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第13話 宗吾の懐事情解決案

視点があっちゃこっちゃします。

後半ほとんど宗吾視点です。

というかむしろリアルパートです。

「初仕事失敗おめでとさん」

「半分だし、半分だし!」


 ギルドホームに戻り、報告を終えてからドラクスに会うと、ニヤニヤと笑いながら僕をいじめてくる。くそぅ、仕方ないじゃないか、あんなの資料になかったんだもん!


「いやいや、いかなる状況でもクリアしてみせるのがゲーマーの矜持であり、俺達の仕事だろう?」

「ゔぅ~……」


 ニヤニヤは崩さずに僕を苛め続けるドラクス。もうカレーは許可しない。


馬鹿ドラクスはそれくらいにして、今回カエデ君達が遭遇した青年と言うのは、間違いなくゴードン・フィラエル伯爵本人なのかい?」

「そう、言ってた」


 報告を受けたメディルさんの問いに、シスさんが受け答える。僕はあまり話を聞いていなかったから、詳しい所は分からない。これでも緊張していたんだよ。


「そうか、オルトの情報が間違っていた……という事か? それともオルトにすら隠し通せる力が【夢魔法】って事なのか?」

「【夢魔法】は特殊。寝てる時しか発動しない。オルトの諜報能力でも隠されるかも」

「そうか、就寝中は特に行動しなかったからな……悪いなカエデ、俺のミスだ」

「あ、いえ、ちゃんと仕事は達成できましたし?」


 自分のミスを認め、僕に謝るオルトさん。結果的には仕事完了なので問題ないと思うけど。


「俺的には、ゾンビが邸内を徘徊していたってのも知らない情報だ。それも含めて、すまなかった」

「ゾンビに関しては俺も興味があるな、この間まではそんなもの無かったんだろう?」

「当り前だ、いたとして俺が見逃す筈がない」

「となると、どこかに内通者がいるのか……それとも」

「それにしてもアンタ、よく人一人殺して平然としていられるわね?」


 アプリさんがソファに腰を下ろしながら言う。確かに初めての殺しにしては、罪悪感も何もない。


「まぁ、それは……あんな状況だと」

「相手が馬鹿、どうでもよくなる」

「へ、へぇ……そう?」


 シスさんがフォローを入れてくれるが、ぱらぱらと報告書を見るアプリさんの顔が引き攣っていた。そうなるよね、やっぱり。


「ま、それは良いとして、今日はカエデの初任務達成祝いだ! 半分とはいえ対象ターゲットは確実に死亡! それじゃ思う存分カレーパーティーだ!!」

「それはドラクス一人でやってね」

「俺達はこっちで普通にお祝いするから、ロリと」

「みなさん、お茶が入りました」

「あっ、シス! それあたしのケーキ!!」

「早い者勝ち」

「おぅ、カエデ。おめでとうだな」


 ドラクスを除く六人でプチパーティーを開く。既にインベントリにしまってあったのか、アプリさんがテーブルにケーキを並べていく。その中でクリームがたっぷり乗ったスフレチーズケーキをシスさんが掠め取り、もくもくと食べていく。


 何だか、前のギルドとは違う暖かさを感じた。


 ドラクスは部屋の隅で体育座りしていてけど、楽しかった。


 けど、僕はさっき、人を殺してきたんだ。寝ていた相手を殺しただけだから実感が無いとはいえ、人が焼けて、死体となり、それを見たときの吐き気は未だに覚えている。

 プレイヤーに使っても、死亡と共にエフェクトに包まれてリスボーン地点に送られるだけだから、実際に焼死体と対面するのは初めてだった。


 実感が無い。


 本当に僕が殺したのか? 彼は勝手に死んだのではないか? 悪事に対して天罰が下ったのではないか? 例え僕が殺したとしても、それに見合うだけの非道を行って来たのは事実だ、彼が悪いのだ。だから僕は、悪くない。彼は死ぬべき人間だった、だから、彼が死んだのは必然だ。僕が殺さずとも誰かが殺していただけだ。


