出発
あけましておめでとうございます。今年が皆様にとって良き1年になることをお祈りしております。
道すがらアユムはツボミに狩りに行く事になった経緯を説明していた。
「私達の力を知りたいから〝ラルゴル・ドラゴン〟を狩りに行くと。さすが″ソレイユ〟あんな難易度の高いモンスターを簡単に狩りにいけるなんて」
今回のターゲットである〝ラルゴル・ドラゴン〟はドラゴンの名を冠するだけあってその強さは他のモンスターと一線を画す程に強い。姿は茶褐色の鱗に覆われ太い後ろ足に短い前足、背中には皮を張った両翼を生やしている、大きさは他のドラゴンと比べれば小型だが群れを成して行動する。その群れの数は少なくても三十、多くて二百という群れを作る時がある。それを考えると今回の百体討伐はそこそこ少ないのかもしれないが、それでも平均的なプレイヤーなら八人パーティが五組ほど作って十分な時間と手間を掛けて一匹一匹丁寧に狩っていくのがセオリーとなっている。ゆえに今からこのフィリアン合わせて七人で狩りに行くというのは自殺行為にも等しい事になる。だがランカーが名を連ねる〝ソレイユ〟にとってセオリーとはなんら参考にはならない。
「なぁ皆誰が一番多く狩れるか競わないか?」
カインが手を広げながら提案した。
「いいじゃないそれ。競った方が皆やる気出るってものじゃない?」
「それもいいですがやる気を出し過ぎて自滅されないでくださいよ」
勝手に盛り上がる二人にドレンが冷ややかに水を差す。その視線もいつになく鋭く棘げ棘げしい。この世界では驕りと油断が一瞬で死に繋がるのだからドレンが厳しくするのも納得が行く。
「ドレン固い事は言いっこ無しだぜ。久々に暴れられるんだ。多少は羽目外させてくれよ」
「だから羽目は外してはいけないとは言ってませんよ。ただ油断してはいけないということですよ」
「大丈夫だ。そんな事にはならねえよ」
その眼には真剣な光を湛えている。
「ふ~お願いしますよ」
「ドレンは心配しすぎなのよもっと気楽に生きなくちゃ」
「あなた方が気楽過ぎるから私が締めているんですよ」
いつもドレンが口を酸っぱくしているのだが彼らが素直に人の言う事を聞くなら彼もここまで苦労する事はないだろう。
「……あっ!」
建物の影に隠れていたのだろうフィフィが飛び出してきてドレンの腰に抱きついた。人見知りの激しい彼女は今の所〝ソレイユ〟のメンバー以外で人と話しをすることがほとんどない。だが〝ソレイユ〟に所属している彼女はどこにいても注目されるため彼女は街の中でも気配を押し殺し、目立たないように行動している。今日もここまで建物の影又は上でも通って来たのだろう。安心したようにドレンに頭を押し付けている。
「ほらフィフィ。そろそろ離して下さらないと歩けませんよ」
ドレンは小さい子供をあやし付ける様な優しい声色で話しかけながら頭を撫でる。
「フィフィほら」
見かねたアユムがフィフィに手を差し出した。フィフィはドレンとアユムに特に懐いており差しだされた手をすぐに取りアユムの顔を真っ直ぐに見詰めて太陽の様に笑った。その隣にいたツボミも気配で察したのだろう嬉しそうに微笑んでいる。
「おーい四人共。さっさと行こうぜ」
路地の壁に開いているポータルの前でウズウズしているカイン。外に遊びに行くのを親に
「宿題終わったら遊びに行っていいわよ」と釘を刺された子供の様だ。
「落着きなさいよ。バカみたいよ……あっ失礼バカだったわね」
「んだとアン‼」
「本当の事を言っただけでいちいち突っ掛かって来ないでよ」
ポータルの前でいがみ始める二人。この二人は一秒でも静かにしていたら死ぬのだろうか……。
読んでくださった方ありがとうございます。




