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サトリの友達  作者: 李雨
8/24

ダブルデート2

駅前には、もう二人は来ていて、現れた俺たちの顔を見て驚いた。


「田代君て、そんな顔してたんだ」

川本の第一声がそれだった。


それに反して、相田が何も言ってこない・・・と思って、そちらを見たら、化粧をしたミナの顔に釘づけだった。

「なんか・・・雰囲気違うね」

「そ・・そうかな?」ちょっと照れるミナ。

「うん、きれいだよ、ね?亘」そういう川本。

てか、川本、おまえいつの間にそっちへ移った・・・。


「え・・と。悟がやってくれた・・・」ミナがそう言いながら照れて下を向いた。

「土台がいいからな」そう言いながら、愛しそうに頭を撫でてやった。

恋人の芝居なんてこんなもんだよな?

ミナの下をむいた顔の表情はわからないけど、耳が赤い。


着いてすぐに、日陰のある場所にシートを敷いて、お昼ご飯になった。

「うそっ。 ミナのお弁当、すごいじゃないっ。」

そう声を上げるのは、やはり川本だ。

お互いの彼氏の分も作ってこようと約束したらしいが・・・。

これも川本の提案だったらしい。

「あの炭職人が、よくもここまで・・・ほろり」

泣きマネして、からかっているように見えるが、それだけじゃない気がする。

炭しか作れなかったと知っているなら、わざわざ手作り弁当でとか言うか?

俺が手伝ってなければ、今日も、多分炭職人は健在だ。


川本の弁当も結構いろいろ入って、頑張りましたって感じだ。

ところどころに煮物まで入って、おいしそうだ。

なのに、相田は、「田島、お前の卵焼き、ひとつくれよ~」と真っ先にミナの弁当をねだった。

今日の自分の唯一をねだられてミナも嬉しかったらしい。

弁当箱を差し出している。

一瞬、川本の顔がこわばったが、それも本当に一瞬で、すぐに「じゃあ、私も」と横から箸を出してとっていた。

「私のがなぁい~」ミナが哀しそうな声を上げる。

「ああ。もー。俺のやるから、泣くな」

そう言って、自分の弁当から、ミナに卵焼きを一つ譲る。

「泣いてないっ。でもうれしーっ」

今日の卵焼きは上手にできている。

味は、俺の好みのだし入りだから、俺好みなのは当然なんだけど。

「おいしいっ」川本が声を上げる。

「この子、昔から調理実習は炭しか作らなくて、洗い場担当ばっかりだったのに。ほんとにミナが作ったの?」

やっぱり、持ち上げてるようで、さりげなく、ミナを貶めている気がする。

「うんっ、頑張ったんだよ~」

卵焼きだけは自分で作ったからな・・。

「そりゃ、最近のお弁当は愛が籠ってるからな。ほんと、上手になったよ、ミナ」

そういうと、ミナがすごく嬉しそうな顔をした。

最近思うんだけど、こいつって、犬みたいだ。

今も、パタパタと振られるしっぽが見える気がする。

・・・卵焼き限定なんだけど、と二人っきりなら言ってたな・・・

そしたら、耳を折り曲げたようなくぅ~ん、って顔をするんだろうな・・・。

そんな風にミナを見ていたら、川本が「ほんとに、田代君て、ミナにベタボレだね」と言い始めた。

「ああ、かわいいからね」さらっと流す。なのに、ミナが照れた。かわいいやつ。

「いいなぁ~」川本はちらっと相田を見る。

相田は普段と違って、今日は会ったときから滅多に話さない。

それもあって、川本だけが話しかけている感じがする。

その川本も、何だか焦っているような、困っているような、そんな顔を時々する。


何だ? 川本は何を狙ってるんだ・・?


よくわからないうちに、昼ご飯が済んだ。

その後も、2人乗りカートに「カップル変えて乗ってみようよ」と提案したり、射撃のアトラクションで俺の成績をわざわざ褒めたり、飲み物を買いに行くのに立候補して俺の好きな飲み物を一番に聞いたり、と川本の奇妙な行動は続いた。

普通なら、俺に気があるのかと思ったかもしれない。

でも、川本の眼は恋する目じゃなかった。

ジェットコースターの乗り場で、「ミナ、あなたこれ、嫌いだったよね。そこで待ってる?」と聞いた時、相田が「じゃあ、俺も一緒に残ろうか?」と言った時は、すごく嫌がってた。

ミナが「頑張るっ」と言ったことで、4人とも乗ることになったが、ますます謎で・・・。


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