 そんな理論武装を固めながら、僕は今日もログアウトしてから宗吾とベッドで眠りにつく。最近は当たり前になった宗吾の匂いが、僕の心を癒してくれる。もう宗吾は眠ってしまっただろうか、いつもお互いに背を向けて眠っているのだけど、くるりと体を反転させて宗吾を見る。どうやら寝ている様だ、大きな背中、向きを変えただけでクラクラする程溢れる宗吾の匂い。僕はそれを求めて、宗吾の背中にぴったりと張り付き、頭を擦り付けながら眠りについた。ああ、これ気持ちいいなぁ。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 こんばんは、宗吾です。


 今日も今日とて眠れない夜の始まりです。

おかげさまで最近の睡眠時間は授業中です、こんちくしょう。それでも成績が良いのは、空き時間に必死で勉強しているからだ。おかげで友達ができにくくなっている。原因はこいつにもあるのだが、それは言わないお約束だ。


 それにしても、楓はいつになったら部屋を出ていくんだろう? 初給金しだいですよね、わかってるよ。それまで一ヶ月近く、俺は不眠デイズが続くという事か。悪夢だな、いや、悪夢は眠れるだけマシか。俺眠れないしな、HAHAHA!


 だというのに、何故、何故、何故、お前は俺の背中に張り付いてくるか!? 頭を擦り付けてくるか!? さらさらの髪がくすぐったいけど気持ちい……って違う!! 柔らかい手の感触が心地いい……ってこれも違う!! 宗吾よ、理性だ、理性を保つのだ! 相手は楓、男の椎名楓だ! 幼馴染だ! 昔から俺のごはん作ってくれたり、朝起こしに来てくれたり、部屋の掃除してくれたり、最近じゃ弁当まで作ってくれるだけの幼馴染だ!! ちくしょう完璧じゃねえか!?


 俺は今夜も窓に映る暗闇が明るい色を照らし出すまで、悶々とした時間を過ごす事になるのだった。母さん、俺頑張るよ、理性を貫くよ! そんな時に思い出される母の言葉は………………ああ、そうだ『楓くん、家の宗吾バカのお嫁に来てくれないかしら』だった。ちくしょう、どいつもこいつも!!


 眠りたいのに興奮が強くて眠れない、そんな不眠生活を送っています。

 ダレカ タスケテ。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「宗吾、大丈夫?」


 朝ごはんを用意しながら、怖い夢でも見たのかげっそりとしている宗吾を見る。なんだか最近の宗吾はいつもこんなだ。そこまでカレーLOVEなのかな。しょうがないから、今夜はカレー作ってあげるかな。


「だいじょーぶ、だいじょーぶ」


 そう呟きながら、朝ごはんの米にカレーパウダーを振りかける宗吾。味噌汁には入れないようなので何も言わない。それくらいの自由はあげるのだ。僕えらい。


「今日は委員会だっけ?」

「ああ、ちょっと遅くなる。20時くらいかな……今日は俺非番だし、お前も非番だろ? 適当に飯作ったら先に寝てても良いぞ」

「そっか……」

「どした? そんな残念そうな顔して」

「ざっ!? ち、違うもん、そんなじゃなくて! その、夕飯は、どうするの……?」

「……外で食べてきていいですか?」

「ダ・メ ♡」

「さいですか……わかりました」

「軽食くらいなら許すから、カレーパンとか以外だけど」

「ぐぅぅ」

「はぁ、もう。僕が夕飯つくるんだから、ちゃんと食べてよね!?」

「はい、わかりました……」


 宗吾は不服そうだったけれど、無理矢理言い聞かした。今夜はカレーにするつもりなんだから、宗吾が他のところでカレー食べるなんて許せないもんね!


 でも、簡単に喜ばせるのは癪だし、でも、宗吾の笑顔も見たいし……うん、やっぱり教えないんだ。びっくりする宗吾の顔が楽しみだ。


 僕は自分の心の変化に気付かずに、夜に見られるであろう宗吾の笑顔を妄想して、頬を少しだけ赤らめた。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「よう宗吾、おはよう」

「ああ、雄二。おはようさん、はぁー……」

「どうしたんだよ、朝から眠そうな顔して……さては夜にお楽しみだったな? って、いててててててててててて!?」


 俺は朝から不謹慎極まりないことを言う馬鹿野郎の頭を、アイアンクローで締め上げる。

 俺が楓とお楽しみだと? 馬鹿を言うなよ変態さんめ、しかしお楽しみ……。


 背中に昨日のサラサラな髪の感触や、柔らかい体の感触が蘇ってくる。同時に香る、以前の楓とは少し違う、花のようなミルクの様な、甘い香りが脳を刺激する。あ、ヤバい勃ちそう。駄目だ、宗吾。勃っては駄目だ! ここで勃てば負けだぞ!!


