座敷童の笑う声
どうも、金林檎です。
あらすじでも書いていますが、今作は金林檎の実体験をベースとしたホラー?作品となっておりますので、登場人物の名前は伏せさせていだだいています。
当時人物の3名はそれぞれ、
△△ → 金林檎
◯◯ → 恩師、英語教師、酒飲みの酔っ払い
□□ → 恩師の民俗学仲間、世界史教師、涙もろい
となっておりますので、読みづらいとは思いますがご容赦ください。
それでは、最後まで読んでいただければ幸いです。
高校を卒業してから10年、ゆとり世代と言う不名誉な烙印を押されながらも、氷河期世代とZ世代の合間に挟まれながら社会の荒波に揉まれ、大人になってしまったとな実感する、そんな冬のことだった。
実家を建て直し、新居を構えて心機一転。
そんな中、その衝撃的出来事は突拍子も無く母の口から言われたのである。
「◯◯先生亡くなったて」
「…………は?」
それは高校時代にお世話になった恩師の訃報だった。
「え?死んだの?なんで?」
僕は実感が持てず、思わず死因を聞いてしまう。
悲しみの感情よりも困惑が勝ったのだ。
そんな僕を横目に母は坦々と語る。
母も恩師とは少なからず交流が有った筈だが、僕と同じく実感が沸かないのだろう。
殺しても死ななそうな人だったのだ、まだ60にもなっていなかったのだが、どうしたのであろうか。
「お酒の飲み過ぎだって」
「…………あぁ、うん、なる程ね」
得心がいった。
僕の恩師である英語教師は無類の酒好きだったからだ。
しかし、まさか文字通り死ぬまで飲むとは。
アル中とは恐ろしいモノである。
僕は自身が酒を飲めない事に安堵を覚えた。
「だけど、流石に早すぎるよ…先生」
卒業後もちょくちょく顔を合わせる機会があり、ここ数年は合っていないが、顔も声も思い出せる。
先生はユーモア溢れる面白い教師だった。
英語の苦手な僕が進級卒業できたのも、彼の独特の授業のお陰である。
「…………そっか、死んじゃったのか」
先生が死んだと言う事実を噛み締める事に、彼との思い出が頭の中を巡った。
僕は思い出す、先生との一番衝撃を受けた世にも奇妙な思い出を。
高校最後の夏休みに僕が遭遇した、あの摩訶不思議な体験を。
■■■■
その日の授業も終わり、ホームルーム後に帰る生徒がボチボチいる中、高校最後の思い出作りなのか、放課後は3,4人ぐらいのグループが何組が残り遊んでいた。
「で、日本三大妖怪に数えられた大妖怪、酒呑童子が討たれた後、腹心である茨木童子が逃げ出して」
「ほうほう、それで?」
「渡辺綱が…………」
そんな中、教卓で変な話をしてる者こそが僕だ。
妖怪の話を嬉々として話す僕に、先生は絶妙な相槌を打ちながらも上手く会話のキャッチボールしてくれる。
当時妖怪がマイブームだった僕は、民俗学研究をしていた先生との話が合い、度々妖怪談義に花を咲かせていた。
「なぁ、そんなに妖怪が好きなら夏休みに岩手行くか?」
「ん?岩手ッスか?」
「そそ、岩手って今でも妖怪の伝承が色濃く残っているんだよ。お前なら分かるだろ?河童とかの有名どころは大体岩手に行けば大丈夫だ」
「え、メッチャ行きたいッス」
「良し来た、元々もう一人、民俗学研究仲間の先生と行く予定だったんだけど、お前も行くなら連れてくぜ?」
「マジッスか、あざっス!!」
そんなこんなで、僕はこの夏休み、岩手県のとある宿へと行くことになったのである。
色々と打ち合わせを繰り返し、岩手へと共に行く教師とも面通しをすませ、親にも許可を取った僕は、一学期が終わると共に訪れる岩手旅行への準備を終えた。
