第15話 邂逅、【父親(ファーザーズ)】
更新が少し遅れてすみません。
商店街の帰りに宗吾を殺そうかどうか、ずっと迷ってました。殺した後のアフターケアの事まで考えたのに。
時期尚早として生き延びました。
宗吾は最後まで生き延びられるのか……作者の刃をかわし続けられるのか……。
あ、今回はちょいエロです。
さて、それじゃあ作りますか!
僕はいつも通り、宗吾の住むアパートの台所に立ち料理を開始する。今日はヤツが大好き、というか魂の源とさえ言えるカレーである。
手の込んだ料理じゃないから、適当に作っても良いんだけど。カレールーは魔法の粉だからね!
それは置いといて。ちゃんと手を込めて作れば、その分美味しくなるから今日は頑張っちゃいますよ!
ピンポーン
ドアベルの音が鳴る。あやつめ、未だに高い位置にあるのは僕への挑戦に違いない。ドアに近づきスコープを覗こうとするが……やはりそれも高い位置にある。ちくしょう! 僕をそんなに苛めたいのか!?
「こんばんわー」
「ヒス……鍋島さん。どうしたんですか?」
「ヒスイで良いですよ、暁さん?」
「あぅ、僕の事は楓でいいですよ……」
「んふふ。それじゃあ楓ちゃん、相談なんだけど」
「ふぁい?」
「オフ会を開こう」
ヒスイはそう言って、宗吾の部屋でお茶を飲む。僕が出したお茶菓子と紅茶だ。ちなみに僕は夕飯の支度があるのだが、煮込むところまで待って貰った。絶賛コトコト煮込み中だ。
今は二人でテーブルを挟んで座り、話に花を咲かせていた。その本題がこれである。オフ会かぁ、前なら僕以外は皆女の子(仮)だったから楽しみだったろうけど、今や僕が女の体だしね。どうしようかなぁ。
「あんまり深く考えなくていいよ、私達はカエデちゃんの服とかアクセサリーとか靴とか、色々と見て回りたいだけだしね」
「やめようかなぁ」
「なんで!?」
言わずもがなである。
「ただいまー」
「あ、お帰り宗吾。ご飯もうすぐ出来るからね?」
「はいはい、今日は何かな?」
「さて、何かな~?」
えへへ~、と破顔する楓。自覚が無かったのか、ものすごく無防備な笑顔が振りまかれた。
「むぅ……橘くん? もしかして同性あ」
「どうしたんですか大家さん!! 俺に何か用でも!?」
突然大声でヒスイに尋ねる宗吾。どうしたんだろう、お腹が空いて苛立ってるのかな? なにせまだカレールーを入れていない。今はコンソメと鶏肉の出汁を野菜にしみさせている所だったから、カレーの匂いはしないからね。いつから夕飯がカレーではないと錯覚していた?
「あら、私の要件はもう終わったわ。一緒にデートしないかって話なだけだし」
「「デート……だと!?」」
僕と宗吾のセリフがハモる。いや、ヒスイさん? さっきオフ会だって言ったじゃいないですかやだー。
「それじゃ、楽しみにしてるねカエデちゃん! 詳しく決まったら連絡するね」
疾風のごとき素早さで部屋を後にするヒスイ。
「楓……」
「何? そーご……」
ぷるぷると震える宗吾。きっと悔しいのだろう、今まで宗吾も僕もデートなんてした事ないんだもんな、先を越されたと思って悔しいんだろう? 分かるよ。さっき宗吾が女子を三人も侍らせて歩いてるのを見て、僕もすこぶるイラっときたもの。
「俺は、俺は嬉しいぞ!」
「えっ!?」
何が!?