 必死に赤い顔を隠しつつ、性的反応を起こそうとする股間を意識する。納まれ性欲、あれは男だ、男だ、男だ!


「なるほど、この甘い香りは楓ちゃんのものだな?」

「なっ!?」


 何だコイツ、俺の匂い嗅いでやがる。気持ち悪!!


「ああ、やべえ。なぁ宗吾、お前ん家にいるんだろ? 今日泊まってもいいか?」

「は?」


 突然、一部の女子がきゃぁきゃぁ騒ぎ出す。どうした変態ロリコンども、ここに幼女はいないぞ? 何がネトラレなんだ? 宗吾×雄二カプってなんだ、え、逆だと? 何だ、何でそんな目で俺を見る、そんな目で俺を見るなあああああああああ!!


 某帝王さんの心境を味わいながら、「泊めねーよ」と返して席に着く。はぁ、今日は体育は無いし、ゆっくり寝るぞー。ぐぅ。




「おい宗吾、起きろ」

「んー、もう下校時間か?」

「ちげぇよ、昼休みだよ。俺にお前の美味い弁当のお裾分けを寄越せ」

「やらねえよ、俺のだよ」

「そうか、俺は学食でカレー食うのに、お前の弁当のお裾分けも貰えないのか」

「雄二、お前俺に喧嘩売ってるだろう?」

「何、すこし分けてやらんでもない……そういう事だ」

「何をしている雄二、早く学食に行くぞ!!」

「はやっ!?」


 カレーが食える、それだけで俺は心が躍る。ああ、久々のカレーだ。前に食べたのは4日前だ、俺が作ったんだけど、俺が作ったおかげで、俺の為のカレーができた。楓は辛かったらしく牛乳をブチ込んでたりしてたが、それでも辛かった様だ。当り前だ、俺のカレーだからな! でも楓が作るカレーも甘口なくせに美味しいんだよな……不思議だ。


 学食に着くと、俺が席を確保しておく。俺は弁当だしな。

 雄二がカレーを盆にのせてやってきた。流石カレー、全メニューの内最速の提供が可能である。その上にはカツがまるっと一枚、そしてから揚げが四つ乗っている。所為ハーフカレーというローカルメニューだ。メニュー表にはカレーとカツカレーしかないが、お姉さんというキーワードと共にお願いすることで実現する裏メニューである。定食用のから揚げが加味されたガッツリ系男子の夢のカレーである。心残りは粉っぽい安カレーであることか。


「おう、良い席取ったな」

「あたぼうよ、早くカレーを、カレーカレーカレーカレー!!」


 どこぞの吸血鬼が急かす時の言葉の様に、雄二を急かす。

 雄二はちゃんとライス用の丼も貰って来たようで、そこにカレーを入れていく。ちなみに雄二には俺が二百円の資金上乗せにより、特盛を超えた極盛りカレーとなっており、通常の生徒では食べきれない上に高額メニューとして八百円というサイフクラッシャーだ。もちろん雄二は食べきれない。ちなみに、雄二が六百円支払う事になっているが、他の学食メニューと比べても酷く高い。通常百五十円のラーメンや、百二十円のうどん、三百円のランチメニューなど、格安の中での高額メニューだ。他人はそれを頼むものを勇者と言う。食べきったものを魔王と言う。


