黄金色の朝
ルシエSIDE
朝の日差しで目が醒める。とても気持ちが良い。ジンや双子の寝息が聞こえる。
「おはよう、ルシエ」
リュウは、テーブルで優雅にコーヒーを飲んでいた。しかし、顔は傷だらけ。口も少し赤くなっている。目立った傷には、絆創膏を貼っている。
「またリュウに負けちゃった。リュウが一番疲れてるはずなのにねー」
「実は、俺、寝てないからね。ルシエには言ってなかったっけ。イルカと同じ半球睡眠をして、いつでも奇襲に備えているんだ」
「は、半球睡眠?」
「わからないなら、良いんだ」
リュウはいつもの笑顔を見せる。
「それで、彼らを逃して良かったの?殺しはしなくても、牢屋には入れといた方が良かったんじゃない?」
「まあ、そう思うのが普通なんだけどね。こちらも昼に刺客に襲われたばかりなのに、油断をしていた。それの気を引き締めてくれたお礼、なんてね」
「リュウは甘いね」
ルシエの方がだ、とリュウは笑う。
「ルシエはコーヒーとココアどっちが良い?」
「良いよ、そんな気を遣わなくて」
「昨日のお礼だよ。君の助けが無かったら死んでただろうし」
「なら、ココアをお願いする。甘党なの」
「なら、クリームたっぷりにしとく?」
「遠慮しとく」
こんな平和な日常が続けばずっといいのに。
「この数日だけで、色んな事があったね」
リュウは笑う。
「まだ、旅の始まりさ。これからはもっと色んな事がある。
……また危ない目に遭うかも知れないけど、君は一緒に来てくれるのかい?」
「なんでまた。私は一緒に行くよ。父さんの死の真相について知るまでは、少なくともね」
「皆、頑固だな。俺の心配なんてそっちのけだ」
リュウはやれやれと言いながら笑っているのを見て、ルシエも笑う。
「戦闘が終わってから、倒れる人を放って置けるもんですか」
戦いが終わった直後、リュウは倒れ込んだ。ジンとルシエで必死に宿まで運び込んだ。ルシエ達もその刹那、疲れのあまり、眠りに落ちたのだが。
「それは本当に感謝してるよ」
リュウはココアを作り終え、ルシエに渡す。
「ありがとう」
「何だか、気が抜けるな。これからすぐ、炎と氷の国と呼ばれる『フラキエス』に向かうっていうのにな」
「休む暇ないじゃん!」
「ルシエはゆっくり休めば良いさ」
「リュウが、だよ?」
リュウが困ったような表情になり、頭を掻く。
「……俺は大丈夫だよ」
「身体がボロボロだよ?」
「わかった。今日、潜水艦で俺は寝る。それで良いだろ?」
リュウは折れ、微笑みを浮かべた。
「そう言えば、なんで潜水艦なの?前は普通の船だったのに」
リュウは顎を手に乗せて考えている。
「本当の事言っていい?」
「勿論」
「笑わないでくれよ?SFの父と呼ばれたジュール・ヴェルヌの『海底二万マイル』に出てくる、潜水艦ノーチラス号にずっと憧れていたんだ。まだ発明されてもいない近未来の設備、ヨーロッパ大陸の下は海底トンネルが通っていたりだとか、なんていうか、ロマンがあるんだよ」
自分の事を全く語ろうとしないリュウが冗舌になる。自身の子どもの頃からの夢を語る彼は生き生きとしていて、いつも張り詰めている彼が幼少期に戻ったようで可愛らしかった。
「笑わないでって言ったのに」
少しリュウが不機嫌そうな表情を浮かべた。
「何だか、リュウがやっと本心から話してくれてるようで、嬉しくって」
「……じゃあ、そろそろ行こうか。最後の英雄の出身国、フラキエスへ」
NGシーン
リュウ「……じゃあ、そろそろ行こうか。最後の英雄の出身国、フラキエスへ」
テロップ『この作品は完結です。刹那翼先生の次回作にご期待ください!』
リュウ「ちょちょちょーい!この話から三年休んでるから冗談にならないって!しかも、この作者、昔の携帯使えなくして、この作品のプロット消してるから!」




