Undead military〜不死の軍隊〜
カジノの外の闇夜に蠢く影。外に出ては居ないが、今までの経験が危険だという事を知らせ続ける。
フェルディナンドが裏で手を引いているようには思えない。
「確かに、言われてみれば」
「一難去ってまた一難……?」
目の見えないジンは気付いたが、ルシエは全くのようだ。
「そういうことだ。もしかすると、今度は命の危険も付いて回るかもしれない。用心するんだ。それに越したことは無い」
三人はカシーノ・スエールテを後にする。
外は、カジノ以外の明かりは殆ど灯っていなかった。
「こんな事なら、目を使わなければ良かった……」
「もう使えないのか」
不安そうな表情を浮かべ、ジンが尋ねる。
「使えるのは使えるんだが、精密性がかなり落ちる。人がいるかどうかなんて」
「なら、昼に見せた動物に変わる能力は?」
「生憎、今は殆ど体力が残ってない」
「なら、ジン、風で索敵出来ないの?」
「とっくのとうにしてんだが、全く手応えなしだ」
策は出尽くした。まだ無理をするには、早過ぎる。敵の思う壺だ。
敵は気配をわざと感じさせ、焦燥を誘っているのに、違いない。
「相当の暗殺技術の持ち主みたいだ。いや、それだけじゃない。戦闘の経験も並大抵のものじゃない」
リュウが見てきた中でも、かなりの強者だ。
「……いえ、まだ一つだけ策は残ってる。私の剣ガイアで辺りに糸を張り巡らせる。それで防御網を作るの」
「……その間の時間は誰が稼ぐってんだ?」
ジンの最もな質問だ。
「ジンの銃弾に巻き付けるっていうのはどうかな?」
「それが最善だな。ジン手伝ってくれるよな」
「仲間なんだからな。やってやるよ。カウントダウンは三つ数える」
ジンはホルスターから二丁拳銃を取り出す。そして、親指で撃鉄を起こす。
「……スリー、トゥー、ワン!」
銃声が、静かな夜の帳に轟く。
「二連・散乱弾流転型流星群」
回転を付加させた、散乱弾。糸状のガイアを弾から弾へと次々に移動させていく。回転がかかっているため、弧を描いて、建物や木に糸が張り巡るようになっている。
「その程度かよ、アレクセイ」
闇が急に動き始める。いや、闇が動いているんじゃない。"リュウ達自身の影"が動いている!
「まさか、お前は……アルカディアの7幹部の一人、『影の暗殺者レイオス』!」
姿を見せないが、わかる。影を自由自在に操り、暗殺を企てる者と言えば、レイオスただ一人。
「俺の名前が分かったからどうなんだ。お前らには今から死んでもらう!"アタナトイ"」
自らの影という殺戮者達が三人に襲い掛かる。




