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Ⅱ.電車
駅のホーム
雨の香りのアスファルトが
誰かの傘を
優しくうつす
人のかたまり
足音とまばたき
それと少しばかりの話し声が
この朝をつくっていた
電車が向かってくる
冷たい風が髪を揺らす
曇る硝子に映るその顔は
よそ行きの顔
つり革をつかむ
周りに溶けて消えてしまいそうな
自分の白い手が
泣いていそうだ
窓の外
街に雨粒が浸透する
街の外形が歪んで見えて
一つの絵になる
滑り落ちる雨
誰かのこころが優しく崩れるよう
私は見て見ぬふり
何も知らない