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MUSIQUE OF MAGIE ONLINE  作者: 皇 欠
第一章~風の少年と水の少女~
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対策

予約を間違えてました。遅れてしまって申し訳ありません。


ツボミによる記憶消去術が終わったのはそれから一時間後だった。しこたま殴られたはずなのに全く答えてない二人は再びツボミをからかっている。


「さーてまずこれを誰に送ってみようかしら」

「フィリアンさんそれ以上は辞めてください。ツボミさんが脱兎のごとく逃げ出して断崖絶壁から身投げしそうな勢いなんですから!」


 走り出そうとしたツボミの手を掴んで引きづられながらも引き留めているアユム。


「冗談だって。冗談。さすがに私もそこまでしないわよ」


 手をひらひらさせながら誠実さの欠片もない態度だったがとりあえず信用する事にしたのかフィリアンの隣に腰を下ろす。


「それでなにか私達に用があったんじゃないの?」

「んーあーそうそうこれこれ」


 ウィンドウを操作して開いたのは赤枠で縁取られたクエストウインドウだった。赤枠で縁取られてると言う事は緊急イベントクエストと言う事だ。


「なにか新しいイベントってこと?」

「そっ。しかも街襲撃クエスト面倒だわー」


 対面に座っていたドレンも同じページを開き、内容を読み上げる。


「日本領アフールの街を〝金属龍″グヒャダルが二日後襲撃します……ですか。これはまたきついのが来ましたね」

「あちゃー。あいつが来るのかよ。クソめんどくせ―な」


 溜息と共に悪態を付くアン。その言葉に逐一反応するドレン。


「アンさん汚い言葉遣いはダメだと何回言ったら直るのですか?」


 ドレンの辛言をスル―したアンはもう一度大きい溜め息を付く。


 〝金属龍″グヒャダル。その名の通り体を金属のように固い鱗で覆ったモンスターだ。その鱗はどんな武器の攻撃も弾き、魔法も通さない鉄壁の鎧だ。しかも防御力ならまだしも体力もバカみたいに持っている非常に倒しにくいモンスターだ。


「グヒャダルですか……結構出るパターンが多い街襲撃モンスターですよね。でも対策は結構されてるので問題はないんじゃないですか?」

「いえ。これはあまり知られていませんが街襲撃クエストにポップするモンスターはポップするために強さに補正が掛っているようなのです。より強くよりより倒しにくいようにプログラムによって成長されているということが分かっています」

「そういうこと。だから今回も前回と同じ様な方法が通じるとは限らないのよ。だから出来る限り出来ることをしないといけないわ。それじゃ皆一度ギルドに戻って対策を考えるわよ!」


 フィリアンの号令に全員従い、ギルドに戻る。





 ギルドに戻るとそこにはすでに別行動をしていたカイン、フィフィ、クロウトが集まっていた。フィリアンが詠んでいたのだろう抜け目のない人だ。


「よしよし。皆集まってるね。それじゃ会議始めようじゃないの」


 フィリアンの専用の椅子に腰かけ気楽な感じで会議を開始する。


「まずはあのバカみたいに固いグヒャダルを貫く武器が必要ね。クロウト今武器庫で該当する武器はいくつある?」


 クロウトはギリギリ聞き取れるくらいの声量で答える。


「前回同様の貫通力を誇る奴ならば百くらいはあるだろう。だが戦闘に参加するもの全員に行き渡らせるためには全く足りない」

「そうね。クロウトあなたに武器の調達をお願いするわ。金はいくら使っても構わないからこのクエストを乗り切れるようにお願い」

「引き受けよう」


 同じ調子で答えたクロウトだがその体からはやる気が漲っている。


「それじゃ次。作戦だけど今回はどうする? 前と同じで行く?」

「まず作戦の大前提として角を折らない事にはどうしようもありません。まずそちらから詰める必要があると思いますよ」

「そうね。それが一番きつくて面倒なのよね~」


 グヒャダルには額に二本、肩に二本、背中に三本づつ左右に分かれて生えており、この角を一本折るごとに防御力が下がる。グヒャダルを倒す常等手段だ。だがこの角がグヒャダルの体の中で一番の強度を誇り、折る為には幾つもの強力な斬撃や打撃、魔法でダメージを蓄積させる必要があり、相当な労力を使わなければならない。


「前回のようにそれぞれ一本ずつ私達が担当し、残りを参加プレイヤーに任せて折るとはどうです? 今回二人もメンバーが増えたことですし、負担は少なくなったと思いますが?」

「う~ん……出来る限り被害を出したくないしね。……そうだ! アユムあんたの〝魔法剣″って相手の防御力を無視して攻撃できるのよね?」

「ええ出来ますけど?」


 フィリアンが何を言いたいのかまだ気付いていないアユム。


「よし。勝ったな~んだ今回余裕じゃない」


 まだ分かっていないアユム。


「ようするにフィリアンはお前の〝魔法剣″でグヒャダルを斬れば終わると考えてるようだぜ」


 カインがアユムに意地の悪い笑みを浮かべて言ってやる。気付いたアユムがどういう反応するか楽しみといった感じだ。だがアユムは予想に反して簡単に手を横に振り気楽にこう返した。


「あっそれ無理です」

「えっ?」


 愕然とした様子でアユムの顔を凝視するフィリアン。


「えっとですね。確かに防御力を無視してダメージを与える事は出来ますが、僕自体の攻撃力が上がるわけではないんです。確かに確実にダメージを与える事は出来ると思いますが全部を削りきれるまではないと思います」

「けど止めにアユムに頼るのはいい?」

「正直自信がないのでなんとも……」


 困るアユム。補足するようにドレンがフィリアンに進言する。


「それにフィリアン。グヒャダルには魔法に耐性があります。威力を魔法に依存する〝魔法剣″ではグヒャダルに満足いくダメージを与えることは出来ないと思いますよ」

「ていうか自分が楽したい為にギルメンに全て押しつけるなよな」

「私あいつ嫌いなのよいいでしょ?」

「良くないに決まってるだろう!」

「はいはいいつものコントはそのくらいにして真面目にやりましょうよ」

「……皆自分の立場を自覚してよ」


 いつもの事と諌めるアンと容赦ない言葉で攻めるフィフィ。


「ともかくフィフィはクロウトとともに武器の調達を。カインとアンと私は参加プレイヤーの募集を行います。リーダーとツボミさん。アユム君はそのまま通常業務でお願いします。イベントの前だからと言って業務を忘れるわけにはいきませんからね」


 ドレンの締めでその場は解散となった。




読んでくださった方ありがとうございます。

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