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第10話 脳の浸食

前半部分はメディル達が経験したデスゲームのお話。

ルールからしてフリーディアとは違って、テンプレMMOです。

ちょっとグロ描写がありますので、苦手な人は読み飛ばすなりしてください。大分ぼかしたけど……。

 それは僕が高校生の時に起こった事件だった。


 【ファンタジースクール・オンライン】


 政府主導で進められた事で、不登校や病欠、中卒者を除いた全国の小中高の学生が三年間囚われたデスゲームの世界。巨大な学園を街に見立て、各県に一つの全四十七校を拠点とした社会が構成された。しかし、そこには居たのは子供だけではなかった。教師という大人、オブザーバーとしてログインしていた文部省の役人もいたのだ。


 それが、悪夢の原因となった。


 いくらVRゲームとはいえ、疑似的だが空腹感がある。それに娯楽としての食事もあった為に、俺達高校生組は小中の学生を集めて役割分担を行うことにした。学年としての役割分担は、小学生がバックアップ、中学生が採取や調合、高校生が戦闘という具合になった。勿論、戦闘が出来る奴はチームに加えたし、戦闘ができない高校生は小中の奴らとバックアップを主に行っていた。そんな棲み分けが出来ていた。


 一年が過ぎたある日、暗い表情の女子が多いことが気になった。彼女たちに聞こうとも、何の情報も口にしない。しかしナユタは何かに気付いていた様だった。それから、隠密が得意な奴を放って情報を集める。案の定、性的な事案が絡んでいることが確定した。


俺たちは見落としていたのだ。教師達が大人であり、女性教師の姿が暫く見えないことを。


自分たちの事で精いっぱいだった。彼らが何を考えているのか、予想すらしていなかった。だから目を向けることが遅れてしまった。学園の一角、第三保険病棟で、それを見た。


手足を縛られ、口にボールの様なものを噛まされ、散々犯され抜いた女性教師と一部の生徒たち。そして、その一部は既に事切れていた。体には所々痣があり、中には裂傷になっている人もいた。一番酷いのは、四肢を切断され身動きが出来ない状態にされていた子達。そんな所までリアルに作らなくても良いだろうに、なぜこんな恐怖を誘うビジュアルを採用したのか。


これはほんの一室の事。第三保険病棟は、そのほぼ全てがこんな状況だった。拷問部屋もあったが、俺は見る気力すら湧かなかった。難を逃れたのは、戦闘に出ていた女子たちだけで、他の子供は皆犯されていた。それに気付かなかった。悔しかった、殺してやりたかった。けれど、それは叶わない。


廊下や部屋に散らばる体の部品。生臭い血の匂い。臭い汚物の匂い。一面真っ赤な部屋の中で、ただそこだけが綺麗に輝いていた。赤く赤く、燐光を伴って、金色に輝く光の剣を両手に持って、輝く赤い髪を持つ無表情の少年が佇んでいた。


 その少年が、事件に加担した生徒と教師を含めた全員の人間を殺して、この事件は幕引きとなった。その少年は別の地域から来たというのが、僕らの見解だ。その少年は、僕らの姿を見た後には物凄い速度で離脱してしまった。だから結局その少年の素性は分からない。


 さて、ここまでは前置きで問題はここからだ。

 

 被害者の女子の中に、リアルは男性だという人が出て来たんだ。僕らのいた東京都の学園では実に三十四人も居た。名前も確認したし、周囲の人間に調査も行ったから間違いない。勿論、ログアウト後に顔を合わせた人もいる。そのうち二十人程がバックアップに回っていて、その子たちは全員犯されていた。


 そして、その子たちは次第に女性らしくなっていったんだ。行動や思考、仕草までもが。僕は壊れてしまったのかと思ったよ、でも彼ら……彼女らは女であることを受け入れていた。状況に適応してしまったのだ。そうすると、彼女らは止まらなかった。男性と恋をする人も出て来た、中には狩り組に居た元男子も影響を受けて女っぽくなっていった。


 そしてデスゲーム開始から三年が経って、ログアウトの時間が迫る中、大量の自殺者が出たのだ。それは彼女たち。現実では男でしかない、幻の少女たち。彼女らの数人が遺書を残していた。そこには現実に変えることへの絶望と恐怖が綴られていた。彼女たちを殺したのは、剣でも魔法でも魔物ですら無く、現実の男である自分という恐怖だった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「あの、被害者たちはどうして抵抗できなかったんですか?」

「月並みな話だが、暴力がそのまま死に繋がる世界だったからだね。例の少年が殺した生徒の中には、他の生徒を差し出す事でレイプを逃れた奴もいたそうだ。被害者から聞いた話でしかないから、正確性はないけれどね」


 話が終わると、メディルさんは新しくナユタさんが淹れた紅茶を啜りつつ続けた。


「精神は、心は肉体に引っ張られる。それは自意識という名の悪魔だ。仮想世界であれだけの事態になった、ならば君の場合はもっと酷いことになると予想出来る。人間の脳は、男性・女性ホルモンの大小で思考や行動に変化が現れる。自意識に加えて、肉体的な分泌作用があるのであれば、カエデくんが女性らしくなるのは至極仕方のないことだ。問題は、女性ホルモンの特性が鬱であること」

「鬱?」

「男性ホルモンは多幸感をもたらすと言われている。そして女性ホルモンは、精神的に不安定というか、弱くなるんだ。中には強い人もいるだろうが、そう言う人は黄体ホルモンが多いと思われる。カエデくんの場合、卵胞ホルモンが比率的に多いんじゃないかな?」


 おーたい? らんほう? 何それ?