「しかし、本当によかったのか? 二百円だけで」

「ああ、弁当を分けてもらうしな。俺にはここのカレーより、その弁当の方が価値がある」

「そうか? カレーじゃないのに」

「お前のカレー馬鹿はもはや中毒症状だな」

「照れるぜ」

「褒めてねーよ」


 俺が極盛りハーフカレーに満足している間、雄二は分けると言っただけの弁当を平らげていた。この野郎。まぁいいか、カレーがあれば。


「なぁ、宗吾、これってこないだの……楓ちゃんが作ってるんだよな?」

「ん? そうだな」

「宗吾さん、娘さんを俺にください!」

「娘じゃねーよ?」

「乗れよ! ハズいだろうが!!」

「なんだ、貴様俺の娘とは遊びだったのか?」

「違います、お義父さん!」

「だれがお義父さんじゃい! 貴様に娘はくれてやらん!!」

「ほう、その年で娘がいるのか橘?」

「「………………ちゃうねん」」


 お、ハモった。


 見上げると、ブルーのジャージと角刈りがトレードマーク、生活指導兼体育教師富岡泰造が俺を見下ろしていた。なんだかニヤニヤしてるのは気のせいだろうか。気持ち悪い。


 周囲からは「まさかの三角関係!?」とか「無理矢理でもきっと……」とか「禁断の二重奏」とか聞こえてくる。なんだそりゃ。


「なぁ、橘。俺もそろそろ身を固めようと思ってるんだが、お前ならいくらか女を紹介できるんじゃないか?」

「そういう事はイケメンに言ってくださいよ、フツメンの俺に言うってどんだけ飢えてるんスか。ドン引きですよ」

「そう言うなよ橘、俺だって寂しいんだよ。保険医の三角(みすみ)先生は来月結婚だしさ、俺もせめて彼女くらい欲しいんだよ、察してくれよ」

「察したくもねえよ、その年で女子高生狙うのが間違ってるんだろ駄目教師!」

「結婚したいだけの女はごめんなんだよー」

「あんた鏡見てから言えよ……」

「頼むよ橘、紹介してくれるだけでいいから! な?」


 紹介するだけって言っても……んー、シスとかアプリとか……か? いや、流石に無理だな。俺の仕事にも関係してくるし……一応リアル知り合いだけど。


「分かった、五万出そう。それで頼む!」

「うぐっ」


 紹介するだけで五万か……くっ、一人暮らしの身には大金でござるな……。お、そう言えばいい人材がいるじゃないか。俺の部屋にいるんだから、その滞在費を稼げーっとでも言えばいいな。奴の中身は男な訳だし、俺が二万で楓が三万にでもすれば納得だろう。フフフ、まさかの臨時収入だ。これで焼肉に行っても良い。勿論ご飯はカレーをかけるがな! 焼肉屋のカレーって美味いよね!


「いいだろう教師富岡、ただし条件がある」

「い、いいのか!?」

「ああ、だが条件を呑んでくれ」

「分かった、何でも呑むぞ!」

「まずはさっき言った五万だ。これは譲れない」

「ああ、勿論だ」

「第二に、どれだけ見た目が幼くても気にしない」

「いや、ちょっと待て、流石に犯罪はよくないぞ」

「気にしなくていい、既に結婚できる年だ(女の場合)」

「そうか! なら問題ないぞ!!」


 何とこの教師、ロリもOKなのか。見た目通りの性欲魔人か。


「第三に、女らしくなくても気にしない」

「なるほど、男っぽいって事か。逆にそそるぞ?」

「ああ、もういいや。条件はこれだけだ、呑むのならデートをセッティングしてやろう」

「ああ、頼むぞ!」


 いい笑顔(性欲まみれ)で帰っていく教師富岡。良かったな、男とデートして五万払えるなんて。……とか言われなくて。フフフ、これで食事が少し豪華になるぜ。


「なぁ、宗吾。今の話って楓ちゃんじゃないだろうな?」

「ん? 何おまえ、ホモなの?」

「ちげえよ!」


 おお、雄二の魂の叫びに周囲の女子が肩を落としている。中には泣き出す子まで出て来た。どうした君ら、何があった。


「ただ、ちょっと心配になっただけだよ」

「そうか? でも楓なら大丈夫だろ」

「そんなもんかねぇ、というか」

「ん?」

「俺にも女子を紹介してくれ!」


 ここにも愛に飢えた狼がいた。俺だって愛に飢えているのに、何故ミイラがミイラに声をかけるのか俺には理解できない。


さーて、ガンガン過去のネタ帳が火を噴くぜ!

そのうち個別で話を書きたいところだけど、今は統合させていく予定になっているので、自分の持てるネタをいろいろと投下していく所存です。


楽しんでいただけると嬉しいですよー。にゃふふー。

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