第22話 奪還作戦
すいません、やっぱりもう一話続きますです。
うう、シナリオ管理くらいやっておくべきだった……。
今回は前半カエデ視点、後半アプリ視点となっております。
意外とアプリさんが使い易いw
「おはよう、カエデ」
ん……もう、朝なのかな?まだあまり寝てない気がする、少しだるい。
「ほら、起きないと学校に遅刻するぞ?」
「え、学校?……でも、僕のこの恰好じゃ」
体を見下ろすが、どう見ても元の男の体じゃない。何故か女の体になってしまった体を見つめながら不満げな声で呟く。
「何言ってんだよ、カエデ。お前は昔からそのまんまだろうが。まったく、いつになったら成長するんだか……」
「そう……だっけ?ていうか宗吾、そう言う事いうとまたカレー禁止にするよ?」
「ちょ、それだけは勘弁してくれ!謝るから、な?」
「どうしよっかな~?」
おどけて見せる僕に、必死で機嫌を取ろうとする宗吾。とても暖かい、いつも通りの日常。
「な?彼氏の頼みなんだから、聞いてくれたっていいじゃんか」
「んふふ、そうだね。それじゃ今日は彼氏さんが大好きなカレーにしてあげようかな?」
そんな、甘い……蕩ける様な甘い日常。
二人で朝の準備をして、二人で一緒にアパートのドアを開けて登校する。そんな、あたりまえの日常が……とても、有り得ないと分かってしまった。
目を覚ます。幸せな夢が、有り得ない日常が、脳の隙間から零れ落ちていく。ああ、行かないで。僕の大切な日常を、奪わないで。
「お、班長。LF-Z01が目を覚ましたみたいです」
「こっちも、覚醒時の調査準備OKです。いつでも行けますよ」
「よし、それじゃあ負荷実験の開始と行こうか。これでリリスの力を確認できる」
どうか、奪わないで。僕から、大切な人を、宗吾を……。
長方形の白い部屋。端々にカメラが仕込んであるようで、どの角度からでも部屋の中を伺い見ることが出来る。窓なんて一切無い、そんな気持ちが滅入る部屋だ。そのリノリウムの床に寝転がされたカエデの前には、数人の少女が立っている。
各々の手には、ナイフや銃や斧が握られていて、およそ朝起こしに来る装備に見える物ではなかった。少女たちはカタカタと震えながらも武器を握り、こちらに近づいてくる。
僕はその姿を床に座った姿で見つめる。まだ寝ぼけ眼なのか、ぼんやりした視界だが……彼女らから発せられる『怯え』と『恐怖』が感じられる。そのどこにも、『殺意』なんて無かった。だから楓は、一切動こうとしない。何故か分かるのだ、彼女たちでは、自分を殺せないと。
それでも尚近づく少女たち。
「おい、リリスが死ぬか、イヴが死ぬか、賭けようぜ」
「あ?んなもん、リリスが死ぬに決まってんだろ?この人数差だぞ?」
「そらそーだけどよー、このまま見てるだけってのもつまらねーじゃんか」
「大体、こんな状況で賭けが成立するかよ、全員がリリス死亡に賭けるに決まってんじゃん」
「ですよねー」
「あー、もう。なんか面白い事おこらねーかなぁ」
聞こえる筈のない声が聞こえる。この部屋にはスピーカーはあるが、そこからじゃない。どこか違う場所からの声を感じる。まるで、頭に直接届くような、変な感覚。
「あ……あぁ……」
「………………」
目の前にまで辿り着いた少女は、僕とほとんど同じ容姿をしていた。いや、完全に一致と言っていいかもしれない。ただ、血色は僕より悪く、まともな生活を送っていないことが伺えた。
「どう……して、抵抗……しない、の?」
目の前に立つ銀髪金眼幼女が僕に問う。ギラギラと怪しい光を反射する鉄色の剣を胸元に掲げ、彼女は震える声でそう言った。そんな彼女に、僕は問いかけで応える。
「怖いの?」
「………………」
「辛いの?」
「うっ…………!」
途端に泣き出す幼女。その場に崩れ落ち、動くことも儘ならず、ただひたすらに泣く。後ろに続く銀髪金眼幼女も、同様に泣き出す。どう対処していいのか解らなかった僕は、手前の娘の頭をゆっくりと撫でた。
解るのだ。この子達は、僕と同じ様な存在だと。誰か別の心が入った、ちぐはぐな存在。僕と、同じ存在。
「あなたは……危険だって、聞いたの。あなたを殺せば、私たちは自由だって……。でも、こんな姿で外に出たって、どうすれば良いの?どうやって生きて行けば良いの?そんなの、体の良い殺処分じゃない……っ!」
「………………」
「だから、お願い……私たちを殺して?皆で話し合ったの、あなた一人に押し付けてしまう事になるけど……それでも、私たちは死にたい。やっと死ねるチャンスなの!」
