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第8話 真意の影

本当は前回の分につなげたかった話です。


短め

クラークからの電話を切った数分後、今度はドラクス君から電話が来た。いや、リアルなのだから宗吾君と呼んだ方がいいか。僕を寝かさないのは幼女だけで十分なんだけどな。ふわぁ、眠い。


「どうしたんだい宗吾くん、時給なら上げないよ?」


 さっきの情報で少しは心が揺さぶられているのだ。平静を保とうと冗談を交える。しかしそんな大人の余裕をかき乱すような言葉が、彼から発せられた。


「捜索対象のラスティは、既に死んでいる可能性が高い」

「は? いや、どういう事だい? 君たちは今学校に居る時間だ、ログインして確かめることなんか出来ないだろう?」

「ああ、けど、今日俺が弁当を忘れてさ、楓が届けてくれたんだ。最初は笑ってたんだけど、うちのクラスの不良に手を掴まれたらパニック起こしたらしくて、最後に『ころさないで』って……」

「だから、容姿が酷似している“らしい”少女ラスティが死亡していると予想したと。でも宗吾君、それはおかしい。あれはあくまでゲームだ。現実との繋がりなんてあるわけがない」


 そうだ、ゲームで死んだら現実で死亡……なんてデスゲームは過去あった。けど、あれは現実的な手段で殺害されているはずだ。脳に対する電流負荷で殺すという。


「なぁ、メディルさん。アンタならいくつか仮説を立ててるんだろ? 俺だっていくらか考えてる。何で楓が銀髪金眼幼女あんなすがたになっちまったのかって」

「ああ、しかし……どう考えてもオカルトすぎるだろう? そもそも現実的じゃない」

「例えば、NPCが実際に俺達と変わらぬ魂を持っている、ならば、幽霊だって存在するんなじゃないか? それが憑依して……とか」

「ナンセンスだ。有り得なさすぎる。仮にそうだったとしても、カエデくんが少女に変化した原理が分からない。本来はもう少し身長が高かったんだろう? 質量保存の法則に反するじゃないか。そもそも肉体の変換がありえないんだけど」


 それは淡い希望だ。NPCが幽霊になって、誰かに取りついたらゲーム基準にその姿を変えるだなんて。都合がいいなんてどころの話じゃない。


「僕が考えるに、楓くんが突如として女性化した理由は分からないけど、パニックに陥った点なら理解できるよ」

「どういう事だ?」

「宗吾君……年上には敬語で話そうね? まぁいいけど。 簡単に言えば、彼女のアバターは少女ラスティに瓜二つだという。その時点で、もしかしたら類似するNPCデータを引っ張ってきたのかもしてれない。その際、NPCが持っていた人格データ毎トレースしてアバターを作ったことで、記憶がインストールされたんだと思う」


 しかし、この説にも無理がある。根幹となるプログラムが、何故そんなことをしたのかという点だ。この時点で既に有り得ない。何より、中にはNPCに似せたアバターで楽しむプレイヤーもいる。そんな彼らから、記憶の混濁なんて話は聞いたことが無い。


「なんかもう、有り得ないことが起こりすぎて感覚が麻痺してきた感があるな」

「そうだね、もう何も怖くないって言った回の内にぱっくんちょとか有り得ないよね」

「いきなりそんなディープな話をしないでくれよ、メディルさん」

「ただ、君は楓君のそばに居てやってくれ。元親友なんだろう?」

「元って何だよ、今も親友だっての!」

「要件は分かった。けど、仮定がどうあれ、今はカエデくんの心の平穏を第一に考えてくれ。これ以上何かあると、流石に俺達だけじゃ対処できないと思うんだ」


 しかし、さっきのクラークからの情報と言い、カエデくんの状態と言い、何がどうなっているのか……。ただ一つ分かる事、フリーディア・オンラインは、近いうちにサービス終了に追い込まれるだろう……。


いや、それだけで終わればいい。こうなった以上、絶対に【プロジェクト・フリーディア】だけは止めなくては、また大勢の人が命を落とす事になるかもしれない。それだけは、絶対に……!



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「う……?」


 いつの間にか寝ていたみたいで、気だるげに着布団をどかして上半身を起こす。うーん、何があったんだっけ? 朝起きて、おべんと作って、ご飯食べて、宗吾見送って……忘れたおべんと届けに来たんだった……。たしか渡せた……はず、だよね?


「あれ? でも何で僕は寝てたんだろ?」


 おべんと渡して、その時の会話で楓だってバレてしまって……まぁ、元から友達とか少ないし、いじめられっ子だったから逃げるつもりだったけど……そうだ、苛め……不良達に手を掴まれて……それで……ラスティの、変わり果てた姿……が。


「お、目が覚めたか? ちっとも起きねーから心配……って、大丈夫か? いや、倒れたんだから大丈夫じゃないか? でも顔真っ青だしな」

「そー……ご?」

「おう、カレー大好き宗吾さまだ。今晩はカレーを所望します」


 宗吾が馬鹿な事を言ってるね。カレーなんて作るわけがないのにね、いや嫌いじゃないけど、むしろ好きな方だけど、でも宗吾は食べ過ぎだと思うんだ。って、あれ? なにか大切な事考えてたような……? それより、いつの間に僕は部屋に帰ってきたのかな?


「いや、そんな憐みの目を向けるなよ、たまには良いだろ? ちゃんと材料も買ってあるからさ」

「ん、わかった。しょうがないから今日は肉じゃがね?」

「よっしゃ今日こそ肉じゃ……が、だと!?」

「カレーの材料で作れる和食、それが肉じゃが。不思議だね!」

「あの、楓さん、マジで、本当に、たまには良いじゃないでしょうか」

「…………はぁ、しょうがないね。分かったよ。月一でカレーにしてあげるよ」

「せめて週一で、週一でお願いします!!」


 まぁ、いいだろう。カレーは簡単料理だしね、僕の分としてサラダでも加えれば申し分ないかな?

 そんな当初の決意を揺るがしまくっている現状だけど、バイトに行く時間も考えると、カレーは確かに楽なんだよね。作る時間なんて一時間あれば十分だし。あとはいつでも食べられるし。


「な? 頼むよ、その時は俺が料理するからさ」

「じゃぁ、いいよ。でもそれ以外はまともな食事にするからね?」


 カレーをまともな食事じゃないとでも言うような言い方。全世界のカレー好きの人ごめんなさい、カレーは優秀な料理ですよ! 美味しくて手早くて量も作れる優れものです。でも、そればかり食べるのも悪いってだけの話ですから。


「じゃ、早速今日からお願いね」

「あ、はい」


宗吾の作ったカレーは、やっぱり具がゴロゴロしてて、小さいこの口では食べ辛かったよ。美味しかったけど!

宗吾君は基本カレーバカなので、他の事にはあまり頭が回りません。


正直自分でもどういった経緯で楓が銀髪金眼幼女になったのか、最初は特に考えてなかったのですが、今は大分おっそろしい展開になってます。非デスゲームタグ付けておいて良かったですよ。

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