第24話 初心者
長らくお待たせしました。フリーディア第二章の開始です。
今回は基本的に「ゲームをしよう!」というコンセプトで進めるお話です。
ゲームシステムへの理解を深めようというお話です。
「これで良しっと……あとは接続してキャラクリするだけだよ、光」
私の友達、絵美ちゃんがVRゲーム機の設定を終えてくれた。半ば強制的にやる事になったオンラインゲーム「フリーディア・オンライン」というもの。VRには全く触れてこなかったから、今回が初めてのVRゲームだったりするのです。
「ごめんね絵里ちゃん、私こういう機械系って苦手で……」
「あぁ、知ってる知ってる。だから私がこうして設定してるんだから。それと、変に弄って向こうで合流できないのも嫌だから、名前は自由に決めても良いけどリアル準拠で行ってね?」
「分かったよ。良く分からないけど!」
「良いわ、私が言うコマンドを復唱しなさい」
そうして、絵里ちゃんの言うコマンドになぞって、現実の姿のままにゲームの世界に行くことになる。でも、髪色だけは金色にしようと思っているのです。
「よし、それじゃあ第一区の中央広場で待っているから、なるべく迷わず来るんだよー」
そんな言葉を残して、絵美ちゃんはフリーディアの世界に旅立っていった。向こうの名前はエミリアというらしい。職業が無く、行動次第で称号が付与され、それに見合った力が称号毎に育っていくそうだ。ただし使う武器や戦法で変わるらしいので、コントロールは難しいそうな。
「出来れば魔法使いになりたいなぁ」
魔法使いには、小さい頃から憧れがあるのです。氷魔法がマイベストなのです。
「さぁ――コールログイン、フリーディア・オンライン!」
そう言えば、どうすれば魔法が使えるようになるんだろう?
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「迷ったのですが……」
絵美ちゃんに気を付けろって注意されたのに、案の定迷ってしまいました。何処だろう此処。地図はどうやったら買えるんだろう。買い物の仕方も分からないよ。助けて絵美ちゃん、助けて通りすがりの誰か。
「君、さっきからウロウロしてるけど……どうしたの?」
ああ、誰か気付いてくれました。いやでも、こういうゲームでは女性プレイヤーに食い物にする悪い男の人がいると聞きます。ここは慎重に見極めなければいけません。
「あ、ああ、あのっ、その……えっと」
ああ、駄目でした! 思えばずっと女子校に通っている私が、男の人と話せるわけがありませんでした! 助けて絵里ちゃん。
「えっと、大丈夫? 格好から見ると初心者っぽいけど……初心者案内の人に酷い事言われたの?」
「……ふぇ?」
焦り過ぎていたせいか、姿どころか声すらも意識せずに勝手に男の人だと決めてかかっていましたが、目の前には私の事を心配そうに見つめる綺麗な女の子が立っていました。
太陽の光を鏡の様に反射する綺麗な銀髪、その一本一本が柔らかく細く、少し動くだけでふわりと舞う。私を見つめる大きな瞳は、透き通る程に済んだ琥珀色。髪の色に合わせたのかと思う程、驚くほどに白い肌。それでも生気を忘れないように、ほんのりと桜色に染まっている。彼女の白さに対抗するような黒いワンピースも、綺麗なレースが上品さを演出していて深窓の令嬢という言葉が脳裏を過る。私の女子校にもお嬢様はいるけど、ここまで綺麗な娘は見たことが無かった。
「カエデ、どうかした?」
「ああ、シスさん。なんかこの娘迷子っぽくて」
「迷子?」
シスと呼ばれた少女は、カエデと呼ばれた少女とは対極的に全体的に黒い。でも綺麗な黒さだった。天使の輪が出来るほどに瑞々しい黒髪に、快活そうながらも外に出ていないのか白い肌。それでもカエデさんよりは健康的な色合いだった。そして何より驚くのは瞳の色が赤色だったこと。確かに色くらいは好きに変えても良いとは思うけど、その赤色が不気味なまでに光を反射していなかった。半目に開かれた瞳は、全ての光を吸収してしまったかのように深い赤だった。
「あ、あの、中央広場って何処ですか?」
「ああ、中央広場ならここを真っ直ぐいって、突当りの壁左に行って……」
「えと? んと……え?」
ぽろぽろと出てくるシスさんによる「中央広場への道順」だったが、途中から頭が打受け付けてくれない位に複雑な道を支持してくれた。どこをどう行けばいいんだっけ?