「黄体ホルモンは、女性ホルモンのうち攻撃的というか、強い精神を形作るホルモンだね。逆に卵胞ホルモンはか弱い女性に多いと言われている。比率実験も多く行われているから、気になるなら調べてみると良い」

「はぁ……」

「そして、そう言う女性は殺人に耐えられない。壊れるか、引きこもるかの二択だろうね」


 そっか、僕の体は女のそれになっているのだ。それは目を背けられない事実で、精神にも影響する変容の風。つまり、男だった僕が消える、という事? 初恋のあの人の事も、最近気になっていたあの娘の事も、全てが無かったことになる? ああ、これも絶望なのだろうか。たったこれだけの事で、自ら命を絶った人達の恐怖が垣間見えた。


「……それでも、それでも僕は戻りたい。例え戻って絶望したとしても、それを良かったと思えるくらい強くなりたい。それに、女扱いには慣れてますから、多分大丈夫です」


 強くなろう。体に引っ張られないように、自意識に流されないように、自分をしっかりと持って、元の姿に戻るんだ。


「それじゃ、時間も余ったことだしカエデくんを愛でるとしよう!」

「台無しだよ!!」




「あー、ナユタさん、これはどういう状況なんですか?」

「お帰りなさいアプリさん、たった今ゴミの焼却が完了したところです」


 そこには死亡マーカーが浮かべて、倒れているメディルさんがいた。所々焼け焦げているのはご愛嬌だろう。


「オルトさん、本当にありがとうございます。この小太刀すごく使えます」

「ああ、お前が良いなら良いんだがよ、あんまりにも真に迫っていたから、今度からはちゃんと水を用意してやれよ」

「水魔法の本でも読んで称号取ろうかな。そいやドラクスは魔法剣士でしょ? 水魔法とか持ってないの?」

「あー、俺は無属性と地属性メインだからな」

「この際砂でも良いんじゃねぇか? 火が消えるなら喜んで生き埋めになるだろう」

「それでも燃えてたら怖いよね……これ、余命十秒だし」


炎上効果、恐るべし。


「あんたら楽しそうね……そういえば新入りは今回が初仕事なんでしょ? 大丈夫なの? 今のレベルはいくつなの?」

「はい、えっと……実はまだLv1なんですよねー……」

「いや、Lv1でメディルを殺すとかどんだけよ……アイツ、装甲は硬いのよ?」

「こないだオルトさんに貰った小太刀の状態異常で、十秒で焼き殺すっていうのがあって、それでこう、サクッ、ボワッっと」

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 死に戻りで二階から降りて来たメディルさんに、もう一度刃を突き刺す。瞬間燃えだして死亡マーカーが出る光景を見て思った。蘇生魔法リザレクション覚えようかな……と。


 それにしても高確率だな炎上。


「ところで、新入りは装備は貰ったの?」

「はい、最初の時に一式貰いました。防御力重視というより、効果重視なんですね」

「新入りのレベルが高ければ、高防御の装備も渡せるけどね。Lv1に渡せる装備なんて布服に効果のっけた物くらいしかないわよ」

「面目ないです……」


 話をしていると、また死に戻りしたメディルさんが二階の部屋から降りてくる。うずうず。


「そうだ、カエデくん。あの装備は戦闘用だったから、別の隠密用装備を渡しておこう。これも布だけど、効果は一級品だよ」


 ナユタさんに目配せをすると、ナユタさんがギルド倉庫からいくつかの装備を引っ張りだしてきた。どうしてだろう、すごく不安になるほど布地が少ない気がする。


「暗殺でしたらこの服がおすすめですね。無音の効果が付いた草履に跳躍効果の足袋ニーソ、服には認識阻害の効果、手甲は中級までの雷属性六種を書き込んだ魔法書です」

「うん、ものすごく恥ずかしい。というか、何で僕がどこかのネトゲで人気な青忍者(黒バージョン)を着なくちゃいけないのさ!? 裾が短い!!」

「うん、エロい」

「これがエロス……」

「小さいのにこの色気、俺を誘っているんだねカエデたん!」

「メディルさんはちょっと黙ってろ!!」


 そんなこんなで、僕は今ロビーで女忍者コスを着ているわけです。姿見で自分を見たけど、どう見ても犯罪です。腰マントが無かったら訴えてたね、というか今からでも訴えたいね。職場のセクハラでいいんだよねコレ?


「跳躍、無音、認識阻害、移動速度上昇、自動防御、雷属性魔法書装備、そして炎上小太刀か。これだけ揃ってれば、恐いもの無しだろ。はっきり言ってチート級だぞこれ、俺の時は暴徒鎮圧を一人でやらされたってのに……贔屓だ」


 ドラクスが目に見えて落ち込んでいる。今回はそれほど失敗の許されない案件なのだろうか? でもそういうのって、ベテランの人だけでやるものだよね。確かに僕も古参プレイヤーだけど、今はLv1だからというのも原因の一つだろうか。


「それじゃカエデくん、決行は明日の二十時だ。他に質問が無ければ、いつも通り警邏に出てくれ」


 こうして、僕の初仕事が始まった。


 本当にこんな恥ずかしい恰好で行くのかな?


やっと戦闘シーンに入れるー!

長かった、思えばここまで会話しか無いじゃないか!?

よくこんな座談会小説が読まれているものだ……ありがたいです!


このゲームでは、特殊効果の付いたものを【魔道具】、魔法の呪文が書き込まれて簡易的に魔法が使えるようになる道具の事は【魔法書】と呼ばれています。

武器だろうと防具だろうと石ころだろうと、全て【魔法書】です。


あと、黄体・卵胞ホルモンの効果についてはうろ覚えです。でも確かそんなんだった。ちゃんと調べて、違ったらそのうち書き直しましょうか。

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