そして、待ちに待った夏休み到来。
岩手旅行当日、岩手県へは担任とは別のもう一人の先生が車を出してくれるそうだ。
因みにもう一人の先生は世界史の先生であり女性である。
元々は2人で行く予定だったと言う事は、もしかしたらデートを邪魔してしまったのでは、と心配していた僕の心情を察してか、□□先生は◯◯先生とはそんな関係じゃ無いよと笑らいながら説明してくれた。
なんでも、□□先生と◯◯先生は学生時代からの友人なんだとか、当時の何でもかんでも恋愛へと結びつけてしまう思春期真っ只中の僕には男女の友情など信じられなかったが、そういう事もあるのだろう。
学校で待ち合わせをし、教職員の使う駐車場に向かった僕は女教師の車の運転席の後ろの席に座る。
既に担任の先生は助手席の後ろの席、つまり僕の隣の席に先に座ってをり、缶ビールを飲んでいた。
「先生、仮にも生徒の前で飲酒ですか」
「馬鹿野郎、今はプライベートなんだから好きに飲ませろよ」
「あれ?まさか先生もう酔ってる?」
「馬っ鹿、お前、俺がこの程度で酔う訳あるか」
完全に酔っている。
駄目だこの教師、早く何とかしないと。
「□□先生、◯◯先生が酔っ払っているんですけど良いんッスか?」
「あぁ、良いのよ、何時もの事だから」
なる程、何時もの事か。
やっぱ駄目教師だなこの先生。
一抹の不安を覚えながらも、□□先生の運転する車は岩手県に向けて緩やかに発進した。
色んな意味でドキドキしながらのドライブは、抱いていた不安とは裏腹に何事もなく順調に進み、3時間弱で目的地に到着。
◯◯先生は車が動いて直ぐに爆睡、意外と鼾をかく事なく静かな寝息を立てて眠っていた。
割と快適なドライブとなった事に安堵の息を吐く。
宿の駐車場から歩くこと5分、宿の正面玄関へと辿り着いた。
「……おお」
ザ・そういう所って感じの古びた民家を改良して作られたので有ろう外見は凄く何かを感じさせるものだ。
事前にそういう場所だと知らされてなければ、即座に回れ右していたところだが、知っていると如何にも出そうだと興奮する。
そう、今回泊まる宿は《座敷童》が出る事で有名な宿。実名を晒すのは色々怖いから其処は伏せておく。
正面玄関で□□先生がチェックインを済ませると、僕達の泊まる部屋へと案内された。
一人一部屋、何とも贅沢な事だが、《座敷童》が出ると言う意外は割とボロ屋なので宿泊費が異常に安いのだそうだ。
「良し、行きますか」
部屋に荷物を置くと、さっそく夕飯を食べに行く。
その後に行われる、妖怪の話が待ち遠しい。
因みに夕飯で出された鮎の塩焼きの味は生涯忘れないと思わせる程に美味かった。
「うぅぅ゙うぅ」
□□先生が僕の目の前で号泣している。
何でこうなったかと言うと、妖怪の話を聞かされホクホク気分で部屋に戻った後、◯◯先生の部屋に集り今後の相談(もしも《座敷童》が現れた時の行動など)をしていた時の事だ。
□□先生が僕の持ってきた漫画【妖怪のお医師さん】に興味を引かれたらしく、それならとその漫画を貸したのだが、それを読んだ□□先生がその内容に感動してしまいオロオロと泣き出してしまった。
「あぁんだぁ!うるせぇぞ!俺も混ぜろや!この野郎〜!!」
はてさてどうしたものかと悩んでいると、◯◯先生が酔った勢いで僕達の泊まっている2階から、おそらくは他の客が宴会をしているであろう1階の宴会場へと突撃しようとする始末。
「ちょ、流石にヤバいですって先生!!」
僕は慌てて◯◯先生を羽交い締めして動きを止める。
