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かざぐるま  作者: ELWOOD CRAFTWORKS


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第六章 別れ-6度目の風


葬儀が終わった夜、家は驚くほど静かだった。


昼間は人がたくさんいた。


親戚。

会社の人。

近所の人。


花。

線香。

泣き声。


でも夜になると、それらはすべて消えていた。


家の中には

カイドウ・ミナモ一人だけが残っていた。



リビングのソファに座る。


テーブルには冷めたお茶。


時計の音が聞こえる。


カチ、カチ、カチ。


ミナモはぼんやり天井を見ていた。


夫のリョウが亡くなって三日目だった。


突然だった。


会社で倒れて、そのまま戻らなかった。


まだ五十二歳だった。



ミナモは立ち上がる。


台所へ行く。


冷蔵庫を開ける。


何も取らない。


また閉める。


意味のない動きだった。


何かしていないと

時間が止まってしまいそうだった。



壁に飾られた写真を見る。


結婚式の写真。


若い二人。


笑っている。


隣には小さなハルカ。


そのハルカも、今は遠くの街で働いている。


この家には


もう


自分の足音しかない。


そのことに気づいた瞬間、


胸の奥が空っぽになった。


(ああ)


ミナモは思う。


(私は今)


本当に一人なんだ



外に出た。


夜の空気は少し冷たい。


住宅街の道を歩く。


街灯。


静かな道。


風が少し吹く。


ミナモはなんとなく歩いた。



しばらくして


小さな公園が見えた。


ブランコ。


ベンチ。


そして


その奥に


神社の鳥居が見える。


赤い鳥居。


夜の中に浮かんでいる。


ミナモはゆっくり公園に入る。


ベンチに座る。


夜の公園は静かだった。


虫の声。


遠くの車。


風。


そのとき。


くるくる。


くるくる。


ミナモは顔を上げた。


ブランコの横に


少女が立っていた。


小学四年生の頃と


同じ姿。


同じ髪。


同じ目。


同じかざぐるま。


少女は言った。


「久しぶり」


ミナモは少し笑った。


「ほんとに変わらないね」


少女は首を傾げる。


「そう?」


ミナモは言う。


「ずっと同じ」


「全然歳を取らない」


少女はかざぐるまを回す。


くるくる。


くるくる。


ミナモは聞いた。


「どうして?」


少女は空を見た。


しばらく考えてから言った。


「私たちはね」


風が吹く。


くるくる。


かざぐるまが回る。


「現在にも」


「未来にも」


「過去にもいるから」


ミナモは眉をひそめた。


「……どういう意味?」


少女は少し笑う。


「そのうち分かる」


その言い方は


昔と同じだった。



ミナモは少し黙った。


それから、もう一つ聞いた。


「ねえ」


少女を見る。


「なに?」


ミナモは言う。


「あなたって、


 他の人にも何度も現れるの?」


少女は少し考えた。


そして首を振った。


「違うよ」


ミナモは驚く。


「じゃあ、


 どうして私に?」


少女はかざぐるまを見た。


風が吹く。


くるくる。


くるくる。


少女は言った。


「あなたには、


 資質があるから」


ミナモは笑った。


「資質?」


少女はうなずく。


「孤独を知っている人」


ミナモは少し黙る。


少女は続ける。


「孤独を知っている人は、


 誰かの孤独も見つけられる」


風が吹く。


かざぐるまが回る。


くるくる。


くるくる。



ミナモは空を見た。


夜の雲が流れている。


ミナモは言う。


「じゃあ、


 私は何なの?」


少女はミナモを見る。


そして言った。


「その答えはまだよ」


ミナモは笑う。


「またそれ?」


少女は少し笑った。


「でも」


少女は続ける。


「そのうち分かる」



しばらくして


ミナモは立ち上がった。


夜の空を見る。


風が少し吹いている。


ミナモは少女に言った。


「ありがとう」


でも


少女はいなかった。


ブランコ。


ベンチ。


鳥居。


そして


地面に一本のかざぐるま。


くるくる。


くるくる。


ミナモはそれを見つめる。


胸の奥が少し温かい。


「……またね」


風が吹く。


くるくる。


くるくる。


それは


返事みたいだった。


続く


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