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MUSIQUE OF MAGIE ONLINE  作者: 皇 欠
第一章~風の少年と水の少女~
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連携


二人をどうにか収めた〝ソレイユ〟パーティは今回のクエストターゲットである〝ラルゴル・ドラゴン〟がいる渓谷フィールドのポータル前に移動し、いの一番に崖の先まで走った。


「おお~いるいる獲物が居るぜーーーーーーーー!」


 眼下を見下ろしたカインは叫んだ。木霊でカインの声が遠く遠く渓谷の隅々まで響く。


「やめなさい恥ずかしい!」


 アンがカインの頭を思い切りどついた。ここはフィールドだがパーティメンバーによるダメージは発生しないためHPバーが削れる事はないが衝撃はある為、危うくカインが地面とキスをする破目になりそうになっていた。


「危ねえだろ!」


 またヒートアップする二人をドレンが間に入って止める。


「いい加減にしないとあなた達にギルドの掃除を言い渡しますよ」


 ギルドの掃除というのはつまり国会議事堂全てを掃除するということだ。あれだけ広い場所を二人だけで掃除しろというのはほぼ無理な話なのだがドレンはやらせると言ったら本当にやらせる厳しさも併せ持っている。


「「はい。もうしません‼」」


 即さま直立不動で答えた二人。こめかみからは一筋の汗が顎にかけて流れる。過去に罰が受けた事があるのかもしれない。


「では狩りを始めるとしましょう。前衛はカインと私が勤めます。中衛はツボミさんとアユム君お願いします。後衛はアンとフィフィよろしいですね?」


 全員不満はなくすぐに頷いて答えとした。


「じゃあまずは三匹同時に相手しましょうか」

「三匹って大丈夫なんですか〝ラルゴル・ドラゴン〟は一匹でも十分に手強いと聞いてるんですけど?」

「ん? うちはいつもそんな感じで狩ってるぞ?」


 カインが不思議そうな顔をしてアユムに問い返した。群を抜いて強いランカーしかも仲間にも同じランカーが何人もいるのだ。狩りの仕方が少しぶっ飛んでてもおかしい事はない。


「まぁお二人は見学されてても構いませんよ。一度私達の戦いを見ておくのもいいかもしれませんしね」


 ドレンは淀みなく指を動かして自らの装備をオブジェクトを実体化させる。二つ名の所以たる青銅色のタワーシールドと銀色に鈍く輝き僅かに赤い色をした三日月刀(シャムシール)を手にしている。防具は光を吸収する漆黒の黒と血を連想させる紅のラインが禍々しい西洋風のフルプレートアーマー。典型的な壁仕様(タンク)の装備だ。


「行くぞ相棒」


 戦闘準備を整えたカインが前に出る。彼の両手には紅と蒼の戦斧(ハルバート)が握られている。戦斧とは斧と槍を合わせた様な武器である。突いて良し。払って良しの優秀な武器だが武器自体が重く高い筋力を要求すると共に扱いが難しいとして使う者が少ない武器だ。しかもそれを二刀使いこなすカインはその技量も相当なものだろう。カインの防具は全く防具らしくなく、ラフなシャツとジーパン、防具らしいのはその上から羽織っている迷彩柄のコートという出で立ちだ。そんな出で立ちでもカインが身につけているとそれは鎧よりも堅い防御力を有して見えるのはカインの自信がにじみ出しているからかもしれない。


「それじゃ手前の三匹でいいかしら?」


 矢を三本番えて放つ準備を整えていたアン。彼女の弓はロングボウに分類される大型の弓だ。それでも一般的なロングボウと比べると大きくそれでいて頑丈そうだ。矢の方に注目すると矢羽の色が違っている。矢羽の色はそれぞれ異常状態を引き起こす効果を見分ける為の者だ。毒は紫、黄色は麻痺、緑は睡眠と言った感じだ。ちなみに白い羽はなんの効果も持たない普通の矢だ。今彼女が番えているのは白が一本、黄色が二本だ。二体麻痺にするのだろう。弓を持っている左腕にはガントレットを付け、体の方はピンクを基調とした桜模様が描かれた着物をゆったりとした感じで着こなしている。


「フィフィあなたは大丈夫ですか?」


 アンの更に後ろで待機していたフィフィ。小柄な彼女の右手には無骨な僅かに歪曲したククリが逆手で握られている。装備も影で布を織ったのではないかと思われる黒一色の服に、唯一の色として自分の瞳と同じ空色のケープを身に付けた装備だった。その姿は暗殺者のそれだが、アユム達は彼女の本質を知っているためそれが目立たないように必死で考えた姿のだと分かる。小さく頷いたフィフィはスッと姿勢を低くした。アユム達もすぐに戦闘準備を整えてドレンに頷いた。


「ではアンお願いします」

「了解」


 アンは番えた三本の矢を同時に射出した。三本は緑色の軌跡を描いて狙い違わず〝ラルゴル・ドラゴン〟の顔に命中する。白は一番近くの奴に黄色は少し遠くにいる二体を狙っていた。攻撃を受けた〝ラルゴル・ドラゴン〟はアンをターゲットに決める。