幸いな事に僕は高校時代には身長180を超えガタイも良かったので、比較的小柄な◯◯先生を拘束する事は容易だった。
「あぁん!?あぁ!もういいよ!寝る!!お休み!」
暫く抑え込んでいると暴れるのを止めた◯◯先生は、僕が拘束を解くといつの間にか泣き止んでいた□□先生の方を借り自分の部屋へと戻って行った。
「大人って、大変なんだなぁ」
一足早い社会体験をしている気分になる。
僕も社会人になったら、ああいう大人達と付き合っていくのだろうか、そんな事を考えながら寝床に付く。
あ、それはそうと、この宿の風呂はジブリに出てきそうな趣のある風呂でちょとテンションが上がった。
「《座敷童》本当に出るのかな?」
ドキドキ半分ワクワク半分で、目を閉じる。
車の長旅と酔っ払いの相手で疲れていたのか、僕は驚く程速やかに眠りに就いた。
──────
「うぅん、ぁ?」
肌寒さを感じ、僕は目を覚ます。
周りを見渡すと、まだ薄暗く夜明けには程遠い。
「………なんだ?」
僕は寝ぼけた頭で状況の確認をした。
この肌寒さは何なのか、季節はまだまだ夏なのに少し不自然である。
ちょと立ち上がって扉の横にある照明のボタンを押せば電気がつくのだが、なんだか起き上がるのも面倒で暗闇に目が慣れるのを待った。
ちょとずつ目が慣れてきた頃には、寝ぼけていた頭のボヤ気も多少ましになり、何で寒気を覚えていたのかが分かった、寝る前に羽織っていた薄い毛布が無かったのである。
僕は昔から寝相が悪かったので、何処かに退かしてしまったのかと思い、手探りで自分が寝ていた布団の周りを探したが何処にもなかった。
「…………あれ?おかしいな?」
二度寝しようにもこの肌寒さでは寝られない、そう思って照明の電気を着けようと立ち上がると、暗闇に慣れた目に不思議な光景が飛び込んだ。
「…………ん?」
僕が使っていた毛布があった。
ちゃぶ台の向こう側に綺麗に敷かれて。
「……………………」
この部屋の真ん中には茶を入れる為のポットと茶菓子を置く為のちゃぶ台がある。
幾ら僕が寝相が悪いからと言っても、流石にこのちゃぶ台を飛び越し向こう側へと毛布を飛ばす事など出来るのだろうか。
どう考えてもあり得ない。
ゾクリと背筋が震えた。
これは、もしかしたらそうなんじゃないだろうか?
僕がそう確信すると同時に、ドタドタと天井から子供の走る音が聞こえた。
間違いない、《座敷童》だ。
《クスクス、アハハハハハ》
子供の笑い声と共にドタドタと何人かが走る音が僕の部屋に鳴り響く。
僕は、事前に先生方と打ち合わせしてた通り、その場に屈みジッとする。
《座敷童》の『遊び』を邪魔してはイケない。
遊び終わるまで、大きな声を出さずに優しく〝見守る〟のだ。
《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》《クスクス》
そんな僕の行動が面白かっのか、複数の子供達がクスクスと笑って居るのが聞こえた。
ドキドキと心臓の鼓動が早まるのを感じながらも、僕は《座敷童》が満足するのを只ジッと待つ。
どれぐらいの時間が経ったのか、暗闇に目が慣れてきたとはいえ、流石に時計は見えない。
明確に時間が分からないと、一分一秒がとてつもなく長く感じる。
《座敷童》の伝承では、直接的に人に危害を加えるモノは基本的には無い。
しかし、それはあくまでも伝承や創作の話だ。
今起こっている怪奇現象が《座敷童》である保証も無い。
確かに《座敷童》を体験したくて此処まで来たのだが、実際に体験してみるとそら恐ろしく感じるものだ。
僕は常日頃から妄想していたこの非日常的出来事を楽しむ余裕など無く、ただ早く居なくなれと心の中で言い続けていた。
