第5話 貧民街
更新が一週間ほど遅れてすいませんでした。
ひとの話を読みすぎたです。
「よっ、カエデ」
あれからゲーム時間で数日後の午後、リアル時間で翌日の夜。警邏中に昨日知り合ったミスティが話しかけてきた。服装は大して変わらないのだが、以前よりも清潔感が感じられる。
「あのオッサンのおかげで、何とか皆を養えそうだよ。仕事一つで大違いだぜ」
「ん、仕事って? 何かアルバイト?」
「まぁ、そんな所だな。ちゃんと店のおっちゃんたちにも謝ってさ。あのおっさんが弁償代を肩代わりしてくれて、その返済の為にもちょっとね」
メディルさん、そんな悪徳金融みたいな真似してるのか……あれだ、「慈善事業じゃないんだよ?」とか言いながら悪行三昧しそうだ。
ちなみに、今日もシスと一緒に出たのだが途中で分担することになり、今は街の北西に位置する貴族街に来ていた。
「それにしても、ミスティが貴族街に居るなんて珍しいね。何の仕事?」
「あー、いや……悪い、秘密なんだ」
「そう? まぁうまくやってるなら良いけど。僕はまだ仕事残ってるから、またね」
「あ、ちょっと待ってくれ」
ミスティは僕の右手を取り、引き留める。他に何か用事でもあるのだろうか? いや、どう考えてもこの身体の事だろな。
「なに?」
「おっさんに聞いて、カエデがラスティじゃ無いってのは分かった。だからさ、協力してくれないか?」
「協力?」
「ああ、貧民街の皆のところに付き合ってほしいんだ。みんなラスティの帰りを待ってるし、不安に感じてる。フリでいいからさ」
「………………」
それを聞いて、僕は何故かイラッと来た。いや、理由なんて分かってるんだ。でも、それを明確にしてしまう事を避けた。自分の事と同じような気がして。
「ダメ、フリはできない。そもそもラスティを知らないし、皆だって偽物に気付かないほど浅い付き合いじゃないでしょう?」
「でもっ……」
「だから、生き別れの双子って事でいいかな?」
「へっ!?」
てっきり断られると思ったのだろう。素っ頓狂な声が聞こえてきて、僕はちょっとだけ楽しいと思ってしまった。
「そんなに言う程似てるなら大丈夫でしょ? それに僕も会ってみたいしね、ラスティの家族たちに」
その言葉を聞いたミスティは、嬉しそうに燥いぎながら僕を貧民街へと歩き出す。シスに連絡を入れると、どうやら問題ないらしい。ただし、何かあればすぐに行動できるように、とのこと。
「ねぇ、ラスティとミスティって名前が似てるけど、何か関係あるの?」
道中、暇していたこともあって何気なく聞いてみる。これは昨日からすこし気になっていたことだったが、混乱してしまったので聞きそびれていたのだ。
「ああ、ラスティってのは俺がつけたんだ。俺の母さんの名前なんだぜ」
「え、じゃあそれまでは名無しだったって事?」
「ああ、この町には奴隷として売られてきたみたいだ。結構頭は良さそうだったけど、名前を聞いたら無いって言うから、俺がつけたんだ」
「でも、奴隷として来たなら貧民街に居るのはどうして? 奴隷って、一応仕事持ちでしょ?」
このゲームは中世という時代背景のせいで、奴隷制度は存在している。しかし、そこはゲームである。奴隷法というものが存在しており、一つの職として確立されているのだ。奴隷となるのは戦争捕虜や孤児、食い詰め人などが当たるが、スラムの職無しよりはマシな立ち場にある。なにせ法によって権利を守られているのだ。現実の奴隷よりは派遣社員的な立場に近い。
「ああ、土産奴隷だったみたいだな。貴族の娘の使用人にでもしようとしたみたいだけど、ラスティは綺麗だったからさ、嫉妬して追い出したんだよ。んで、俺達が保護したって訳だ」
嫉妬って……でも、この容姿なんだったら仕方がないかな。いくら小さいと言ってもかなりの美少女だし、大きくなったらそれはもう美人になるだろう。貴族の娘が、奴隷の使用人より美で劣るのはさぞ許せまい。その辺りが分からない無神経パパなのか、ただの親馬鹿なのか。
「そっか、えらいね」
「……っ」
自分の身長より、ちょっと大きなミスティの頭を背伸びして撫でる。すると、ミスティは照れ隠しなのか顔をそらしたが、撫でるのはOKらしい。可愛いなぁ。
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「ここが俺たちの貧民街だ」
「………………」
目の前の光景に絶句する。砂埃が舞い、鼠や猫や犬、凶悪そうなおっさんが闊歩している所だとばかり思っていたが、ちょっとボロイだけで案外普通だ。ていうか、本当に子供しかいないんだね
「おーい、セシリー」
意外と広いベニヤの寄せ集めの建物に入った僕らは、奥で縫物をしている女性に声をかける。くすんでいるショートカットの金髪に汚れの付いた服に肌、かなりひどい状態だがどうやらこれがデフォらしい。もうちょっと良いもの着せてやれよ運営さん。
「何よ、今忙しい……ってラスティ!? 今までどこ行ってたの、心配したんだから!」
セシリーと呼ばれた少女は、こちらを見ると怒っていた顔が一瞬で綻び、ダッシュで僕に飛びつき、力の限り抱き付いてきた。ぐにぐにと顔に触れる柔らかい肉感に戸惑う。胸が、胸がやばい。貧民街のくせに、やりおる。
「あ、違うんだ。こいつがこないだ言ったカエデだよ」
「へ!? ラスティじゃないの? こんなに可愛いのに?」
「可愛さ基準で人を判断すんなよ、セシリー」
やれやれと言った風に肩を落とすミスティ。いや、そういえばこの人たちNPCなんだけどな、全然そんな感じしないや。こんなバカ話も出来るせいで忘れるところだった。
「は、初めまして。カエデと言います。できれば早くおろしてほしいです」
「やだよー。ああ、このぷにぷに感、いつもとは違うさらさらな髪……うん、確かに違うかも。君は良いところのお嬢さんだね?」
「いえ、ただのしがないバイトです(マジ)」
「そう? よっぽど良い所の使用人なんだねぇ。もしかしてラスティとは姉妹だったりするの?」
「もしかしたら、ですね。生き別れの姉妹が居るって聞いてただけですし」
ここで、設定を加える。一緒に暮らしていた彼女でさえこう言うのだ、これがベストな言い訳だろう。
「そっかぁ、じゃあ会えなくて残念だったねぇ」
「いえ、ミスティと一緒に探しますし、大丈夫ですよ」
「そうなの?」
ミスティが『今はじめて聞いたんですけど!?』と驚いた顔をこちらに向ける。大丈夫だ問題ない。そしてセシリーは、何故か難しい顔をして考え込んでしまう。
「うーん、私としては会いに行ったって言う騎士さんが一番怪しいね」
おっと、セシリーさんが僕をディスり始めるようです。
「だってそうでしょ? うら若き乙女を、幼いと言えどあんなに可愛い女の子を、見過ごす筈がないじゃない! きっと拉致監禁の上毎晩あんな事やこんな事をしているに違いないわ、羨ましい!!」
待って、待ってください。暁の事はいっそどうでもいいけどさ、何言われたっていいけどさ。え? なに? 羨ましいって言った?