「シスさん、そんな一気に行っちゃったら分からなくなるよ。初心者なんだから」
「っ!?」
カエデさんに窘められた事がよほどショックだったのか、シスさんは硬直してしまった。
「君、名前は?」
「えっと、ヒカル……です」
「ヒカルさんだね。中央広場まで案内するから、一緒にいこうか」
「良いんですか?」
「うん、それも僕達のお仕事だからね。それじゃあシスさん、暫く一人で見回りお願いね。案内が終わったら戻るから」
尚もショックを受け続けているのか、ガクリと膝を着き両手を地面に突き出して項垂れている。何がそんなにショックだったのでしょうか?
「ヒカルさんは、今日はじめたばかり?」
「え? えっと、そうですね。友達の勧めで始めたので、右も左も分からなくて」
「それじゃあ、友達が中央広場で待ってるの?」
「はい、噴水で待ってるって言ってました。もう大分待たせてると思うんですけど……何の連絡も無いし」
「あー、もしかしてまだフレンド登録はしてないのかな?」
何やら思い当る点があるのか、カエデさんはフレンド登録とやらについて話し出した。どうやらフレンド登録をしないと、相互通信は出来ない様で、最低でも一度顔を合わせなければ連絡は取れないとの事。だから待ち合わせの場所を指定したんだね。
「さて、ここからが中央広場。今がピークタイムだから人でごった返してるけど、あと一時間もすれば大分減る筈だよ。それで、中央広場はここからまっすぐ行ったところにあるから」
「あ、案内してくれてありがとうございました!」
「んーん。さっきも言ったけど、これも僕たちのお仕事だから、気にしないで」
笑顔をその場に残し、ものすごい勢いでダッシュしていくカエデさん。あんなに可愛いのに、あんなに素早いなんて……きっとこのゲームをやり込んでいるんだろう。
「あ、やっと来た。ヒカル、こっちこっち!」
「あ、絵美ちゃ――」
「エミリア! この世界じゃ私はエミリアね!」
「う、うん。わかったエミリアちゃん」
でも略せばエミちゃんだし、変わらないんじゃないかな?
「よーし、それじゃ言い訳を聞こうか?」
「へ? えっと迷子になってただけだよ?」
「十分よ……何本当に迷子になってるのよ。ちゃんと最初に『門の内側にまっすぐ行けば中央広場』って言ったでしょうが」
「人の波に呑まれまして」
「ヒカルとは夏祭りに行ったことが無いから知らなかったけど……まさか毎回迷子になってないでしょうね?」
「大丈夫だよ、昔は近所のお姉ちゃんが手を繋いでいてくれたもん」
そういえば、女子校に入ってから全寮制だったせいで全く合わなくなっちゃったけど、元気かなぁ、楓おねえちゃん。
「まぁいいわ。この世界じゃ人ごみなんて日常茶飯事だし、じきに慣れるでしょう」
「そうだといいなぁ」
他人事のように相槌を打つが、脳天にチョップを受けて『お前がじゃー』と言われた。ついでにHPが数ミリ減った。
「さて、それじゃレベル上げと行きますか。ヒカルは希望の戦闘スタイルはある?」
「魔法! 氷魔法が使いたいのです!」
さっきまでの笑顔が一瞬で曇るエミちゃん。どうしたんだろう?
「あぁ、えっとね。ほら、私って完全に剣士タイプじゃん? だからさ、その、さ? 魔法の覚え方知らないんだよね……」
「えっと、それじゃ……魔法は使えないの?」
「いや、魔法は使えるよ。けど、魔法系称号の取得方法が私じゃわからないんだよね」
「それなら、知ってる人に聞くのはどうなのですか?」
「あー、それでも良いんだけど……。世界観がぶち壊しになるから、極力やりたくないんだけど……wikiで調べるから待ってて」
そう言うと、エミちゃんは噴水の淵に腰を下ろしてメニューを呼び出して操作し始めた。私には見えないが、エミちゃんには今ウインドウパネルが見えているのだろう。ゲーム内でネットも出来るって言ってたから、多分それでどこかのサイトを見ているのだろう。
「ぉ、あったあった。なになに……? 機動式の付いた魔武具か、魔導書を読んで魔法を使えば魔術師の称号が出に入るだろう……だって」
「魔導書って高いのかな?」
「魔導書は高いけど、魔法が使えればいいんだから、スクロールで問題ないと思うよ」
「スクロールって?」
「簡単に言えば魔導書のバラページの一枚ってとこだね。単一で簡単に魔術を使うことが出来る便利アイテムだよ。私もいくつか持ってる」
スクロールという物があれば、魔法使いになれるんだ。
こうして、エミちゃんんの助力もあり、見事に私は魔法使いの見習い的立ち位置の称号【水使い】を得る事が出来たのでした。おかしいな、魔術師にもなれてない。
今作は前作までのシリアスな部分は大分少ないです。
ラブコメな面が強く出ると思います。宗吾は死にません。




