闇夜の追撃者
ルシエSIDE
自分の影が意識を持ったように動き出す。これも魔法なのか……?影が刃のように鋭くなっていく。このままだとナイフのように鋭利になり、人間をも斬り裂きそうだ。朗報は、動きがゆっくりなのが、唯一の救いだということぐらい。
「リュウ、これ、どうすればいい!?」
「光でリセットするんだ!レイオス自身に影を踏まれたら、影は動き出す!光で影を一度消せばいい!そうすれば、奴の魔法は取り消される!」
光で掻き消す。そんな膨大な量の光なんて、こんな暗い夜という状況下では作れない。
「ジン!雷魔法は使えないのか!」
「あんなもん、コントロール効くかよ!俺にゃ無理だ!」
雷、そうか、電気!近くのカジノの電飾の一つを爆発させれば、きっとリセットされるに違いない!
「フェルディナンドさん!ごめんなさいっ!」
カシーノ・スエールテの一つの電灯を木っ端微塵になるように斬る。凄まじい爆風が起こる。
「くっ!」
ルシエは吹き飛ばされないように、何とか堪える。
「……上出来だ!完全にリセットされた!しかし、問題なのは、当事者のレイオスが見当たらないということだ。またレイオスに影を踏まれたら、厄介な事になる。一番問題なのは、明かりの強いカジノの前に待機しているということだ。確かに、またリセットは出来るが、鼬ごっこに他ならない。月の光の下なら、影も必然的に薄くなる。だから、光が無いところを進もう。そして、宿に着いたら、俺達の勝ちだ」
リュウがハンドサインで移動しようと示す。ルシエとジンはそれに従った。
「だが万が一、影を踏まれたらどうする?」
ジンがそう尋ねる。
「その時は真っ向から迎え撃つ、っていうのが最適なんだが、どうにも現状を考慮すると、そうはいかない。だから光のある場所に戻る。そして光を起こす、の繰り返しかな」
「どっちにしろじゃねえか」
「行動を起こすのと起こさないのの違いだよ。可能性が全然違うさ」
ルシエは不思議に思った。
あの爆発の時、一瞬だけしか見えなかったが、ガイアにも火が移ったように思えた。
「リュウ、火が宿る剣ってある?」
「……無いだろ、そんなもの」
リュウが訝しそうな表情を浮かべながら答える。
「そう、だよね」
ガイアに火花が飛び散ってそう見えただけなんだ。きっとルシエの気のせいだ。
リュウSIDE
走って逃げているものの、レイオスが全く追ってくる気配がしない。
いや、レイオスはこの程度で済むような奴では無いはず。何か相手に策があるのでは無いのか。
「ジン、宿に行く前に何処か水がある場所は無いか?」
「このまま少し真っ直ぐ進めばあるはずだが、何でだ」
「俺の体力を回復させておいた方が良いと思うから」
「じゃあそっちにまずは進もう」
しかし、やはり闇の中に追撃者の気配は全く感じなかった。
敵はレイオスだけなのか、複数だけなのか、全ては闇に閉ざされたままだ。
ボヤキーの会跡地
三人目の英雄「三人目の英雄の私っていつになったら、登場出来るんだろ……四人目に登場の順番抜かされた上に、まだ一回しか出てないような気が……しかも、一瞬だけだったし、これじゃいないようなもんだよ……」