8/10
Ⅷ.家
家に着いて
濡れた服を洗濯機に投げ入れる
廻る音と水の音
どちらも私と共鳴して
軋む椅子に座る
カーテンの隙間から
雨はまだ夜を湿らせて
静かな部屋に響き渡る
スマホを開く
通知は何もない
誰にも見られないこの夜が
私を沈めている
マグカップに残るぬるい紅茶
目の前のレポート用紙は
湿り気を持っている
まだ明日の準備はできていない
遠くで聞こえる車の音
どこへ向かうかも知らない誰かが
私の頭にすっと通り過ぎる
私はどこに行く予定もない