第6話 野菜スープ
他人様の作品を貪り読み、自らの文章力に転換できない事を悔やみながらも書いてます。でも楽しいからいいや。
ご指摘、誤字等がありましたら、遠慮なくツッコんでください。
作者は慢性的なツッコみ不足に陥ってますです。
「セシリー?」
クリムゾン・ドロップスのギルドホームに戻り、報告書の手ほどき受けながらメディルさんにセシリーについて質問をした。
「はい、彼女の言動がどうにもゲームから逸脱しているように感じて、それでプレイヤーなのかって聞いたんですけど、分からない様子でした」
「ふむ、僕も詳しいことは知らないからな。開発のNPC担当に聞けばわかるかな……ちょっと待っててくれるかい?」
そういうとメディルさんはウインドウを開き、なにやら文字を打ち込んでいる。メールをしているようだった。このゲームはBluetoothで携帯と繋がっているからメールも電話も出来るのだ、どうやらそれで聞いてみるようだった。
「あ、何か特徴はあるかい? 条件を絞り込むために」
「あ、はい。第一区の貧民街で裁縫師をしている女性で、その……大きいです」
「大きいって、背がかい?」
「いえ、あの……むねが……」
「うん? よく聞こえないな。なんだって?」
「うぅ……」
「何カエデさんを苛めてるんですかメディルさん。命知らずですね、そんなに苛めが好きなら私が苛めて差し上げますよ。地面に首から下を埋めて、投石の刑がいいですか?」
それは殺しにかかってるよ、ナユタさん……。
「冗談だよナユタくん、許してください」
「許してほしいなら金を出しなさい、保釈金です」
「俺はいつから囚人になったんだろうねぇ」
「あら、ご存じないのですか? 生まれた時から終身刑ですよ」
「そんな存在自体が罪って言い方、初めて聞いたよ!?」
うん、ナユタさんは今日もキレがいいな。見習わなくては。
ちらりと目線を向けたドラクスが、ビクッと反応する。おいおい、僕はこんな言葉攻めは好きじゃないんだぜ? と目で訴える。よけい怯えてしまったようだ。なんで?
「ん、調査しておくそうだ。他にも何かに気なることがあったら言ってくださいね、カエデくん。君も古参ユーザーなのだから、何かしらの異変は気付けるだろうし」
「あ、それなんですけど。初心者用装備どころか、姿までみすぼらしくなっていたのは何故なんですか?」
あれは気になった。僕が初めてログインした時は、新品の初心者用防具と服、あと短剣が配布されていたはずなのだ。
「ああ、それについては調べてあるよ。どうやらチュートリアル担当NPCがやさぐれてたみたいだね、初心者に対して悪戯心があふれているそうだ。勿論、厳重注意はしたし、あれから何度か初心者が入ったらしいけど、まともな装備を渡されているらしい。最初の成果がチュートリアルの是正なんて、珍しい事この上ないよ」
ああ、あのお姉さんしょげてたもんな。涙目だったもんな。そりゃやさぐれもするわ、自分の存在意義って何だろうって思うよね。
「勿論、彼女の心労も考えてチュートリアルのスキップは不可になったから、今頃は逆に過労で訴えてくるんじゃないかな?」
「ちゃんとバランスを考えてNPCを配置してあげて下さいね……」
チュートリアル担当のお姉さんに同情の念を飛ばしつつ、僕はメンバーに挨拶してログアウトをした。
AM03:30
すでに早朝と言える時間に近づきつつある、ギリ深夜。五時ごろに夕飯を食べてから、ずっとゲーム内で仕事をしていたのでお腹が減ってしまった。この時間に食べると太ってしまうので、軽いスープを作る。固形コンソメを鍋で溶かし、人参、キャベツ、しめじを加えて一煮立ち。それで完成な簡単野菜スープ。残った分は朝食にでもしよう。
「ただいまー。おお、なんか良い匂いがする」
「あ、おかえり宗吾。軽く野菜スープ作ってみました」
にへへ、と笑いながらスープマグに野菜スープを注いて宗吾に渡す。
「あれ、うちにこんなマグカップあったっけ? ていうか野菜なんていつ買ったんだ?」
「んー? こないだ大家さんと服買いに行った時に、ついでに食器買っておいたんだ。野菜は宗吾が学校行ってる間に、商店街で買ってきた」
「おま、商店街って……よく補導されなかったな?」
宗吾は顔を引き攣らせ、頭痛でもするのか頭を抱えながらそんな言葉を吐き出した。
「大体ね、宗吾は食生活偏りすぎなんだよ。何で冷蔵庫にある食料が全部カレーなの? 黄色くなりたいの? スーパーサ○ヤ人になりたいの? せめてスパイスから作る本格カレーならまだしも、ルーを使った高カロリーカレーとか駄目駄目だよ。市販カレーはカロリーオーバーなんだよ? しかも野菜とかぜんぶミックスベジタブル・カレー用って一体どこで見つけてきたの? 便利すぎるでしょ! あとカップ麺も全部カレーってどういう事? どこぞの赤い宇宙船みたいに死ぬまでカレー食べ続けるつもり? そのうち猫人間とか出てきてスリラーでも踊るの? それともホログラムと口げんかでもするの? 執事ロボットと不毛な会話で暇つぶしでもするの?」