身体を震わせながら、自らの死を懇願する少女。他の少女達を見ても、皆同様だった。涙を流して「殺して」と願う自分となんら変わらぬ容姿の少女達。彼女達に取って、本当に死こそが救いなのか。もっと何か、他に方法が有るんじゃないだろうか?宗吾にお願いして匿ってもらう?全員?ここに居るだけで、既に十人はいるだろう。きっとこの場所に出て来ていない子も含めると、倍以上居るに違いない。
僕には助けられない。助けてあげたい、こんな酷い事をした人達に復讐してやりたい。でも、今の僕にそんな力は無い。たとえ以前の男の姿であったとしても、僕にそんな力は無い。男にしては華奢な身体で、何が出来たと言うのか。
俯いたまま何も言わない僕を見て、諦めたのか……少女は胸元に掲げた剣を振り上げる。結果は結果。誰も殺せず、誰も救えず、ただ座っている事しか出来ない僕は、彼女達のこれからさえ保証出来ない。彼女達の命の保証が出来ない。どうしても、助ける事が出来ないんだ。ごめん、ごめんね……。ミスティも、ラスティも救えなかった。誰一人として救えなかった。
少女の剣が振られる。その刃は僕の首に向けて。僕らの背丈と同じ程度の剣を両手で握り、勢いを付けて振り抜く。その瞬間、少女の顔はくしゃくしゃに歪んだ泣き顔だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「BからAへ、対象の施設は未だ動き無し。どうぞ」
『こちらA、施設内は幼女天国か?どうぞ』
「こちらB、知るかこの変態ロリコン野郎!自分で突撃して確認してこいや!!どうぞ」
『こちらC、Aは後で銃殺刑です。これで世の中が少しは綺麗になりますね、あ、出来れば血は流さないで下さい、地球が汚れますから。どうぞ』
『こちらA (アルファ)!どうすれば良いんだい?どうやったら銃殺されてるのに血を流さずに済むんだ?ねえ教えてくれよ!どうぞ!!』
『こちらC。待ってて下さい、今から教えて差し上げます。ちょっと数十分だけ死にたいのに死ねない絶望を味わって頂きますが、大丈夫ですよね。どうぞ』
『こちらD……お前ら真面目にやる気有るんだろうな……?どうぞ』
『こちらE……。早く行く』
『こちらF。私もう帰っていいかな?』
「こちらB、頼むから協力してくれ……お前の潜入技能が必要なんだ。どうぞ」
『はいはい、解りましたよ……っと、電子キーの開錠に成功。警備が居ないかチェックしてくるわ。五分後に一回連絡するわね』
「頼む、Eも連れて行ってくれ。戦闘経験あるんだろ?」
『余裕』
『こちらD……ってか、なんだかグダグダな気がするんだが……』
俺達が何でこんな話をしているかと言うと、勿論カエデを取り戻す為だ。決して遊んでいる訳じゃ無い。決して。
ちなみに、Aがメディルさん、Bが俺宗吾、Cがナユタさん、Dがオルトさん、Eがシス、Fがアプリだ。それぞれが持ち場に着いてリーダーのアルf……メディルさんの指示を待つ。どうやら他にも協力者は居るらしく、さっきまでその人と連絡を取っていた様だ。
『こちらA、Fの報告が入り次第潜入を開始する』
『『『『了解!』』』』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それにしても、あの新入りってばマトモに仕事をしないウチから攫われてんじゃないわよ、まったく」
そりゃあ、何処に居ても目を奪われる様な銀髪に、琥珀みたいに透き通った綺麗な金の瞳。加えてあの明るい性格が太陽の光を反射してキラキラと……ハッ、違う違う!あんな新入り、とっと止めちゃえば良いんだわ、こんな後ろ暗い世界が似合う訳なんだから。
「アプリ、何処行ってたの?」
「今はFと呼びなさい、E」
「んぃ」
「で、何処って言われても……知らないギルドのロビーに寝かされてて、ギルドの人に起こされて追い出された……が、正しい状況かな……?」
「不法侵入?」
「違うわよ!あのゾンビハザードで死にかけの所を助けてくれた人が、そのギルドに連れてってくれたんだと思うんだけど。名前も聞いてないのよね……」
そういえば、シスは最後まで戦ってたらしいし、あの人の特徴を言えば何か教えてくれるかも知れない。そう思って、私は彼のアバターの特徴を覚えている限りでシスに話した。どうやら見覚えが有るらしく、普段無表情のシスにしては珍しく苦々しい顔をしていた。
「どうしたのよ、聞いちゃ行けない話だった?」
「そんなこと、ない」
「それなら、何で膨れっ面してるのかしら?」
「……今回の原因の一部、だから」
「はい?」
どういう事だろう、原因の一部?