「だってお前、そんな形になってからどんどんと女みたいになっていって……もう昔みたいに親友同士じゃいられないのかと、そんな事をだな……おい、待て、なんで睨む」
「睨んでません―、僕は正真正銘生まれた時から男ですー、無駄な心配おつかれさまですー」
「いや、けどな? 最近の反応が、その、なんだ……か、可愛く、て……だな」
「キモ」
「ひでぇ……」
僕が女みたいだって? ははは、笑えない冗談だ。そんな事は強いられてもやるものか。
そんな某機動戦士三段活用を心の中で呟きつつ、台所に戻り、鍋にカレールーを投入する。
「か、楓様!? この香りはもしや……!?」
「ふふふ、気が付いた? これが欲しければさっきの言葉を撤回するがいい。僕は男らしくてダンディーなナイスガイだと言い直しなさい」
「くっ、何て卑劣な手を……さすが状態異常のカエデ、俺を空腹+カレー不足状態に陥れてからの作戦だとは!」
「ちょっと待って、何その二つ名? 初耳なんだけど」
「ああ、昨日の戦いぶりを見てシスの奴がそんな二つ名を付けたらしくてな。一体どんな戦いをしたんだお前」
「え、いや、こう……状態異常謝肉祭? あの小太刀でサクッと刺して燃やしたり、隠し弓で足止めしたり」
「えげつないな」
「レベル1だからね? むしろそんな相手に全力で絡んでくる高レベルモンスターの方がえげつないよ」
「それを状態異常で仕留める楓が一番えげつねぇよ」
「むぐぅ……」
反論が思い浮かばなかった僕は雑談を打ち切り、カレーを完成させて夕食に移る。今日のメニューは春キャベツのトマトカレーです。普通はバターを引いて野菜を炒めて火を通す事から始めるスタイルなんだけど、このカレーはベースの具材はお鍋で煮て、主役の春キャベツはレンジで温野菜に。歯ごたえを残すために、カレールーを入れた後に投入。トマトは缶詰を使用、なるべく滑らかになるように、ミキサーにかけてから投入。とろみが付くように水分は少な目。量は四人分。僕の分と宗吾の分×2、明日の宗吾の朝ごはん用で終わりだ。ちなみに僕の朝ごはんはジャムトーストである。ブルーベリージャムは目にいいのです。
辛口がいいと豪語する宗吾でも、ちゃんと手間をかければ文句の出ない甘口カレーが作り上げられる。二敗目からはチリパウダーを入れても良い事になっている。最初はそのままを味わうのだとか。強がりだよね。でも、前に僕がカレーを作った時にチリパウダーを滅多やたらにぶち込んだ時に泣いたのが効いているらしい。勿論男の状態である。だって悔しかったんだ。
「ところで、今日はログインするのか?」
「うん、ちょっとミスティに会っておきたくて」
「あー、あの小生意気な子供か。ってことはラスティって子の事か?」
「うん、僕にそっくりな子が居たって聞いて、やっぱり調べた方がいい気がするんだ。何処から来たのかって事も含めて」
「そうだな……なぁ、お前自身には何かしらの変化はないのか?」
「んー、これといって特に。あ、でもヤらしい視線とか男に手を掴まれたりするのはちょっと怖いかも」
「お前みたいなぺったんこなガキボディに欲情する男か、不遼たちもそうだったな」
「不遼……そうだ、僕……あの時何かを見たような……?」
頭がくらくらしてきた。何かを見たような……何だろう?
涙が頬を伝う。気付かない内に泣いていたのか、何を思い出そうとしているのか?
