表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MUSIQUE OF MAGIE ONLINE  作者: 皇 欠
第一章~風の少年と水の少女~
9/37

対峙

展開が急ですが、いい方法が思いつかなかったのでご容赦ください。


 再び二人は扉の前にいた。地底湖の門より更に大きく、龍と鬼が掘られた扉。ゴゴゴゴと音を立てながら開いてゆく扉。その先には……あの犯罪者パーティーがいた。


「あーなんだてめえら?」


 リーダー格の大剣が二人をねめつける。アユムもツボミを背にするように前に出て言い返す。


「あなた達こそどちら様ですか?」


 いつでも刀を抜けるように柄に手を置き、睨みつける。


「あーなんだ殺るか?」


 男も背の大剣に手をかける。


「待て待てウォン、多分こいつらの事だろうあの壁に書いてある文字の意味は」


 大盾を担いだ男の一人がそう言ってウォンと呼ばれた大剣使いを呼びとめる。


「文字?」


 アユムは大盾の後ろの壁を見やる。


「〝強さを示せ。対等の条件の元、強者を選べ。さすれば宝への道示さん〟……要するにあなた達と闘って勝った方がお宝を手に入れるって事ですね」

「ああさっそく殺りあうとしようか」


 ウォンは大剣を抜刀し、後ろに控えているメンバーも各々の武器を構える。

 すると中央が盛り下がり、コロシアムの様な闘技場を形造る。闘技場に立っているのはアユムとツボミ、ウォンと呼びとめた大盾を持ったプレイヤーの四人。観客席の所には残りのパーティーメンバーがいる


「なるほど。対等な条件ってこういう事なのね」


 ツボミがぼそりと呟いた。


「さぁ殺りあおうじゃないか!」


 間合いを詰め大剣をアユムに振り下ろす。それをアユムは居合い斬りで弾く。


「ツボミさんはあっちの盾使いをお願いします!」

「分かった!」


 ツボミは二人の隣を駆け抜け、盾使いに斬りかかる。


「そっち行ったぞ! フルッグ!」

「油断すんなよ! ウォン!」


 その一撃を盾使い・フルッグは自慢の盾で防ぎ、左手の直剣で横薙ぎに薙ぐ。その攻撃を紙一重で躱すツボミ。


「フッ!」


 盾に隠れたまま突っ込むフルッグ。ツボミはそれをバックステップで一度大きく距離を取り、助走を付けて、盾に手をつき、クルリと側転の要領で回り後ろに降り立つと同時に無防備な背中を斬りつける。ダメージエフェクトが迸り、フルッグのHPを削り取る。

 更に一音ハープの響きを震わせ、水弾を撃ち出す。


「水の奔流(スプラッシュ)


 斬撃から魔法へのノータイムで繋げられたコンボ。フルッグは気持ちいいくらいに吹き飛び壁にぶつかった。


「おいおいざまぁ~ねえなフルッグ! 女なんかに負けてよ!」


 仲間が傷ついていると言うのにそれを嘲笑う事の出来るこの男の神経が分からないアユムは、


「仲間なのですから心配してあげたらどうです!?」


 刃を交えながらも聞いてしまう。


「仲間? はっ笑わせるなよ。仲間だから仲良くしろ。仲間だから助け合え。仲間だから心配しろってか。馬鹿じゃないのか! 仲間っては利用するためにいるんだよ。組織に組みする人間ってのはな。上の奴らならもっと金を稼ぎたい。地位を上げたいって思うもんだ。下の奴らなら食いぶちを稼ぎたい。必要とされない人間になりたくない。まぁ多少違いはあるだろうが自分達の思惑を通す為に腹の中じゃ黒い事考えてるもんなんだよ。俺のパーティーもそうだ。いつ裏切るか分かったもんじゃない。だが奴らは出来ない。それがなぜか分かるか?」


 自分の言葉に酔いしれているのか饒舌に言葉を吐き続けるウォン。その眼には自身への自惚れと力への執着が見える。


「あなたが彼らを縛っているから……ですね」


 そう言いながらもアユムは攻撃の手を緩めない。力と速さを持った斬撃を怒涛の勢いで繰り出す。頭、足、腰、腕、首、クリティカルダメージを与えられる部位を的確に狙うアユムだが大剣では描けないだろう軌道を描いて全てを防ぐウォン。その自信に似合うだけの力を持っている証だ。


「縛ってるとは人聞きの悪い。守ってるって言ってくれ。あいつらは俺が守っているからこそゲームオーバーにならずに生きてられるんだ。そして俺は楽をするために奴らを使役し、楽をさせてもらう。見事なギブカルナドテイクだろ?」


 防ぎきったウォンは力強く大剣を持ちあげ、風切り音を唸らせながら振り下ろす。

 アユムは半身になって鼻先を通り過ぎる大剣を見送った後、ガラ空きの体に蹴りを喰らわせる。


「随分一方的なギブアンドテイクもあったものですね」


 放った蹴りは腹に当たりウォンの体をくの字に折り曲げる。HPゲージもそれに合わせて削れる。


「仲間ってのはそういうもんだ!」


 アユムの足を片手で掴み、地面に叩きつける。


「ガハッ」


 アユムの口から息が漏れる。それと共に痺れる様な感覚が背中を襲う。この世界では痛覚はあまり働いているとは言えない。たとえ腕が切られたとしてもそこに痺れる様な感覚が走るだけで血が出るわけでもない。またしばらくすれば腕も元に戻る。