「火球来ます。アンは私の後ろに!」


 言われた通りアンはドレンの後ろに隠れる。指示を出すと共にドレンはタワーシールドを下部を地面に叩きつけた。すると機構が動き出し、盾の裏に収納してあった鉄杭が飛び出し地面に固定する。〝ラルゴル・ドラゴン〟三匹の口から炎を固めた火球が吐き出される。狙いはアン。そしてアンはドレンの後ろにいる。つまりその射線上にはドレンが構えた盾があり完全に迎撃の用意が整った状態で火球を防ぐ。爆弾を破裂させたような音が三度盾を叩くがドレンは表情も変えずに指示を出す。


「カイン暴れてきなさい! アン第二射!」


 カインが大地を踏み砕かん勢いで一番近くにいる〝ラルゴル・ドラゴン〟に襲いかかる。カインを追い抜かす様に再び矢が〝ラルゴル・ドラゴン〟を襲う。色は先程と同じだ。近づいてくるカインを狙って火球を放とうとしていたドラゴンの攻撃をキャンセルさせる。その怯んでいる一瞬で懐深く潜り込んだカインは戦斧を〝ラルゴル・ドラゴン〟の弱点である首に全力で突き入れ、戦斧の槍の部分は完全に貫通し、斧の刃も半分まで埋まっている。傷口からは凄まじい程のダメージエフェクトが迸り〝ラルゴル・ドラゴン〟が苦しいのだろう絶叫する。


「ふんっ‼」


 両腕に息を吐くと共に力を込め、〝ラルゴル・ドラゴン〟の体を無理矢理に持ち上げる。どれだけ筋力に極振りすればこんな無茶苦茶ができるというのだろうか。この世界でも重力の頸木は存在するよって更に戦斧が深く食い込みダメージを与える。


「ドッセイ!」


 持ち上げた〝ラルゴル・ドラゴン〟をそのまま地面に叩きつけた。地面に叩きつけた衝撃で斧の刃が容赦なく体を切り割き、三枚に下ろした。〝ラルゴル・ドラゴン〟は断末魔を上げながらポリゴンとなって消える。断末魔に呼応したのか残り二体が怒りに狂ったように鎌首をもたげた。


「フィフィ! ブレス来るよ‼」


 〝ラルゴル・ドラゴン〟の攻撃でもっとも厄介なのは口から吐かれる二種類のブレス攻撃だ。火球は攻撃力が高く炎属性としても属性ダメージも強いが一直線にしか飛ばず、予備動作も見極めれば躱す事は容易い。だがもう一方のブレス攻撃がある為それが困難となる。ブレスと火球の予備動作は似通っているため見分けが付きにくくまたブレスは攻撃範囲が広いため火球と判断して回避してらブレスだったということもしばしばありそれによてパーティが全滅してしまう事も珍しくはない。

 唯一の救いは火球よりもブレスは攻撃力が低いということだ。それでも基本ダメージが高いためレベルが低いプレイヤーなら一撃でHPが全損してしまう。

 それを的確に見破ったアンはフィフィに指示を出した。フィフィはすぐさま前に駆けだしながら腹に響く。和風のメロディを奏でる。龍笛の音色が一音一音重低音で紡がれる。


「飲み込んで」


 静かに一言告げ差しだした右手から夜空の様な暗闇が円形に広がる。その数瞬後パーティメンバーを飲み込まんと放たれたブレスがその闇の中に音もなく吸い込まれていった。


「ナイス‼ フィフィ‼」


 アンは三発目の弓を放つ。既に一匹は仕留めたため番えた矢は麻痺の二本。矢は三度(みたび)顔に命中し黄色いライトイエローのエフェクトと共に〝ラルゴル・ドラゴン〟のHPバーの下に麻痺を示すアイコンが表示される。麻痺はモンスター個々の抵抗値にもよるが数十秒の間モンスターの動きを完全に止める事が可能だ。


「流石ですアン」


 いつの間にか前に出ていたドレンが痺れて動けないドラゴンの頭を狙って盾から飛び出した鉄杭を振り下ろした。鉄杭がドラゴンの口と地面を縫い付ける。わずかに空いた隙間から憎悪に満ち満ちた唸りを上げる。ただのプログラムで動いてるはずのモンスターがプレイヤーを憎むというのもおかしいのかもしれないがそれだけこの世界はリアルに動いている。

 だが攻撃のために盾を手放したドレンに麻痺から解放されたもう一匹のドラゴンが突進してきた。ダッ! ドレンの肩を踏み台に向かってくるドラゴンの眼にそのククリを容赦なく突き差す。片目にナイフを生やしたドラゴンは痛みを感じるのか苦しそうに仰け反った。それと共に部位欠損アイコンも点滅する。華麗にドラゴンの向こう側に着地するフィフィ。その隙を付いて盾を外して身軽になったドレンの連撃が〝ラルゴル・ドラゴン〟の体を切り刻む。斬り下げからそのまま跳ね上がる様に斬り上げ、そのまま連続水平切りを五発放ち、止めとして線を描くように合計十発の突きを放ちドラゴンの体を穿つ。最後の突きが決まった瞬間呻きと共に消えて行った。




読んでくださった方ありがとうございます。

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