条坊高校ゆるキャラ部の〝ぬらりん〟です!」
最後の一体――条坊高校ゆるキャラ部の〝ぬらりん〟が会場に姿を現すと、一際大きな歓声が条坊高校の応援席から湧き上がった。
「見ろ。これまで我らを小馬鹿にしてきた者達が、ああして声援を送ってくれている……まさか、このような日が現実に訪れるとはな」
その夢のような光景に、介添役として付いて来た茉莉栖が感慨深げに心情を吐露する。
「うん。ほんとだね。もう感動一頻りだよ」
そう答え、もう一人の介添え役であるひかりも目をうるうるさせて微笑むのであったが、よくよくその 歓声を聞いてみると、それは彼女達の思っているようなものとは微妙に違っていた。
「な、なんだ、あのジイさんは……」
「実物は初めて見るが、あれがうちのゆるキャラか……」
「ゆ、ユルい……ユル過ぎる………」
中には装着実験で見かけた者も僅かにいたが、学校新聞の写真でしか見たことのない者や、それどころかまったく見たことのなかった大多数の者達は、初めて目の当たりにする〝ぬらりん〟の雄姿…というか、飄々とした爺さんの姿に驚愕の声を上げていたのだった。
そんな中、しばし皆と驚きを分かち合っていたあずなは、不意に思い出したかのように他の生徒達とは違うところに意識を傾ける。
「あ! そういえばレイ、やけに遅いな……ここならすぐに見つけられると思うんだけど……もう、どこ行っちゃったんだよう――」
「――あ、あんなたくさんの人達がこっち見てる……や、やっぱりダメだ……」
無論、あずなが知る由もなかったが、そうして彼女が会場を見渡して探す当の鈴本人は、今、目の前で人々の注目を一身に浴びる着ぐるみの中で緊張しまくっていた。
思わずあんな啖呵を切って装着者役を買って出てしまったが、いざ大勢の観客を前にするとやはり鈴はあがってしまう。〝着ぐるみ(KGフィールド)〟という自身と観客との間を隔てる緩衝壁が一枚あったとしても、そんな薄っぺらい壁、彼女のあがり症(アンチKGフィールド)はいとも簡単に突破するほどの強力なものだったのである。
「ど、どうしよう……」
ここまで来て、今更ながらに後悔の念に駆られる鈴だったが、無情にも大会の式次第は淀みなく進んでゆく。
「では、公認キャラクター候補が全員揃いましたところで、さっそく第一回戦の競技に移りたいと思います」
四体のゆるキャラが並び立つと、司会の女子アナはすぐさま最初の競技の説明に入る。
「ゆるキャラにとって最も重要なのは、その人の心を癒してくれる、なんともいえないカワイらしさです。そこで、第一の競技は〝人気者くらべ〟を行いたいと思います」
「人気者くらべ?」
「なんだ? どうやってやるんだ?」
それまで一切競技の内容を知らされていなかった参加者達の間からは、当然、疑問や不安の声が一斉に上がる。
「今から合図とともに、こうしたものには目のない各世代の濡良市民達が、この競技会場内に順次投入されます。その市民の方々に、しばらくゆるキャラの皆さん達と戯れていただいた後、最も気に入ったゆるキャラの周りに集まってもらいます。そこで、一番人気のなかったもの一名が失格となり、残りの三名は二回戦に進む権利を得ます」
「なんだ、簡単じゃねえか」
「それならば自信があります」
「カワイさなら負けないヨ!」
「フン。おもしろい。相手になってやろう」
女子アナの説明に、銭湯組合、寺院連盟、中国人会、そして、ゆるキャラ部の介添役達はそれぞれに自信のほどを口にする。
「では、始めますよ? ゆるキャラの皆さん、準備はいいですか? 介添役の皆さんは競技場の外へ出てください」
「安室君、どうやら問題なさそうだな。では、健闘を祈る」
「レイちゃん、がんばってね!」
そのアナウンスを聞くと、茉莉栖とひかりはぬらりん初号機の中の鈴に声をかけ、足早にもと来た条坊高校の控え所へと戻って行く。
「……え? あ、あの、ちょっと待って…」
緊張に我を忘れていた鈴は慌てて二人を引き留めようとするも時すでに遅し。彼女は独り、着ぐるみに入った状態で観衆に囲まれる会場のど真ん中に取り残された。
「それでは第一回戦スタート! 先ずは条坊市立保育園の園児のみんな~! ゆるキャラ達と楽しく遊んでくださーい!」
司会の合図が発せられたと思いきや、会場の南側に待機させられていた園児の一団が、外されたロープを乗り越えてゆるキャラ達のもとへと進撃を開始する。
「わ~っ!」
「きゃあ~ー!」
解き放たれた園児の群れはそれぞれに奇声を発しながら、気に入ったゆるキャラ目がけ、て無秩序に突進して行く。
「アハハハハハ、へんなかお~!」
「ねえねえ、なんてなまえ?」