それからどれだけの時間がたったのだろう、怯え縮こまる僕の姿に満足したのか、子供達のクスクス笑う声がピタリと止む。
暫くの間、沈黙が部屋の中を支配した。
終わったのか、僕はそう思い恐る恐る周りを見渡す。
元から何かが見えていた訳では無いが、先程まで感じていた気配を感じ無くなった。
張り詰めた緊張の糸が解けて、僕はホット息を吐く。
恐怖から逃れられた解放感と、本物の怪奇現象を体験した興奮でドキドキと胸の鼓動が高鳴る。
明日の朝、先生達にどう話そうかと思いながら、おそらく《座敷童》に外されたであろう毛布を拾い上げようとした時。
《《《《《《《アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ》》》》》》》
耳元で複数の子供の笑い声が木霊した。
ビックと体が硬直する。
思わず叫び声を上げそうになるが、咄嗟に両手で口元を押さえて必死に堪えた。
《座敷童》に大声を出してはいけない。
この国で最も有名な妖怪である《座敷童》には、やってはいけないタブーが幾つか存在する。
遊んでいる《座敷童》の邪魔をしてはならない。
曰く、大声で叱りつけてはならない。
曰く、部屋を汚くしてはならない。
曰く、存在を否定してはならない。
曰く、お供えを無下にしてはならない。
曰く、その姿を無理に見ようとしてはならない。
《座敷童》は基本的に邪悪な妖では無く、人に直接的な危害を加える事など無い。
では何故、幾つものやってはいけないタブーが存在するのか、その明確な理由は分からないのだ。
最も有用な説に《座敷童》がその家から出て行き、その家が没落すると言うものがあるが、それはその家に対するペナルティであり、《座敷童》が直接人に危害を加える事は殆どない。
だが、禁忌は存在する。
そして、禁忌とは破ってはいけないものなのだ。
僕は背を丸めてしゃがみ込み顔を伏せた。
子供達の笑い声と共にドタドタと数人の足音が天井から鳴り響く。
一分にも満たない僅かな時間、さりとて、これまでの人生で最も長い一分間。
そして、気が付けばピタリと音は止んでいた。
「……………………んひっ」
思わず口から変な声が出た、だが羞恥は無い。
それよりも、今度こそ終わったと言う安堵の方が圧倒的に勝っていたからだ。
安堵の後にジワジワと押し寄せてくるのは恐怖の感情、そして非日常に遭遇した興奮だった。
恐怖と興奮で震える体でガッツポーズをする。
色々な意味で大声を出して叫びたい気分であったが、頭の中の冷静な自分が《座敷童》のタブーに触れるかも知れないと待ったを掛けて来たので、無言のガッツポーズだ。
ガラケーの画面を見ると、まだ深夜の2時半だった。
寝直すには微妙な時間であり、そもそも今の精神状態では眠れそうに無かったので、家から持ってきた漫画でも読んで時間を潰そうと思い部屋の電気を点ける。
「うぉ、眩し」
いまのいままで夜闇に馴れてていた僕の目には、部屋の電灯は眩しく、反射的に目を瞑った。
徐々に電気の灯りに馴れて来たので、ゆっくりと目を開けると、部屋の外からドタドタと足音が聞こえてくる。
まさか、また《座敷童》が来たのかと思い、ゴクリと生唾を飲み込む。
ガラリと音を立て僕の部屋の扉が開いた。
「△△君!!で、出たわ!!」
「うぉっ!」
ビクリと肩を張り上げ、固まってしまう。
最近の《座敷童》とは随分と大人びて居るものだと思った。
いや違う、扉からドタドタと僕の部屋に入って来たのは《座敷童》では無く、子供の様にはしゃぎ倒す□□先生だったのだ。
