入団
「へっ!?」
置いてけぼりの二人を置いてフィリアンは指を鳴らす。するとフィリアンの隣に次々と転移してくる。最初に転移してきた眼鏡を掛けた優しげな青年がにこやかな笑みを浮かべて話しかけてきた。
「お疲れ様でしたお二人共。新たな仲間が出来て嬉しく思います。心から歓迎させてもらいますよ。では改めまして初めまして私は〝堅牢の大盾〟ドレンと申します。ランカー八位を務めさせてもらっております」
二人はすぐに今回の指揮官を務めていたドレンだと気付く。
「あの今日はお疲れ様でした」
すぐにアユムがドレンに労いの言葉を掛ける。その言葉にドレンは首を横に振る。
「いえいえ。私の仕事は全体の指揮だけでしたから前線に出られたあなた達の方がお疲れになっている事でしょう」
「いえフィリアンさんにお聞きしたんですけど、敵の本拠点にスペードの皆を集めてくれたのはドレンさんの指示だったと。皆が来てくれなかったら僕はもちろんツボミさんまでリアイアする羽目になっていました。本当にありがとうございます」
「ありがとうございました。ドレンさん」
「クスッそこまで畏まらないでください。これからは同じギルドの仲間なのですから仲良くして行きましょう」
そこでドレンは一歩引き、次に転移が終わった者と交代する。
銀髪を靡かせてその黒瞳を好奇心でランランに輝かせた美人がアユム達に近づいてきた。
「よろしく新人ちゃん。私はランカー十位〝幻影〟のアンよ」
「〝幻影〟のアンって言えば確かランカーの中で唯一の弓の使い手と聞いています。まさかフィリアンのギルドに所属してたなんて」
「私も新人ちゃんと一緒でフィリアンに誘われたのよ。面白そうだったからその場で入ったけど。それにしてもフィリアンあなた新人ちゃん達の手柄横から掻っ攫ったそうじゃない?」
「人聞きが悪いよアン。私は最後の一撃を入れただけ。それまで敵と戦ってHPを削ってくれたアユムとツボミがこの戦いの功労者なのは覆らないわよ」
「ふぅ全くからかいがいがないわね」
「そうやって暇を見れば私で遊ぼうとしないでよ」
「ふふふいいじゃない。私がこのギルドにいる一つの理由だしね」
「あんたね……」
二人の討論は更に激化し、二人を置き去りにされる。そんな二人に続いて転移してきた茶色の髪を腰まで伸ばしその四分の三のところで結わえた爽やかな美系が二人に話しかけた。
「お疲れ。俺はカインだ。よろしくな二人共」
「はい。よろしくお願いします。僕はアユムって言います」
「ツボミよ。よろしく」
お互いに握手を交わし笑みを交わす。
「はいこらそこ。こっちを無視して盛り上がらない!」
「そっちが勝手に盛り上がっていたんでしょアン。全くリーダーの事となるとすぐ暑くなるんだから」
こちらに矛先を変えたアンを受け流すカイン。そんなカインにドレンが近づいて話しかけた。
「カイン。そんな事よりもちゃんと自分もランカーだって教えてやらなきゃダメじゃないか。後で知られるとまた変に遠慮されてしまうよ?」
「ちょっとドレン。そんな事ってどういう意味さ」
アンがドレンに食ってかかるがそれを無視するドレン。
「俺がランカーに何の興味も知らない事知ってるだろうドレン。何が〝断罪の大剣〟だよ。お前と強くなっていたら勝手に呼ばれる様になっちまって……」
さっきと口調が変わったカイン。どうやらドレンとは親しい間柄のようだ。
「まぁカインが不服に思ってるのは知ってますけどそれでも自分の事なんですからちゃんと挨拶しましょう」
「了解ドレン。ランカー九位〝断罪の戦斧〟カイン改めてよろしく…………ハァ」
改めた名乗りを溜息で締めたカイン。うんざりという顔をしている。
「ハハ。二人共彼は世間から勝手にランカーにされてる事を嫌ってるんだ。だからどうかランカーとかそんな堅苦しい事は考えずに接してやって欲しい。もちろんそれは私も同じです」
「分かりました。でも僕達もランカーとか気にしてませんから。じゃないとフィリアンさんに委縮してしまってる筈ですし」
「いや~リーダーはバカだろ。見ての通り」