何をどうすれば、ゾンビの原因の一部の人が襲われていた私を助ける方向性に行くのだろうか。
「たぶん、いる」
ここに。
そんなニュアンスを込めた言葉が、シスから伝わった。私を助けてくれた人が、この施設に居る。新入りを攫って、実験だか解剖だかをしようとしている連中の仲間だと、そう言っている。
私はどうしたらいい?ゲームの中とは言え、命を助けられた人を相手に戦えるのか?そもそも、殺す事に怯えている私が、リアルで戦う事が出来るのか?
否。戦えない、そもそも私の仕事は潜入捜査だ。戦うなんて事、恐ろしくて出来る訳が無い。
「それでも、カエデは取り戻す。あれは私の弟子」
「そう……ね。仲間だものね」
そう、この作戦はあくまで奪還が主目的。戦闘はやむを得ない場合のみに留めれば良い。
「中央通路、敵影無し」
それにしても、ここまで人の気配が少ないのも変な話だ。一応警備の人間が歩いているから稼働してる施設なんだろうけど……それにしても怪しい。最も怪しいのは私たちなんだけどね。
「ん、あの部屋……門番が居る。二人で立ったまま動いていない」
どうやらあの部屋には何か有りそうね。一応ここで五分だし、連絡を入れよう。
「こちらF、警備が門番をする部屋を発見。道中、脇道を徘徊中の警備兵六名。入ったすぐの警備兵は催眠ガスで就寝中。どうぞ」
『こちらA、では我々も潜入する。到着を待て。どうぞ』
「了解」
それにしても、この施設の構造……あまりにも素直すぎる。一直線の中央通路に、十字路が五つ。左右に部屋へと続く道が計十本。まるで気が枝分かれする様に……。何か意味が有るのかしら……?
数分後、私たちがここに辿り着いた時間よりも少し時間をかけてメディルさんたちは来た。どうやら二回程発見されたらしいが、無音で処理したらしい。ここ、ゲームじゃないんだけどなぁ。
「警備兵はBが外に運び出した。後少し待機してくれ、彼も追いつく」
「了解。なら、それまでに門番を無効化する作戦をお願いします」
「問題ない。シスくん、行けるね?」
「余裕」
「C、D、Fはここで待機。Bと合流次第、鎮圧に入る。何か有れば後方支援、及び退路の確保を優先せよ」
「了解」
なんだか帰りたい。心臓がばっくばっく言ってるもの。そもそも私は、こういう状況に慣れてないのよ……失神したら置いてかれるのかな……ああもう、なんで攫われるのよ、あのオバカさんは……。無事帰ったら、こき使ってやるんだから。
「B、只今合流しました」
「うむ、では制圧に移る。BとEは俺と一緒に突撃。隠密行動だと言う事を忘れるな?」
「了解」「ん」
ふっ、と。私の視界から消えた三人。気が付いたら既に制圧が終わっていた。いやいや、もう人間じゃないわよ。なにこの人達、気持ち悪い。
「チッ、こいつらのカードキーを持っていないのか。F、手伝ってくれ」
「はいはい」
うう、怖いなぁ。足下に転がっている警備兵は皆一様に気を失っていて、起きる気配がない。し、死んでない……よね?