僕は一瞬呆気に取られたが、彼女の言葉の意味を理解した瞬間どうでもかよくなった。
やはり、先程僕が遭遇した摩訶不思議な体験は夢では無かったらしい。
僕も興奮止まぬ□□先生と同じくらいのテンションで口を開く。
「□□先生、実は僕の部屋にも出たんですよ《座敷童》!!」
「え!?ホントに!?そっちはどうだった!?」
その後、文字通り夜が明けるまで僕と□□先生は《座敷童》に付いて熱く語り合った。
彼女と語り合った内容は余り覚えていないが、まるで仲の良い友人と馬鹿話をするみたいに、とても楽しかったのを覚えている。
因みに◯◯先生は酒の影響なのか爆睡していた為、彼は《座敷童》には遭遇しなかったらしい。
とても悔しがって居たが、酔っ払いの相手をしていた僕からしてみると、ちょっとだけザマァ見ろと思ってしまったのは秘密だ。
子供の様に悔しがる◯◯先生を横目に朝食を済ませると、僕達は荷物をまとめ帰路に付いた。
帰りの車の中では、なんで俺だけ会えないのだとぶーたれる◯◯先生を、僕と□□先生が酒臭い人に《座敷童》が寄って来る訳無いじゃんと弄くり回す。
本気で悔しがっていた先生は、それでも顔を綻ばせながら口を開く。
「しっかし、良い宿だったなぁ。《座敷童》に会え無かったのは残念だけど、飯も美味まかったし、少々手狭だったが、俺達意外に客も居なかったから、実質貸し切りみたいなものだったしな」
車内で何気なく放たれた◯◯先生の一言に、ゾクリと背筋に嫌な感覚が走った。
「…………え?」
「…ん?…え、いや、◯◯先生、僕達意外も居ましたよね?お客さん」
困惑する僕は、バックミラー越しに見えた同じく目を白黒させている□□先生を見ながら確認するように言葉を紡ぐ。
そんな僕を◯◯先生は、胡乱な目で見てくる。
まるで生徒の悪ふざけに目を細める先生のような顔だ。
いや、この人は先生何だけど。
「何だ△△、またマウンティングか?おいおい、余り大人を誂うもんじゃ無いぜ?今の俺はマジで凹んでるからな?あ、思い出して来た《座敷童》俺も見たかったなぁ」
◯◯先生は、《座敷童》に遭遇しなかった事でショックを受けて、今朝から酒を飲んでいない。
つまり、今の◯◯先生は完全なシラフだ。
僕達への意趣返しに冗談を言っているわけでもない。
顔を見れば分かる、◯◯先生は本気で言っている。
「…………まさか、酔って記憶が飛んでるんですか?昨日、夕飯の後で◯◯先生、酔って一階の宴会場に突撃しようとしてたじゃないですか」
「はぁ?お前、何言ってるんだ?あの宿に宴会場なんて無かっただろ?」
「…………なんですと?」
いや、おかしい。
あった筈だ、◯◯先生が突撃しようとしたのを取り押さえた感覚は今でもはっきりと思い出せる。
「だって、そうだろう?あの宿、古民家を改造しただけの一軒家だ。それの何処に宴会場なんて広いスペースがあるんだよ?」
「…え、…あ、そう…です…ね」
言われてみれば確かに、そうだ。
思い返せば、あの宿の一階にそこまで広い部屋なんて無かった。
でも、確かに宴会場はあったと僕は思っていた。
不安を紛らわせるために、僕は□□先生へと話を振る。
「……□□先生、あの時、確かに一階で宴会やってましたよね?」
「……うん、私も覚えてる」
僕の問いかけに、どこか顔色を悪くした□□先生は頷く。
良かった、□□先生も覚えていてくれた。
アレは僕の幻覚とかじゃ無かったみたいだ。
「じゃあ、アレは何だったんだ?」
あの宿は《座敷童》意外の怪奇現象も頻繁に起きるとんでも宿だったのか?
