Lead bullet
ルシエSIDE(ガイアが焔を纏う前)
「ねぇ、ジン。信じられないかもしれないけど、少し聞いて」
「何だ、ちょっくら忙しいから手短に頼むぜ」
ジンは銃に弾を装填しながら言う。
「私の剣、ガイアは魔法剣なのかもしれない」
「魔法剣……?」
「魔法を吸収して、その魔法の能力を付加出来る剣」
「そんなもん、ねえだろうよ」
ジンはキッパリと断言する。
「私は今からリュウを援護しに行く。その時、私が合図したら、燃焼系の魔法を使ってほしい」
「……世界を救う前に死んでも良いのか?」
いつしか、リュウとこんな事を会話した事を思い出す。あの時彼は何て言ったんだっけ。
「今死んだら、英雄じゃないでしょ?」
ルシエの言葉にジンはニヤリと笑う。
「そりゃ違いねえ。でも、本当に良いんだな?俺は仲間どころか人も殺したくはねえぞ」
「えぇ、私もそれなりの覚悟で来てるし、もし魔法剣じゃなくても、すぐに防御に変えられる」
「なら、行ってこい!」
ルシエSIDE(現在)
「魔法剣ガイア。それが私の剣。今の紫電の一薙ぎで、爆弾を燃やすと同時に、魔法関連のものは全て吸収した。それでも貴方はまだ戦う?」
アルフレッドは高々と笑い出す。
「舐めてもらっちゃあ!困るなぁ!僕の十八番は生憎、これだけじゃないんだ。幻影空間」
視界が、歪み始めた!?何やら、怪しげな館に辿り着いた。
「お前が見ているのは、全て幻影。お前は僕の位置を特定し、私の元へ辿り着き、倒す事が出来るかな?」
魔法剣ガイアが吸収出来ないものが幾つかある。巨大な闇のような魔法が自立して動くもの。そして、空間そのものを操る魔法。
これは空間魔法であり、ガイアが吸収出来ない部類に属する。
アルフレッドが数十人見える。どれが本物かは全く見分けがつかない。それ以前に、目の錯覚を利用するものなのか、空間がある一点を中心に円を描くようにぐねぐねと歪んでいる。それ故に真っ直ぐ立つ事さえ難しい。
「紫電・陽炎!」
とりあえず、しらみ潰しに攻撃していくしか無い。炎魔法を敵のいる方向に飛ばす。
「ルシエ、オレダ!」
一発目に放った技の方向に居たのは、レイオスと対峙するリュウだった。ヴェロキラプトルの反応速度と運動神経で辛うじてリュウは避ける事が出来たものの、ヴェロキラプトルの状態で反応速度を上げていなければ危なかった。
「仲間割れしてくれると思ったのに、残念ね」
つまりは、この幻影の中でも、現実空間と同じ状態。これは非常にまずい事態かも知れない……。
「ルシエ、受けろ!
付加型流星!」
声が聴こえた背後から、銃弾が飛んできて、ルシエは反射的に避けようとするが、ルシエはジンの声を信じ、その銃弾が着弾するのを待つ。
着弾はしなかった。しかし、わかった。付加魔法が働いていることに。いや付加魔法だけじゃない。ルシエがカジノで使った回転をルシエに付加させている。回転魔法で周囲が反響する。
「まさか、ジンは一発でティーゼルの技を!?」
ティーゼルの十八番、回転による索敵を見事にジンは一度で成功させたのだ。
そのお陰で、アルフレッドが見える。
「何だ?仲間割れか?」
ルシエはアルフレッドがまだ見えていない振りをする。
「燃え尽きろ」
ガイアを七つの定石の一つ、伸縮により、アルフレッドを中心に、蜘蛛の巣状に張り巡らせる。その張り巡らせた、燃えるガイアの伸縮は、ルシエの手から離れた瞬間に、戻る。
「何だ!これは!熱い!熱い!」
ガイアは剣状に戻り、アルフレッドの体を擬似的に拘束しながら、燃えている。
アルフレッドは痛みなのか、窒息なのかわからないが、気絶した。
「あ、そうだ。聴こえてないだろうけど、言っておくわ。貴方の幻影空間、一つも美しくなかったよ?
ジン!助かった!ありがと!」
「良いってことよ!それよりも、リュウだ」
この部のタイトル Lead bulletは、導く弾丸という意味だけでなく、鉛玉という掛言葉に近いタイトルとしました。