「そうだわ、今度見つけたら捥いでやる。全力で!」
ガクリ。
捥ぐって……いや、聞かなかったことにしよう。あともし戻れても、暁の姿でセシリーさんに会ったら逃げよう、それこそ全力で。
「それで、この子を紹介しにきたの? それとも何か用?」
「ああ、いえ。ただ僕と似ているラスティって子の友達、というか家族を見たかったから……ですかね?」
「へぇ。案外しっかりしてそうじゃない……しかし僕っ娘とは、私の趣味をナチュラルに抉ってくるわね、結婚する?」
「いや結婚って……あの、セシリーさんってもしかして……プレイヤー?」
「ん? ぷれいやー? 何それ」
「あ、いえ、何でもないです」
僕っ娘とか言ってる時点でプレイヤーかと思ったけど、どうやらプレイヤーじゃないようだ。きっとプレイヤーの話でも聞いたのだろう。一応後でメディルさんに確認取っておくとしよう。まぁ、好き好んで貧民プレイするなんて物好き居ないと思うけど。
「セシリーお姉ちゃん、ご飯出来たよー」
「あ、リリー。ありがと、今いくよー」
僕らの後ろにあるドアが開かれ、小さな女の子がご飯の完成を知らせに来る。ゲーム内時間では夜だものな。僕もそろそろ帰ろう、ついでに誰かに何か作ってもらおう。ちょっと小腹が減ったし。
「あれ? ラスティお姉ちゃん?」
「ん……ああ、ごめんね。僕はカエデって言うんだ。残念ながらラスティさんじゃないんだよ」
リリーと言う少女の目線に合わせ、少し屈んで受け答える。やはり銀髪は目立つらしい。
「ラスティお姉ちゃんじゃないの?」
「うん、残念だけどね」
「こんなに可愛いのに?」
「セシリー、頼むからリリーを洗脳するな……」
「ミスティ、可愛いは正義なのよ……?」
この人、本当にプレイヤーじゃないんだろうな!?
四人で連れだって食堂に移動する。食堂とはいえ、テント式の屋根の下で薄い板と短い丸太を使ってテーブルに仕立てた食卓を、三十人はいるだろう少年少女が座って待っていた。
「こんなに居たんだ……」
「これでも少ない方らしいね。第三区じゃ百人は居るって話よ」
「セシリーは他の街の事、知ってるの?」
これは以外だった。プレイヤーならまだしも、貧民のNPCが他の街の事を知っているとは思わなかったからだ。
「一応私らにも、それなりの繋がりがあるのよ。成人さえ出来れば傭兵や冒険者への道が開かれる。だから、この貧民街出身の冒険者もある程度いるのよ」
「なるほど……そういえばセシリーさんて、職業あるんですか?」
「私は裁縫師をやってるわ。この子たちの服は、余りものの布きれを繋ぎ合わせてしか出来ないけど、街の人には結構好評なのよ? そういえば、あなた面白い格好してるわよね、可愛くて格好いい感じ。こういうのもあるのか……」
どうやらセシリーのアパレルスイッチが入ってしまったようなので、さっさと逃げるために食卓に急がせる。
「ほらセシリー、皆あなたを待ってるんでしょ? 行ってあげて?」
「やー、こんな可愛い子にそれを言われたら痛いね。どうする? 一緒に食べていく?」
「遠慮します、皆の分を横取りできないですし。それにアテはありますから」
「そっか。それじゃまた遊びに来てよ? 仕事を持ち込むのでもOKだから」
「そうですね、何か服を頼みましょうか。また来た時にお願いします」
それだけ告げると、僕は貧民街を抜けてギルドホームに向かうことにした。あんな冗談まじりの会話、NPCができるのだろうか。そういう疑問もあってのことだった。決して小腹が空いたからではない。
セシリーさんのおっぱい! Fカップ!!
カエデたんのちっぱい!! Aカップ!!
リリーたんのぺったん!! プライスレス!!!
ほかにも沢山の少年少女が貧民街にはいます。
セシリーさんは17歳くらい。
※この世界の成人は14歳です。