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彼女はただの友達なんだ  作者: ノーネアユミ


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2/3

2 確かに友達以外にはやりませんけど

 わたくしの頭を悩ませていた問題。


 それは殿下たちが仮にも貴族家の令嬢に対して『男友達と同じ扱いをすること』ですの。




「アイラ様、殿方と言うのは女性の肩や頭を気軽にグーで小突きませんわ」


 男の方同士ではよくやるあいさつのようですが。



「そして殿方は女性とグラスを持ったまま腕を交差させて飲み物を飲みません。それが意中の異性であれば、絶対に」


(海賊の飲み方でしたかしら? 殿方同士が面白がってやると報告書に書いてありましたが)


 直接見たことがないわたくしには分かりづらいと判断したのでしょうね。諜報員の報告書がそこだけくわしかったのですよ。



「挙句の果てにはアイラ嬢を複数で取り囲みもみくちゃですって! 女性相手なら犯罪ってくらい子供でも知っていますわ!」


 それまでは浮気を疑う気持ちがないわけではありませんでした。

 友達のフリをして他の女の子と楽しくやっている可能性も捨てきれません。


 しかしこの報告が上がったことでわたくしの殿下への疑いは晴れました。


 あ、これ子爵令嬢を女の子としてまったく見ていませんねって。




 だからと言って続けることは認められません。



 友達相手だとしても異性相手です。

 超えてはいけない一線がありますのよ。



 あら、目の前の子爵令嬢から血の気がどんどん引いて行っていますね。



「じゃあ、な、なんでみんな私にやさしいんですか?」



 混乱していますわ。

 分かりますのよ、チヤホヤしてくれているはずの令息たちから女性とみなされていないと理解したのですから。



「あなた、彼らから都合の良い男友達として扱われていますの」





 王太子始め、高位令息にとって下々の身分の話は興味深いことです。

 わたくしだって自分の知らない世界のお話は聞いてみたいものですから。


 しかし見目美しく家柄も高貴な彼らは、同性からの嫉妬も集めます。

 直接交流のない家の子息をみだりに近づけるのは危険も伴いますの。



 無邪気に無防備に近づいてきた元平民の女の子は、これ幸いと利用されたようね。


「あなたでしたら、お礼も簡単なアクセサリーで済みますし」



 能天気なアイラ嬢なら、能力に見合わないポストや金品を要求しないでしょう。

 カーク様たちにとって本当に都合の良い『お友達』。



 わたくしは1人の女性として許せませんでした。


 アイラ・ウェイオー嬢が、ただ利用されていることに。




「ウェイオー様お判り? あなたの周りに殿下たちがいるかぎり、他の令息には見向きもされません。もちろん殿下たちはあなたに一切気がありませんの」



 アイラ嬢の目が見開かれました。やっとウロコが落ちたようね。



「このままではアイラ様は誰とも縁を結べないまま卒業となりますわ。子爵令嬢が殿下と仲が良いだけで嫁ぎ遅れるのを、わたくし見ていられません」



 たしかまだ彼女には婚約者がいない。

 平民出身でマナーに難がある方が、縁組を円滑に行うのは学園の中で交流を深めるしかありませんのに。


 自分の婚約者のせいで疎外されるだなんて、わたくしも気にしますのよ。




「っく、すまんアイラ」


「そこ、令嬢を呼び捨てにしないで下さる?」


「‥ ウェイオー嬢、申しわけなかった」



 分かればよろしい。


 まあ遅過ぎるかしら?


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