「お前の様な甘い考えで生き残れるわけねえんだよ!」


 倒れて動けなくしたアユムに再び大剣で真っ二つにするために振り下ろす。


「アユム!」


 ウォンの体を水弾が吹き飛ばし、ツボミがアユムに駆け寄る。


「すぐ回復してあげる!」


 優しいハープの音色を奏でる。ゆっくり丁寧に一音一音慈しむように母が子供を優しく抱くようにそれは慈愛に満ちた命の曲。


「彼の者に癒しを(ティア)」


 ツボミがアユムの胸の上に手を持って行き、そっと傾ける。そこから命の雫が零れ落ち、アユムに触れた瞬間青い回復エフェクトに包まれる。アユムの削れたHPバーがすぐに回復する。


「回復士とは珍しいな」


 ウォンが珍しいと言った理由は水の魔法は唯一回復魔法を使えるという事で需要がありそうな気がするが、水の魔法を極める人間は少ない。それは水の魔法が回復の魔法を使えるというだけで他に特化した能力を持ち合わせている訳ではないからだ。戦闘中の回復はポーションよりも圧倒的に回復魔法の方が優れている。だがそれでも回復できないというわけでもないし、ダメージを喰らう前に畳み掛けるという手段もある。

 それらの理由から水の魔法を極めるプレイヤーは少ないのだ。


「ん? そういやお前の相手をしてたフルッグはどうした?」

「あの人なら気絶させたよ」


 隅っこの方で気絶アイコンを出して目を回しているフルッグがいた。


「お前も甘ちゃんか。いつ起きるかも分からんのに昏倒させただけとはな」

「私はあなたのようにPKを好んでやる様な下衆じゃないからね」


 そう言い合っているとフルッグの体が薄くなって消え始め、消えたっと思ったら観客席の方に移動していた。どうやら行動不能に陥ればリタイアと判断されるようだ。


「さぁ残りはあなただけよ。降参するなら痛い目見なくて済むわ」

「降参……ハッ、バカも休み休み言いやがれ。俺の力がこの程度とは見縊られた物だぜ!」


 息を多いく吸い込み、掻き鳴らす。響くは火の調べ。激しいロックのサウンド。滾るマグマの様な暴力的な力強さに溢れた曲。


暴虐(ヒート)


 ウォンの下にパフアイコンが付き、その体を赤いオーラが包む。オーラは陽炎のように揺らめいて空間が滲んでいる。


「さぁ行くぞ!」


 だが先に動いたのはツボミだった。地面を滑るように動き下から跳ね上がるように斬りあげる。それに反応したウォンは真っ向から叩き伏せる為に大剣を振り下ろし交錯する。だがツボミに力勝負は不利だ。大剣の重さとウォンの攻撃力が上から重圧となって襲う。


「ぐっ!」


 ツボミは負けないように剣を両手で支え、耐える。


「俺に真っ向から挑んでくるとは良い度胸だ!」


 もう一度振り被り、叩き付ける。


「オラオラオラ!」


 力任せになんども大剣を振り下ろすウォン。火花のライトエフェクトが散り、耐えるしかないツボミを容赦なく襲う。だけど、


「舐めないで!」


 襲い来る衝撃に堪えながら、密かに紡いだ演奏が魔法という力となって活路を見出す。


水飛沫(アクアクライシス)


 ツボミとウォンの間に水球が現れ爆ぜた。


「っ!」

「うぉ!」


 両者共に爆発に飲み込まれ、壁に叩きつけられる。ダメージは互いにあまり変わらなかったのかHPバーは同じくらいに削れている。

 だが覚悟を決めていたツボミは立ち治るのが速かった。距離が取れた瞬間からすでに演奏を始め、次の一手を打つ段階に取りかかっている。

 一音一音、荒れ狂う波を表す様に猛々しく力強く互いにぶつかりあう様な白波の様に強さと気高さを備えた曲。

 だがそれを打ち消す様にギターのサウンドが轟く。掻き鳴らすは炎の熱、表現するは火山の噴火、弾く弦は揺らめく炎に似ている。そして一歩遅れてウォンの魔法は発動する。

 滑らかに最後の一音を奏でたツボミは右手を構える。


水龍(アクアドラゴン)


 水の奔流が龍の形を取り、その(あぎと)でウォンを喰らうべく口を開く。


溶岩流(ボルカニック)


 ウォンが下に向かって何かを投げる様な動作をする。すると地面が鳴動し、地面から炎が噴き出し水の龍の体に喰らいつく。喰らいつかれた個所は激しい水蒸気を上げ輪郭を失い、最後には断末魔の叫びを上げて、消える。発生した濃霧のような水蒸気を突っ切ってツボミは再びウォンに斬りかかる。だがその寸前に横から唸りを上げて大剣の剣身が襲い来る。


「きゃ!」


 咄嗟に両腕をクロスして守ったものの嫌な音と共にHPバーの下に部位欠損アイコンが付いた。


「ツボミさん!」


 弾き飛ばされたツボミをアユムが受け止める。すぐにストレージを開いてポーションをオブジェクト化して口に流し込む。回復エフェクトが包み込み、HPバーが回復していくのを確認してホッと安堵の息を吐いた。そしてウォンに向き直る。その瞳には怒りの感情が滾っている。


話の途中ですがここで一度切ります。あまり長すぎると読みにくくなると思うので。


読んでくださった方ありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