まぁ、《座敷童》が出て来る時点でとんでも宿なのだが。
駄目だ、なんか思い出して見れば賑やかなのは感じていたが、人の声は聞こえて来なかったような気がする。
怖っ。
「……………………◯◯先生、感謝して下さいよ?僕が押えて置かなかったら、先生そのまま帰って来なかったかも」
「は?え、マジで言ってるの?」
「うん、ガチのマジ」
「あんた、酒はほどほどにしなさいよ?今度はホントに連れて行かれるかもだから」
「何だよ□□先生まで脅かすなよ、ハハハ」
その後、何とも言えない雰囲気のまま、□□先生の運転する車は学校まで走りきった。
こうして、僕と先生達の摩訶不思議な一夏の旅は幕を下ろしたのである。
■■■■
十年近く前の出来事が頭の中を巡り行く。
何とも現実離れな出来事だったので、今ではアレは夢の中の出来事だったのではとも思って来ていたが、◯◯先生の訃報を聞いたら、何故か鮮明に思い出せた。
思い返してみれば、あの後、当時リーマンショック影響で僕等の世代は就職難であったにも関わらず、僕は学校で一番に就職が決まったし、□□先生はその年にお見合いが成功してそのまま結婚。
《座敷童》は幸運をもたらすと言うのは、あながち間違えでは無いのかも知れない。
◯◯先生は相変わらず独身貴族を貫いていたようだが、彼だけが《座敷童》に合わなかったからなのだろうか?
そうそう、それとあの時泊まりに行った宿、あの後に火事で全焼したらしい。
《座敷童》が出て行った家が没落するって説を信じるなら、出て行ったのかね《座敷童》。
◯◯先生とは、学生時代に結構話してだけど、なにぶんあの時の岩手旅行が印象深過ぎてそれしか頭に浮かんでこない。
そんな事を考えながら僕はふと、不謹慎な事を思ってしまう。
先生、まさかまたあの宴会に遭遇してそのまま行っちゃったのかな?
「…………まさかね」
変な事を考えてしまった。
あの時の事を思い出して居たからだろうか?
まぁ、何はともあれ、先生に線香でもあげに行こうかね。
少しセンチメンタルな気分に成りつつも、それも仕方の無い事と思い立ち上がる。
《クスクス》
ふと、何か違和感があり振り向く。
そこには、少し開いた部屋の扉から真っ暗な廊下が見えるだけだった。
ブルリと身をすくませる。
あんな不思議体験を思い出した直後だ、気の所為だろう。
僕はそう思い、そっと扉を閉めた。
仕方の無い、怖いものは怖いのである。
《アハハハハハ》
僕の耳元で子供の笑う声が聞こえた。
きっと、これも気の所為なのだろう。
僕はまだ、大丈夫だ。
最後まで読んでくださり有り難うございました。
殆ど自伝になってしまって、ちょと恥ずかしいのですが小説家こんなもんなんですかね?
嘘みたいな本当の話、しかし語るのは実体験をした金林檎なので、リソースも無く怪しいですよね?
何処にでもある出来の悪い作り話と思って頂いても一向に構いません。
金林檎としましては、せっかく経験した非日常的出来事を、自分だけの思い出として腐らせて置くには惜しいと思い、今回筆を執らせて頂きました。
半分自己満足のお話なので、お付き合いしてくださった読者様には感謝をお伝えします。
追伸
読者様の中で、物語の最後に話題に上がった「宴会をしているナニか」について知っている有識者様がいらっしゃいましたら、感想欄で教えて頂ければばなと思います。
個人的に調べても、これといった情報が得られずに居るので、物語の最後に「宴会をしているナニか」のせいで◯◯先生が亡くなったみたいな書き方をしていますが、本当に◯◯先生は「宴会をしているナニか」の悪影響を受けてしまったのか、今でも気になってしまうのです。
些細な事でも構いません。
せめて〝良いモノ〟か〝悪いモノ〟かが分かればそれで良いのです。
オカルトや民俗学に詳しくい方がいらっしゃいましたら、どうぞよろしくお願い致します。