「あくしゅ! あくしゅ!」
「だっこして! だっこ!」
大量の奇行種が、それぞれ勝手なことを言ってゆるキャラ達に纏わり付いていく……あっという間に四体のゆるキャラは、小さな巨人達によってもみくちゃにされた。
「コラ! ガキどもくっ付くんじゃねえよ! 駆逐するぞ!?」
園児達の猛攻に、せんとーくんの中にいる銭湯組合・極楽湯の主人は、本来、着ぐるみの禁忌である声を発して、へばり付く園児達を追い払おうとする。
まあ、最近では某関東の非公認キャラやその北の方のよく伸びるキャラのように、あえて声を発することで人気を博しているゆるキャラも存在してはいるが、せんとーくんのそれはただのオヤジの怒号である。
「南~無……」
対して、なむなむくんを身に纏う寺院連合会の僧・空念は、念仏を唱えて押し寄せる園児達の波の中でも冷静さを保とうとする。
「来来! 小朋友、ワタシとこ、来るネ」
一方、中国人会のマントウくんを着た中華料理店「少林軒」の看板娘・李姐豆は、商売上手な華僑だけあってゆるキャラの本分を忘れることなく、あざとくもカワイらしい仕草をして園児達を喜ばせている。
では、我らがぬらりん内の鈴はどうしているのかといえば……。
「うう……み、みんなが、わ、わたしのこと見てるよう……」
極度の緊張から、ただその場に突っ立っていた。
しかし、着ぐるみのおかげで鈴の硬直した姿はうまく隠され、外見的には飄々として立つ老人――ぬらりんの持ち味を如何なく発揮している。
「キャハハハハハ! このおじいさん、へん~!」
「すげーゆるい~!」
そんなぬらりんの姿に、まったく動くことはなくとも園児達は自主的に戯れていた。
「はーい。じゃあ、園児のみんなはこれでおしまいだよ~。次は濡良女子高校の生徒の皆さんです。では、濡良JKのみなさん、突撃ーきっ!」
「キャ~っ! マジうけるぅぅぅ~っ!」
女子アナのアナウンスに促され、保育士達が立体的な動きで園児を会場外へ駆逐すると、次に騎馬隊の如くゆるキャラ達に突撃して行ったのは女子高生一個中隊だった。
「へへへ、若い娘はエエのう……」
「煩悩即成仏……」
「女子高生、味方付ける。コレ、勝利の鍵ネ」
「ううう………」
園児の群れから解放された四体は、それぞれの思いを秘めて、ようやくゆるキャラとしての本領を発揮し始める。
マントウくんは先程と同様、せんとーくん、なむなむくんも手を振ったり、握手したり、さらには抱き付いたりと、その真の目的が疑わしい者も中にはいたが、カワイらしい仕草のパフォーマンスをそれぞれに披露している……ただ唯一、鈴の入るぬらりんだけはぼーっとその場に突っ立ったまま、やはり何の動きもない。
「ちょっと、このオヤジ、なんかエロくなくなくない?」
「キャー! 小さな坊主さん、カワイイぃ~」
「この饅頭、オニヤバくない?」
「アハハハハ! このお爺さん、マジウケるんですけどぉ」
そうした四体のゆるキャラ達を、ちょっとギャルの入った女子高生達は各々に勝手な言葉を投げかけて評価していった。
「JKの皆さんの時間はこれで終了です。では、最後に濡良女子大で日本史を学ぶ、史学科学生の皆さんに評価していただきましょう! 女子大生の皆さん、レッツパ~リィ!」
「我ら濡良女歴史女子、押して参るっ!」
女子高生に続き、三番目に投入されたのは地元の名門女子大に通う、戦国武将大好きな女子大生歴女の小隊である。
「へへへ、女子大生もいいのう……」
「煩悩即成仏……」
「将を射んと欲すれバ、先ずJDを射ヨ……これ、中国の古い諺に言うネ」
「………………」
今度もそれぞれに、ゆるキャラ達は着ぐるみ特有のほんわかとしたゆるい動作で女子大生達にパフォーマンをしてみせる……無論、ぬらりんを除いてであるが。
「キャっ! このオヤジ、今、わたしのお尻触らなかった? セクハラだし顔も怖いし、うちのゼミのエロ教授そっくり……」
「あ、この子坊主さんいいね。ぬいぐるみあったら欲しいかな」
「これ、あれだよね? あの中華街で売ってるやつ。あたし、けっこう好きかも」
「写メ撮って写メ! なんか、このお爺さんだけ全然動かないけど中に人いないのかな?」
歴女JD達もしばしゆるキャラ達との触れ合いを楽しみ、個々の評価を下しつつ、会場を後にしてゆく。
「はい。それでは濡良女の皆さんも終了です。これで全員の審査が終了しました。さあ、いよいよ判断が下される時です……審査員の皆さん、もう一度会場内に戻って、一番お気に入りのキャラクターの周りに集まってくださーい!」
「……なんか、さっきから全然動かないけど、だいじょぶかな?」