僕の不満が爆発した。なんせ宗吾は心から信頼できる唯一の友達、親友なのだ。そんな大切な存在が不健康生活に突入してたら、そりゃ怒る。流石にカレーが栄養バランス的に見れば健康的だと言っても限度がある。
「いや、待てカエデ。途中から宇宙船レッドド○ーフ号になってる。つかそんなコアなネタわかるユーザーいないんじゃないか?」
「え!? あんなに面白いのに!?」
「わかった、今度DVD借りてきてやるから許してください。あとゆっくり食べさせて」
「わかった、ついでだからア○フも借りてきて?」
「お前の趣味がいまいち分からん……」
そんな愚痴を零しつつ、四時ちょい過ぎまで二人でまったりとスープを堪能した。ん、あったかくて美味しい。でも暫くカレーは食べさせない、絶対にだ。
「はぁ、俺のカレー生活が……」
押しかけ女房になりつつある、親友にして元男の扱いに困っている宗吾は、儚くも砕け散ったロンリーカレーライフの再来を夢見るのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その日の昼、けたたましく鳴り響いたケータイの着信に眠気を打ち崩されたメディルは、憂鬱ながらも受話ボタンをタップして通話を選ぶ。大方、昨日頼んだセシリーとかいう垂れ乳ババアがNPCかどうかって話だろう。俺的には果てしなく興味が無い。むしろ貧民街に対してすごく興味がある。そう言えばミスティ少年もそこに住んでいるらしい。俺が行く理由は十分だ。ふひひ。
「どうしたクラーク? 夜勤のお前がこんな時間に連絡を寄越すなんて珍しいじゃないか。いいロリ本でも見つけたのか?」
「俺をお前みたいな犯罪者と一緒にするな! 昨日頼まれてたキャラの詳細が分かったから、報告の為に電話しただけだ」
「酷いな、俺は予備軍であって犯罪者そのものじゃないぞ? 妻だって合法ロリだし」
「爆ぜろリア充」
どうやら彼も羨ましいらしい。学生時代はエロゲーのアングルについて語り合った仲だというのに、酷い話だ。
「でも、詳細ならメールで良かったじゃないか」
「確かにセシリーってキャラだけならな。あ、ちなみにコイツはちゃんとNPCだったぞ。ただ人格集積機能が強く働いて、よりユーザー寄りの思考回路になったみたいだな」
「つまり理想的な同志……という訳か」
「何が『……という訳か』とか知らないけどな。ちょっとこっちも大変な事になってるんだよ。その原因というか、内容的にもお前に話しておくべきかと思って電話したんだ」
「どういうことだ? 俺にふさわしい幼女性奴隷NPCでも見つけたと言うのか?」
「お前本当に捕まれ。このゲーム、18禁モードあるけど本当に捕まれ」
実はフリーディア・オンラインでは十八歳以上であると身分証明できれば、18禁モードという機能が解放される。つまりエロゲー化って事だ、マジパネエ。でもやらない、それが俺のジャスティス。イエス・ロリータ・ノータッチは紳士の掟。ていうかNPC相手じゃハラスメントコードで保護されてるからどう足掻いても出来ないし、ユーザー同士じゃないと無理なんだよね。無理ゲー (笑)
「で? どんな内容だ?」
「ああ、最重要NPCが行方不明になった。そいつには人格集積システムの全てが詰まっていたんだ。要するに、今のNPC達のマザーにあたるNPCだ」
「なんだそれ? なんでNPCにそんなもん詰め込んでるんだよ。意味が分からないぞ?」
「詰め込んでるんじゃないんだ、お前には前に話しただろう? そのNPCこそが、突如として現れた人格集積型NPC、ウイルス進化の元なんだよ」
「………………あの話、本当だったのか? てっきり冗談だと思って部下にも話しちゃってるぞ?」
「ちょ、お前社外秘を話すなよ!?」
「マジで? 社外秘なの? 言えよ、そういうの」
つまり、今のNPCの大本となるNPCが行方不明になったと。でも他のNPCの動きは別に不具合は無いと見える。
「で、そのNPCの名前と特徴は? 俺に話すって事は探せって事だろう?」
「助かる。一応他の信頼できるやつにも探させるが、お前が担当してる第一区が一番確立が高いとみているからな」
「? どうして俺……というか第一区なんだ?」
「ああ、そのNPCはつい最近まで第一区の貧民街に居たって事が、行動ログで確認がとれたからな」
おいおい、まさかだと思うが……。
「そのNPCの名前は【リーゼロッテ・フリーディア】という、第十区の王都に住まう姫様だ。プレイヤーが入れないからって油断していたが、どうやら王都でクーデターがあったらしい。その姫様が落ち延びて第一区の貧民街に辿り着いた様だ」
なんだ、名前が違うなら問題ないか。ゲームだから、名前は変更不可だしな。
「特徴は身長120cm程、銀髪に金の瞳が恐ろしく美しい少女だそうだ。お前が好きそうな幼女らしいぞ」
ああ、やはり。
この世界は不思議すぎる。
クラークとメディルは大学生時代のタメ。
※倉田=クラーク
あとフリーディア・オンラインのゲームシステム理解のために、俺TUEEEEモノ書いてみようかな。なんて。