「ん、このカードキー……」
「どうした?」
「え、あ、いえ。何でも……」
中に入る時と同じ鍵だ……どういう事だろう。中と外とで、普通は鍵の種類も変えるべきだよね……?考えられる原因は、まず資金不足?次点で罠の可能性。もう一つは外に繋がっている。だとしても、そんなに小さな施設じゃない筈だ。何かがおかしい、何かが……。
鍵を解除してドアを開ける。そこには三番の可能性、外だった。土の地面に、隅っこには草も生えている。
ただし、その中央部にはひと際目立つ黒い塊が有った。そして、何かの糞の様な……いや、何かが腐った様な匂いがする。腐臭が、この空間に蔓延している。
近づいてみると、その黒い塊の横には十数人の幼女の死体が置いてあった。黒い塊をライトで照らしてみると、どうやら焼却炉の様だ。中も照らして見てみると、いくつか骨が露出した黒い塊が残っている。つまり、この死体の山は消却待ちだと言う事だろうか。いや、この焼却炉と、積まれた死体を比較してみると死体の方が多い。つまり、消却速度が追いついていない……?
つまり、日常的にここで、銀髪の幼女達を焼却処分していると言う事……?
仕事の時は、絶えず客観的な思考を心がけるアプリでも、さすがにここまで推測してから先を見る事はしたく無かった。反吐が出る、とはまさに今の状況なのだ。しかし、彼女は推測を止めない。頭の回転速度は、もはやギルドでも随一になってしまっていた彼女は、さらにその先を考える。
さっきまでの素直すぎる通路。そして中央通路突き当たりに位置するこのドア。全てが集約した場所だとするなら、つまり枝分かれした通路の先の部屋群で製造か調教、実験が行われている?でも、ここはイヴ・プロジェクトじゃないって言っていた。ここはイヴを救う為に作られたって聞いたのに……。これじゃ、大差ないじゃない……。
「F、どうした?」
「部屋数はいくつか見てきましたか?」
「え、いや。ただ情報によると三十近い部屋が有るそうだが」
「そのうち、一番大きな部屋、解りますか?」
「ああ、一個手前の十字路を右に行けば、行ける筈だ」
親切にも壁に館内地図が掲示されており、それを見ながらメディルさんは言う。
「恐らく、そこにカエデが居ます。交戦中かもしれません」
「交戦中って、いや何で?」
「ここの死体にいくつもの裂傷が見られます。さらに痣や打撲痕が見られる所から、ここの財源のもう一つが解りました」
「財源?それとカエデくんと、何か関係があるのかい?」
メディルさん達は解らなそうに難しい顔をしているが、オルトさんは理解した顔をしている。苦虫を噛み潰した様な、今にも壁を殴りそうな勢いな恐ろしい形相になる。そう、財源として考えられるのは【売春】【人身売買】【臓器密売】そして……。
「AVと、殺人ビデオ……恐らく、その残骸だと思います」
「なっ……」
「ぐずぐずしている暇はありません。こんな深夜だからこそ、富裕層は時間を持て余している。もう撮影は始まっている可能性があります」
私たちはなるべく音を立てない様に、それでも急いで、一番大きな部屋。「実験運用試験室」へと向かう。あの死体に付いていた裂傷や打撲痕から見て、複数人での犯行の可能性が高いと見て間違いない。実験体を処分するだけなら、こんな回りくどい殺し方はしない筈だ。銃殺か薬殺でもすればすぐの筈。わざわざ怪我を負わせて殺している以上、その懸念は拭えない。
そして行動に移っている可能性は、カエデが失敗作として回収された事が原因だ。暴走状態に陥ったって言っていたらしいけれど、そんな不確定要素を解剖したらがらない筈が無い。しかし自分たちまで暴走の餌食になるよりは、スナッフビデオの撮影ついでに誰かに殺させれば良い。それが私の出した推論だった。我ながら下衆な想像過ぎて嫌になる。
はたして私たちが辿り着いた部屋に、カエデは居た。真っ白なリノリウムの床に、真っ赤なシャワーを降らせながら崩れ落ちる幼児の身体と、ころころと揺れる美しい銀の長髪が特徴的な、彼女の頭。口からは少量の血が溢れ、綺麗だった瞳は虚空を眺めて見開いていた。
既にカエデは、死んでいた。
あーあ、死んじゃった。どうしよ……どうしよ?
ちなみに作者はAVが大の苦手です。エロは大好きですが、AVは苦手なのです。
演技力の欠片も無い会話に、あんあん言ってるだけのつまらない動画としか感じられません。
これがエロゲからエロの世界に入った者の末路ですよ。二次元最高です。
スナッフビデオは……検索しない方が良いと思うな、うん。
と言う訳で、すみません。後一話、後一話で一章を終える事にします。