僕の頭にぽすんと置かれる大きな手。宗吾の暖かい手の感触が、凍えきった体を温める。
「大丈夫か?」
「んぅ……、だいじょーぶ」
ああ、なんかどうでも良いかな。泣いちゃうような事なら、思い出さない方が良いんだろうし……。
「それじゃ、風呂に入ったらログインするか。一緒に入るか?」
「いいのっ!?」
「いや、お前……そこは照れて嫌がるところだろう……?」
「僕としては、久々に裸の付き合いがしたい所だよ?」
それに僕が照れる必要がどこにあるのさ。男同士で何言ってるんだ。
「ああ、あれだ。今日は久々に銭湯だからな、男女別なのは仕方ないな」
「大丈夫だよ! 僕の見た目なら男湯も問題なしだ!」
「……マジか?」
「むしろ僕を女湯に放り込むのは止めて頂きたい」
「ですよねー」
「ですよー」
「「……………………」」
暫くの間、先に動いたのは宗吾だった。
「それじゃ普通に我が家のユニッ「何してるの、ほらいくよ!」」
速さが最強の力ではないと証明された瞬間だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
こんばんわ、只今の精神状態が絶賛バーストストリーム中な宗吾です。
何がそんなにアレかって? 親友で男だった楓が、俺の隣で体を洗っているのです。
そりゃ行くっつったのは俺だよ、そこは後悔してるよ。それに元とはいえ心が男の状態の楓を女風呂に突入させるのは、俺としても気が引ける。べ、別に羨ましくなんて無いんだからね!?
でもさ、狭い街銭湯だからか物凄く距離が近い。くそ、良い香りが漂ってくる。目が、目があああああ! 視線誘導とは高度な真似をしよる、お前は少佐か!? いや俺はロリコンじゃない! こんな子供の裸なんぞ見ても何の欲望も湧くわけが……!!
「どしたの、そーご?」
はい、ご免なさい! 絶対に俺の下腹部を見るなよ、たぶんテント張ってるから!!
楓の白い肌が、濡れた綺麗な銀髪が、潤んで煌めく金の瞳が、水分を含んで照り返す唇とかもうエロイわ、こんちくしょう! 体を洗った筈なのに、女の匂いが俺の狼さんを刺激する。こいつは男、こいつは親友、こいつは男、こいつは親友……アレ? ナラ、オソッテモ、イインジャネ? ユルサレルンジャネ……?
「があああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
思考が変な方向にシフトしそうだったので、全力で冷水を頭から被る。これで心臓が止まったら怖いけど、きっと仕方ないくらいにダメな人だ今の俺。
「ひゃっ、やぁっ! ちょ、宗吾!?」
「うがあああああああああああああああああああああああああああっ!!」
楓がエロイ声を上げるせいで、折角冷やした頭が再沸騰する。どこぞの少女漫画じゃねーんだぞ、なんで頭がフット―しそうになるんだ!! その綺麗な顔を撃ち抜いてやろうか!?
俺はアサルトライフルを肩持ちしそうになるが、銭湯には長物もないのでポーズだけである。楓が冷めた視線を俺に向ける。おや、その視線だけで大分落ち着くな。すげぇ。
「何してるんだか……」
「お前のせいだろうが……」
本気で分かっていないのか、首を傾げる楓。その仕草が可愛い。ちなみに今はフェイスタオルで長い髪を纏めているようだ。うむ、銭湯に髪を入れない。これ、庶民の鉄則ね。
今熱い風呂に入ると、マジで襲ってしまいそうで自分が怖い。なので冷水風呂にて冷やしてから熱い方に入る予定だ。楓は最初から熱い方に入っている。ものすごく安らいだ顔をしているが……周囲のおっさん共がすごいチラチラ見てる。おいおい、世の中は変態ばかりかよ。くそ、見るんじゃない! 楓を見ても真実を知ったら悲しくなるだけだぞ!?
もう少ししたら熱い風呂に入ろう。そう思ったところで、ガタイの良いおっさんが数人で楓を包囲する。
……あれ、結構ヤバい状況じゃね?
しかし俺は助けに入る事が出来ない。俺のエクスカリバーが真名解放状態だからだ。
すまん楓、何か問題があったらちゃんと助けるから、今は冷水で落ち着かせてくれ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
何だ、この人達。さっきから何も言わずに一人、また一人と僕の周りに集まってきている。何? 何なの?