「なんて言ったのかしらカイン? バカって単語が聞こえた気がしたのだけれど~?」
「気のせいなんじゃないかなリーダー」
「ほう。じゃあ嘘を付いてないというならそこを動かないでね」
そう言ってフィリアンは槍を取りだし、狙いをカインに定める。
「う~んリーダーは何で俺の頭に向けて槍を構えてるんでしょうか?」
「自分の言葉に正義があると思うならこの槍躱さない事ね」
「それはリーダーにキルされろと?」
「大丈夫。寸止めして上げるわよ」
ニッコリ微笑んだフィリアン。その眼の怖い事怖い事。それに勘づいたカインもすぐに動いた。
「いやー俺ちょっと所用を思い出したからちょっと出てくるわ」
「逃がすか!」
神速の突きが走る。だが負けじとカインも大剣を呼びだし逸らしながら睨みあう。そんな二人の間を抜けてドレンの後ろに隠れる影。二人はドレンの後ろに隠れた影の正体を注視し、フィリアンとカインも睨みあいを辞めてその影を見つめる。その影はドレンの体から少し顔を出して、アユムとツボミを一瞥する。そこでアユムと目が合い、すぐさままたドレンの後ろに隠れた。
「ほらフィフィ。ちゃんとご挨拶しなさい」
「フィフィ……です。よろしく……」
片目だけ出し縮こまったままフィフィは小さな声で挨拶してきた。そして代わりにドレンが口を開いた。
「彼女はこのギルドに所属する最年少のプレイヤーです。少々恥ずかしがり屋な性格をしてますがすぐに慣れると思われますので仲良くしてやってください」
フィフィの頭に手を置いて撫でながら、二人に視線を向ける。フィフィの背丈はドレンの胸よりも下にあり目測で百三十センチ、ピンクの髪を二つに括り、蒼玉の瞳に二人を映している。
その視線がアユムと重なるとすぐにフィフィはドレンの後ろに隠れた。アユムはにっこりと笑ってフィフィの方に近づいていく。そしてドレンの後ろに隠れたままのフィフィに目線を合わせて手を差し出した。
「フィフィちゃんよろしくね」
アユムが差し出した手とアユムの顔をキョトンとしたまま交互に見た後、窺う様にドレンの顔を見た。
「アユム君はあなたと仲良くしたいと申してますよ。フィフィは彼と仲良くなりたくありませんか?」
ブンブンと勢い良く首を横に振った。そしておっかなびっくりに右手を伸ばしてそっとアユムの手を握った。アユムも同じ様に包み込むようにその小さい手を握った。
「おお~フィフィが初対面でここまで心開くなんてアユムやるじゃない。私もフィフィをスカウトするのに苦労したのに……」
「ドレン以来の快挙じゃない。フィリアンあんたより新人君の方がカリスマもってるんじゃない?」
「あんただって最初泣かれてたじゃないのよアン」
「それを言われたらグウの音も出ないわね」
二人の微笑ましい光景の隣ではフィリアンとアンが互いに貶し合うというあまり子供の教育上よろしくない展開が繰り広げられていた。そんな空気を壊す様に最後の一人が転移されてきた。そのプレイヤーは黒い髪をボサボサにし、顎からは無精髭を生やし顔や服は煤で汚れている。その彼は二人を一瞥して一言だけ口を開いた。
「クロウトだ」
それだけ言うと彼・クロウトは背を向け壁に凭れかかり寝息を立て始めた。
「「え~と……」」
二人揃って困惑しているとフィリアンが助け船を出してくれた。その顔には呆れとも付かぬ顔をしているが。
「彼はクロウト。私達専属の鍛冶職人よ。武器の事で困った事があったら彼に相談するといいわ。かくいう私のこの槍もクロウトの作品よ」
ツボミはそっとフィリアンの槍の表面を撫でると一つ頷いて、
「確かに腕は相当の様ね」
「ただ気難しい、てか取っつき難い所があるからそこは気にしない方向でね。さて、以上のメンバーがギルド〝ソレイユ〟の全メンバーになるから皆仲良くね」
自信に満ちた笑みと自分の宝物を自慢する様な笑みを浮かべて纏めた。アユムとツボミの二人は再び畏まって頭を下げた。
「「よろしくお願いします」」
こうして二人はギルド〝ソレイユ〟に迎え入れられた。
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