夏色
ラムネが、はじけた
『夏色』
久しぶりに、爽やかな晴天。カラッとした陽気に、涼風。
それでも、夏の暑さは今だ健在。ジリジリとした日差しが、焼けた肌に突き刺さる。
カラン、カラン
沈黙に響く軽快な音楽。
「……なにやってるの?」
「ラムネのビー玉」
「述語も言ったら?」
「言わなくても、分かるでしょ?」
もちろん。というか、君の行動を見れば、きっと誰だって分かるだろう。
機嫌悪くなるから、言葉にはしないけど……。
「ビー玉、取りたいの?」
「分かってるじゃん」
カラン、カラン
「無理じゃない?」
「無理じゃない」
カラン、カラン
止まらない音は、夏という存在を一層感じさせた。
しばらくすると、さっきまで横にいた太陽が、僕の前にまわってきた。自然と目が合う。
(暑……)
日差しが眩しく、目を細めた。
最初は、太陽と見つめ合ってたけど、だんだんそれに耐えられず、帽子を深くかぶった。
隣を見れば、君はラムネビンに苦戦中。
(暑くないのかな…)
よく見ると、君の額には、うっすらと汗が滲んでいた。こめかみも、首筋にも。
ビー玉に夢中で気付いてないのか、気付いててなお、ビー玉を優先してるのか……。
(負けず嫌い)
心の中で、そっと囁く。
僕は帽子をはずした。すると、一気に解放感が広がる。風に吹かれて、涼しさは増すが、代償とばかりに真夏の太陽が、僕の頭を攻撃する。
はぁっ、と軽く息を吐き、隣を見る。よくまぁ、飽きずに苦戦中。それでもやっぱり暑そうで。
「あっ」
僕が君の頭に帽子を乗せるのと、君が声をこぼしたのは、ほぼ同時だった。
ビー玉は飛び、ビンの中に残っていた液体が、ふたりの体を盛大に濡らした。
好きだよと
囁きあった
あの夏は
今では思い出
ラムネの泡