アナウンスの指示により、再び園児・女子高生・女子大生の大軍勢が会場に流れ込むのを眺め見ながら、控え所で他の部員達とともに様子を覗っているひかりが呟いた。
「ダメだね、ありゃ。完全に硬直しちまってるよ」
「やっぱ、あがり症にはキツかったかあ」
それに答えて、首を横に振りながら瑠衣と真太が各々に答える。
「こりゃ、残念ながら一回戦敗退かな?」
「やっぱり、わたしが出た方がよかった?」
ビデオを回しながら平七郎が他人事のような台詞を吐き、松葉杖を突いて立つ舞は抑揚なく尋ねる。
「いや、そうでもないさ。確かに全然動いてはいないが、逆にそれが功を奏して、なかなかにウケはよかったみたいだからな」
しかし茉莉栖だけは確信にも似た妙な自信を感じ、微かに笑みを浮かべて勝負の成り行きを見守っていた。
「はい。全員、自分の好きなキャラの所に行きましたね? それでは、結果発表です!」
一見すると、どのキャラも甲乙着け難いくらいに審査員の園児~JD達が分散して周囲を取り巻いている。
「日本野鳥の会の皆さんのご協力で人数を数えましたところ、一位はなむなむくん、二位はぬらりん、三位は僅の差でマントウくん…」
……しかし、ただ一体。銭湯組合のせんとーくんだけは違っていた。
そのゆるキャラとは思えない強面のオヤジの周りには、まるで人が集まっていないのだ。いる者といえば、かなりマニアックな趣味を持っていそうな不思議ちゃんか、よくこの審査のルールがわかっていない園児くらいのものである。
「そして、四位は……ああ、これは見るからに明らかですね。残念ながら最下位で失格となってしまったのはせんとーくんです。せんとーくん、残念」
ソフトな言い回しで誤魔化しつつも、女子アナは容赦なく第一回戦の敗者を発表する。
「そ、そんな、バカな……」
そのアナウンスに観戦していた銭湯組合の面々はがっくりと肩を落とし、それから間を置かずして内輪での言い争いを始めた。
「やっぱ、極楽湯さんを着ぐるみ役にしたのがいけなかったんだ。あんなスケベ親父を着ぐるみに入れること自体間違ってたんだよ。補陀落湯さん、こりゃ極楽湯さんを推薦したあんたの責任だよ!」
「な、何を言うんだ! 敗因はそんなことより、あの、ゆるキャラのレベルを完全に逸脱した恐ろしい顔の方にあるだろ! あれじゃ、ゆるキャラというよりきもキャラだ! あれをデザインした浄瑠璃湯さん、あんたが悪いんだよ!」
「なんだと!? あれ見せた時、みんなだってこれで優勝間違いなしって賛成してたじゃないか! それなのに何を今更……あれはね、デザインよりも着ぐるみの造形の方に問題があるんだよ。だから、桃源湯さん。制作業者と交渉したあんたの責任だ」
「な……自分のことは棚に上げて、そのなんたる言い様……大変なことは全部他人任にしておいて、まったくどいつもこいつもぉ……ああ、もう頭にきた! こんなこともうやめだ! とっとと家帰って酒でも飲んでた方がましだ!」
「そりゃ、こっちの台詞だ! お前らの顔なんかもう見たくもねえ!」
「その台詞そっくり返してやる! ほんと、酒でも飲まにゃやってられねえよ!」
こうして、ゆるキャラにはまるで相応しくない醜い口論をかわしながら、銭湯組合のメンバー達は早々にその場を去って行ってしまった。
「やったーっ! 二番だよ! 二番!」
「やはり御仏の加護が我らには付いている……」
「マ、一番じゃなく、ちょと悔しいけどネ」
一方、勝った三名の陣営からは喜びの声が聞こえてくる。それは参加者本人達ばかりでなく、その応援に来た大勢の関係者が座る客席からもだ。
「引き続き、第二回戦に移りたいと思います。二回戦出場の皆さんは、係の者について次の場所へと移動してください」
そうした騒がしい歓声の中、一回戦を終えた会場には勝ち残った三名を誘導するアナウンスが流される。
「これも御仏のお導き……」
「やったネ! 次は一番、ワタシタチがもらうヨ!」
それに従い、再び介添人が付いて、ゆるキャラ達は次なるステージへと移動して行く。
「うう……もう、帰りたい……」
「安室君よくやった! やはり君を装着者に選んで正解だったようだな」
「その調子で次もがんばってね☆」
極度の緊張に打ちのめされ、ぬらりんの中で弱々しく嘆く鈴も、そんな彼女の気持ちなど意に介さない茉莉栖とひかりに連れられてその場を速やかに後にしてゆく。
「………………」
誰もいなくなった会場中央には、ただ独り、介添えをする仲間も帰ってしまったせんとーくんとその中に入る極楽湯の主人だけが、もの淋しくぽつんと取り残されていた……。
つづく……君は、ユルく生き残ることができるか……。




