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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第3章 学園2年編

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第90話 何で修羅場っぽくなってんの?




 そんなこんなで、無詠唱の方法はわかったので、ひとまず収穫はあったな。俺はシオリーと別れ、そのまま寮に帰ろうと思って、自習室のドアをガラッと開けた。その時。


「あ」「え?」


 ちょうどユリアが歩いていて、目が合ってしまった。俺とユリアはしばらく固まって、ユリアが口を開いた。


「チー君、図書館にいるって言ってなかった?」


「え、いや」


「私に、隠し事してるの?言ったよね、隠し事は一切しないと、それもチー君から言ったことだけど」


「これには深い訳が」


 俺が弁明しようとしたのだが……なぜかユリアの視線は俺じゃなく、後ろにいたシオリーに向いていた。それも目のハイライトが消えて。明らかに怒りが見える。


 なにこれ、浮気してるわけでもなんでもないのに修羅場みたいになってない!?


 シオリーもユリアにガン見されて、青ざめながらプルプルと震えていた。


「チー君その子誰?二人きりだったの?なんで隠すの?どういうこと?」


「ひうっ!?」


 シオリーがユリアの圧に完全にビビって俺の後ろに隠れた。


 それもそのはず、ユリアの後ろにどす黒い炎のようなものが見えた。しかも口角は上げているが、目は笑っていなかった。なんか勘違いされてないか?


 シオリーに事情を話してほしいけど、ビビってて全然当てにならんから、俺が説明するしかなかった。


「えー、隠してて悪かったっすけど、ただ、えっと、この子に魔法を教えてもらってただけっすよ」


「二人きりで?」


「他に誰かいるように見えますか?」


「……いないね」


 とりあえず、全てを正直に話して立ち回る。ユリアは続ける。


「なんでわざわざ隠してたの?」


「えっと、この子も俺と同じで目立ちたくない性格で……だから、その……誰にも言わない方がいいって、俺が勝手に判断しただけっす……。その、すごい魔法を教えてもらう予定だったから、勝手に誰にも言わないほうがいいと思ってて……」


 ユリアはしばらく俺を見つめる。俺はいつものように目を合わせられない。すると、ユリアはいつもの柔らかい表情に戻る。


「嘘はついてなさそうだね、その、ちょっと興奮しちゃってごめんね」


 どうやって嘘か本当か判別してるん?そう言えば魔素の乱れとか見えるんだっけか?まあいいけど。


「いや、それはいいんですけど、なんでそんなに怒ってるんすか?たしかに隠してたのは悪いんすけど、特に、この子を見つめてから目のハイライトが消えてましたけど」


「え?そ、そんなに怒ってるように見えた?あ、あはは、べ、別にチー君が他の女の子と一緒にいたから嫉……じゃない!なんでも無いから、とにかく忘れて!」


「あ、はい……」


 なんか最近のユリアはおかしいな……。そしてユリアは絶対怒らせてはいけないってことも分かった。


 ちなみにシオリーは俺の後ろに隠れてずっと怯えていた。可愛い。




 ------




 びくびくしていたシオリーが復活した。


 とりあえず事情を話していいか聞いたら、特に問題ないらしいので、無詠唱魔法について学んでいたことをユリアに説明した。


「む、無詠唱魔法、聞いたことはあったけど、実在するんだ……」


「っぽいです」


「それをこの子から教わっていたと……。す、すごいんだね……」


 ユリアはシオリーを見つめながら感心していた。無詠唱魔法は相当珍しいものなんだろう。


「ところで、チー君は成功したの?いや絶対成功したんだよね」


「なんで言い直すんすか、まあ初級だけなら」


「やっぱり……。ほんとすごいよチー君」


「どうせユリアもできる」


「いや、チー君みたいにそんな――」


「あの~」


 俺とユリアが話している中、シオリーが恐る恐る話しかけてくる。珍しいな。無視するわけにもいかないので、俺はとりあえず返事をする。


「あ、はい」


「先輩方って……付き合ってるん……でしょうか……?」


「ないです」


 もちろん俺は即答。ほんと、いろんな人に聞かれるけど、俺とユリアは付き合ってなんかないんだよなあ、ユリアと少し距離置いたほうがいいのかな……。


 ユリアはというと、頬を膨らませて目を逸らしていた。ていうか、最近、ユリアはこういうことを聞かれても、否定してくれなくなった。もう慣れたからスルーするようになった?俺よりも大人だな。


 すると、シオリーは安心したかのように胸をなでおろす。


「そ、そうなんですね……先輩ってモテそうですから……彼女でもいるのかと」


「俺の性格がこれですからね」


「そ、そんなことないと、思いますっ……!その、私は先輩は良い人だとおもいま……す……」


「え、そ、そすか」


 シオリー、君は俺の本音を知らないから、前世を知らないからそう言えるんだ。俺は最悪な捻くれチー牛なんだぞ。さすがに良い人はあり得ねえだろ。俺の心の闇を覗いてみるか?


 そんなやり取りをつまらなそうに見ていたユリアが割って入って、シオリーに問いかける。


「ところで、あなたの名前は?」


「ひゃう!?え、えと……シオリー……ですっ……」


「シオリー、珍しい名前だね。私はユリア。よろしくね?」


 ユリアはそう言ってシオリーに手を差しだしたところ、「ひう!」と明らかにビビって、また俺の後ろに隠れた。


 魔法に関しては天才なのに、ビビりすぎてなんかおもろいな。天才ってどこか抜けてるってイメージあるけどまあ、合ってるのかもな。


 で、ユリアは悲しむでも驚くでもなく、懐かしむような目でシオリーを見る。


「なんか、村にいた時の小さい頃のチー君見てるみたい……」


「……」


 その通り過ぎて何も言えなかった。




 ---




 その後はユリアとは誤解も解けたので、いつも通り接してくれる。マジで焦ったよ、ユリアからあんな禍々しいオーラが出せるなんて……。


 残りの夏休みは特に何も起きることなく、ただ残酷に時だけが進んだ。ああ、残酷だ、人の顔を見たくない。


 ちなみに、残りの夏休みの期間は、無詠唱の練習をしていたくらいだな。初級の魔法はすべて無詠唱化することはできた。中級はそれなりに複雑になるので練習は必要だが、今のところは何とかなりそうだ。


 シオリーには感謝しかないな。これで自分の身を守るための手段が増えた。せっかくの異世界だ。イケメンに生まれることもできたし、最期まで生き残りたいからな。


 それに、ユリアの気分で再びデート?に誘われることもあったな。ゴロゴロしてるなら出かけようよ!って。暇だから了承するも、正直乗り気ではなかった。


 いや、こんなにかわいい子とデートっぽいことができるんだから、絶対に嫌ってわけでもないんや。でも、人目とか、人混みとか、やっぱ嫌なんだわ。


 あと女子と関わること自体が未だにリスクだし、やっぱり怖い。ユリアであっても、それは変わらない。


 そして夏休みも終わり、レッドも俺の実家から帰ってきた。目つきも体つきも、特段変わったわけではないが、きっと剣の腕は上達しているのだろう。


 そんなこんなで始業式が終わり、またいつもの授業が始まった。長いようで、短い夏休みだった。





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