ガクガクと震えながら見渡すが、誰もこちらを見ない。僕はそびえたつ背中の肉壁に覆われてしまった。
「少女よ」
「……?」
僕のことかな? いや、男湯にいる女の子なんて僕くらいだけど。
「何故男湯に居るのか、などと無粋な事は言わぬ。出ていけとも言わぬ。しかし、周囲の視線には気を付けられよ。情欲の目で見られるのは、如何に幼かろうと気持ちの良いものでは無かろう?」
「そ、そうですね……僕、そんな目で見られてました?」
「うむ、いつもはこの様な事は無いのだがな、今宵は何故か欲望が抑えられぬ輩が多そうだと思うてな」
「おじさんも、そうなんですか?」
「然り。だが、俺には大事な嫁が、可愛い娘が居る。悲しい顔をさせたくは無い。その心が、俺達を壁足らしめている」
「おじさん……っ!」
ヤバい、超かっこいい!!
「我々は父親! 不器用であろうと、子供を守る事こそ我らが務め。ゆるりと休まれよ、少女よ。我らが壁として守り通す」
変に尊大な口調が厨二病感を抱かせるが、そうだとしても、このおじさんたちの行動は男らしい! いや、父親らしい!!
僕は説明をしてくれたお父さん(他人)の背中に手を添え「ありがとうございます」と呟いた。
「くっ、静まれ! 俺には大切な家族が……! 愛する家族が居るんだっ!!」
「くそ、今そんな誘惑を!? 駄目だ、断ち切れ! こんな支配に飲まれる俺達じゃないはずだ!」
「この試練……っ! 超えられるのか、俺の様な嫁不幸者に……っ」
「馬鹿野郎! それは言うんじゃねえ! 俺達全員が故郷に残してきているとはいえ、心はいつだって一緒だ!」
「そうさ、俺達は父親……母なる星を守る役目を負っているのさ。これしきの事で負けてたまるかよ」
なんだか無駄に壮大だなぁ。でも出張かな? 大人って大変です。
「時に少女よ」
「はい?」
葛藤から脱したのか、賢者の風格で僕に背中越しに問いかける。
「汝はフリーディア・オンラインというネットゲームを御存じか?」
「へ、はい」
「アバターは、その姿のままか?」
「そうですね、でも最近作ったんですけど」
「そうか」
「おじさん達もFOやるんですか?」
少し考えるような間の後、さっきよりも低い声で頷いた。
「最近、第八区付近に赴いた事はあるか?」
「無いですけど……第八区? 今はまだ第五区までしか行けないんじゃ……」
「知らぬのか。街とダンジョンには入れぬが、フィールドは歩けるのだ。当然、出現モンスターは強い上に経験値は得られず、街が解放されておらんが故にドロップアイテムも転送サービスも無いが」
し、知らなかった。街解放と同時にフィールドも解放されるものだとばかり……。
「でも、どうして第八区なんですか?」
「うむ、汝に似た姿の少女を見たものでな。特徴が酷似しておった故、間違ったようだ。済まない」
「…………えっ!?」
「む、どうした?」
僕の声の変わりように気付いたのか、気遣うような声をかける父親紳士。しかし僕はそんな事はお構いなしに、男性の体の前に踊りだして声を張り上げる。
「その娘の事、教えてください!」
気付けばタオルも何も無く、素っ裸で父親紳士の前に飛び出していた。集まる視線、盛り上がる股間、赤く染まる僕の顔。僕はそのままダッシュで脱衣所に逃げ出した。
【父親】
※この中に楓の父親はいません。あしからず。
なんだか、閲覧数が凄い事になってまいりました。
とても嬉しいですよ!
いっぱい読んでくれることは嬉しい事です。
「天使の歌声を」で頭がこんがらがっている状況ですが、頑張って書いていきます!
このうえ異世界転生(主人公男)とかやったらどうなるのか見ものですが、頭がひでぶしそうなので設定を練って、どこかの大賞にでも応募します。
我はTS信者ゆえに。




