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Ⅵ.図書室
雨が窓に添いながら落ちてゆく
その雨粒の軌道は
私の考えの点と点を結んでくれるから
ひとり考え事が捗る
開かれたままの本は
まだ読まれないで鈍い光を吸い続ける
ページの隅には影が落ち
時間がそこに染み渡る
テーブルの木目を
指先でそっとなぞる
柔らかく何も残らない
そんな感覚が心地よかった
この一時の静けさは
午後の密室のようで
自分の息遣いの音ですら
少し遠くに感じてしまう
向こうで輝く水滴は
今日という存在を
証明してくれていた