表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夕陽の赤

作者: かや芝

元は詩でしたが、詩にしては多く重くなったので短編小説にしました。


なのであんまり小説っぽくないかもしれません。



思ったことをぐだぐだと文章にしただけです。だから意味もオチもありません。

しかもかなり自虐要素満載です。


それでも読んでくださる方は、どうぞ。

―――見る者が誰もいなくなった世界でも

夕陽は赤いと言えるのだろうか―――


どこかで聞いた言葉。

くだらないって、思った。



















「じゃあね」


「うん、また明日ね」


目の前を通りすぎた彼女。一瞬、こちらを見たような気がしたけど、僕にそれを確かめる勇気はない。



なんでもない、普通の中学の3年。そこに僕はいる。

いわゆる、落ちこぼれ。

いわゆる、いじめられっ子。

運動神経は悪い。成績も悪い。

ルックスも、顔は普通くらいだけど、背は低いし横に太め。


いいところなんかない。


人は見た目じゃない、なんて言葉は所詮詭弁(キレイゴト)。それに、中身だって自慢できる程上等じゃない。

優しいとかいい人は、ステータスにはなり得ない。そんなモノは余程の変人狂人でなければ誰でも持っている。


「………、………」


「………?………!」


また、誰かが僕を指差して笑っている。

日常茶飯。もう、反応する気力は枯れ果てている。


(ミライ)の見えない現実から逃げるように、足早に昇降口を抜けた。



外には、いつの間にか生暖かい風が吹きはじめていた。

まだ降らないだろうが、下校の途中で確実に雨になるだろう。


駆け出そうとして………止めた。

濡れることになんの問題がある?

鞄は防水仕様中身は濡れない。風邪をひくのもむしろ大歓迎だ。

学校を休む、立派な理由ができるのだから。


(………負け犬根性)


自虐的に心の中で呟いても、何が変わるわけもなかった。



雨は結局、学校を出て50歩も歩かないうちに降りだした。



















翌日、風邪をひくこともなく登校。自分の無駄な頑丈さが恨めしい。


授業が始まって数分。

教室は至って静かで、教師の声以外聞こえない。


話を聞くことを放棄。一番後ろの席なので、見咎められることもそうそうない。

暇潰しに、教室を見渡すことにした。


「…………、…」


「……、…………」


自分の席から見て、右斜め前の方向。

かなり離れた位置の彼女が目に入る。


黒板を見ては手を動かし、真面目にノートをとっている。

普段の柔らかい雰囲気とは違い、凛とした表情。何を見ても誉め言葉しか出てこない。




―――お前ごときが彼女を誉める?

バカにするのも大概にしろ。お前が彼女の何を知ってる。

想うだけなら自由。そんな思い上がりは即刻焼却処分だ。

お前に想われてしまう彼女のことを考えろ。




なかなか言うことを聞かない気持ちを、理性が殴り飛ばす。

そう、あり得ない。知ってるはずだ。何を考えようと、現実はそこにある。

残酷で優しい僕の現実は、そこに彼女との繋がりが何もないことを教えてくれる。


彼女が僕から遠いところにいて、僕には眺めるくらいしかない。

彼女が誰かのモノになっても、何も変わらない。


そう、何も。



















下校。

なんだか今日は早く帰りたかった。

だから、本当は担任に呼ばれていたのを仮病でサボった。

………どうせ、成績の話だろう。何を言っても何をやっても変わらないのに、ご苦労なことだ。


勉強やスポーツ。その他、社会で生きるための技能。それらを習得するのに個人差なんてあって当然だろう。

頭のいい人。運動が得意な人。他人と付き合うのがうまい人。

何か一つができる人がいれば、全部そつなくこなす人もいる。

その逆もまた然り。


僕は何もできない。

何も持っていない。

人に誇れるモノなんて。


……くだらない。

この言葉が口癖になったのはいつからだろうか。


何もできないから、全部自分には必要ないと捨てた。

………逃げた。


これが逃避だってことは、誰に言われるまでもなくわかってる。

わかっててもどうしようもないこと。

使い古された『前向きな言葉』なんていらない。


人には分相応って言葉があるんだから。




思考が深くなり、ほとんど無意識で裏門へ歩く。

この学校は、出入口が二つある。僕は裏門を通る方が家に近いので、いつもこちらから帰っている。


裏門の向こう、100メートルくらい離れたところに、背中が二つ見えた。

男女二人らしく、ひどくゆっくり歩いている。

僕は基本的に早足で歩くので、どんどん近づく。


まぁ前に誰がいようと僕には関係ない。

邪魔なら追い越す。ただ、それだけ。


「―――――」


追い付き、通りすぎる瞬間。

女の子の方がこちらに目をやった。


無視するつもりだったのに、目が合う。

立ち止まらなかったのは奇跡だ。






見慣れたクラスメートの男と歩いていたのは、彼女だった。






わかっていた。

こんな日がくることは。

現実が叩きつけられる日が。

でも気持ちの動揺は理性では抑えられなかった。


家にどうやって帰ったのか、わからなかった。気付けばベッドに倒れこんでいた。


いつまでも、さっきの光景が目に浮かぶ。

涙は出ない。当然だ。

僕に届くはずのないモノだったのだから。

わかっていたことなのだから。


だから、目の前が暗くなる理由なんて知らない。



これは世間で言う失恋なんかじゃない。

恋を失ったわけじゃない。終わったわけじゃない。

初めから、始まっていなかった。スタートラインに立ってすらいなかった。

遠い出来事。関係のない事象。それが一つの結果を迎えただけ。



だから。

だからこんなに心が重いのは、きっと錯覚だ。自分に酔いたいだけ。

『失恋して傷付いた自分』に憧れているだけ。

人が普通に持っているモノを自分も持っていると思いたいだけだ。



知らない知らない知らない。

こんなモノは僕にはない。僕の中には存在していない。




なにもかも壊したくなるのは、ただ何もないセカイに飽きただけだ。



















―――現実には二種類ある。世界の現実と、自分の現実。

世界の現実は、何があろうと厳然たる事実としていつでもそこに在る。

夕陽のように。誰が見ようと見まいと。


でも自分の現実は違う。

世界の現実を、自分が知ったとき、それが自分の現実になる。

自分が知ったことしか現実にはならない。

夕陽の赤い色のように。

知らなければそこにそれは無い。


……逆に言えば、知ってしまえば最後、それは確かな形を現実の中に作る。



















―――知らなければ夕陽は ただ夕陽であるだけだ―――



誰かの隣にいる君を見た。

自分が一番、くだらないって、思った。

一応、事実をベースにして書きました…………とか言うと、これを読んだ友人たちに追及されそう。



妄想の産物ということにしておきます。






駄文なのに最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