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三日月の使者  作者: あなご寿司
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リヒトの苦悩

---ソリエールの森(一年前)


 日の光が届かぬ深い森の中を、ヘルバーニア王国の紋章を施した馬車が2台と、その周りを取り囲むように騎士たちが馬を走らせていた。


(まさか魔の領域からマグリア鉱石の多く含まれた鉱山が発見されるとは・・・)


 宰相リヒトは馬車の中で一人、新たに発見された鉱山について考えを巡らす。


 もし、国内で発見されていれば手放しで喜び、これから増える雇用と利益の試算を王宮の執務室でしているところであったが、発見されたのが魔の領域からでは意味合いが全く違う。


(鉱山における含有量に対して、掘削と運搬の人員に運搬車の護衛、さらに掘削現場と作業員の宿泊施設の警備や道具・食糧等の経費を払って利益が出るのか?)


 オーカーフェルト領の兵は一年中出没する魔物と戦っており、練度や士気は申し分なく、領主のガリウスも信頼できる人物ではあるが、現在ですら領地守備に奮闘しているのに、鉱山採掘のために余剰戦力を貸せとは宰相であっても中々言えない状況であった。


(鉱山の確認はされていても、陣地としては確保されていない状況か・・・)


 今回リヒト自らが現地に赴いているのは、国内に留まる守備隊を中心とした兵士を、鉱山の陣地確保と守備に就かせて問題がないか見極めるためであり、国の財政に大きく貢献できる可能性を秘めている案件を、信頼する宰相に一任した国王の命でもあった。

 オーカーフェルト領で最大の町であるヴァイスに着いてからのことで、頭の中がいっぱいになっていたリヒトだったが、馬の嘶きと同時に起きた急停車によって、対面の椅子に腕を組んだまま突っ込んだ。


「くっ、何事だ!」


 馬車の窓から顔を出したリヒトが目の前にいる騎士に声を荒げると、前方から品の無い声が聞こえてくる。


「俺はここいらの森を縄張りにしてる者だ。命が惜しいなら金目の物を置いて行きな!」


 その発言を聞いた直後、リヒトに尋ねられた騎士が


「どうやら盗賊のようです。」


と簡潔に言葉を発する。


 リヒトは呆れながらも馬車から降りて、後方の騎士3人に従者と荷が乗っている馬車の護衛を命じた。


「数は見えてる限りで20人ですが、まだ伏兵がいると思われます。」


 騎士の中でも他を寄せ付けぬ威圧感を発している男が、リヒトに背を向けながら報告する。


「グスタフ、ヘルバーニア王国特殊騎士第一師団の師団長に盗賊程度の相手をさせるのは心苦しいが、あまり時間がないので早急に頼むぞ。」


 その言葉にグスタフは短く返答し、他の騎士たちに指示を出し始めた。


(たった10人とはいえ騎士を相手に追い剥ぎとはな・・・。)


 リヒトにとって盗賊が絡んできたこと自体が不可思議であり、何か罠や策略があると考えていた。

 もちろん、グスタフも盗賊が勝利への確証を持って挑んでいることは、肌で感じ取ることは出来るが、騎士団の誇りから盗賊程度の隠し玉にやられるとは微塵も思っていない。


(まあ油断は禁物だな)


「騎士達に戦神の加護を・・・」  [フィジカルライズ]


 リヒトが唱えた身体強化の魔法により、騎士達の全身から光と闘気が立ち昇りる。

 その光景を見ていた盗賊は表情を変えることなく、一気に騎士達へと突進した。


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