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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第2章 学園1年編

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第69話 少女の葛藤




 ユリア視点





 私は部屋で一人、ため息をついてベッドで横になっていた。


 昨日はチー君と喧嘩をした。喧嘩という喧嘩は、小さい頃から初めてだったかもしれない。


「ひどいよ、あんなの。あそこまで言うことないじゃん……」


 チー君はずっと、このネガティブすぎる性格を治したいと言っていた。私もそれに協力しようと、まずは人と関わることから始めたほうがいいと思って、レッド君にも相談して、ギルド体験させたらどうだろうってなった。「あいつは自分をひどく言うけど、実はすごい奴だから、活躍して自己肯定感も上がるかもしれないぞ」ってレッド君は言ってて、私もうなずいて納得した。


 正直、私も勝手に応募していいのかなあって思ってたけどね。せめてチー君に相談してからのほうがよかったかな……でもそれだと絶対拒否されてただろうし……。


 それに対しても怒ってはいたけど、問題は「分かるよ、チー君の気持ち」といった後の豹変ぶりだ。


 夏休み、私が両親の死の報告に落ち込んでいた時、チー君はずっと私のそばにいてくれた。何も言わずに2日間くらい、ただ隣にいてくれた。チー君は普段、何事にも興味もなさそうにしてるくせに、その日は口下手ながらも、チー君自身の意見をくれて、私を慰めてくれた。


 そのギャップみたいなものに、頼りがいを感じた。もともとチー君はかっこいいのもあって、改めてチー君の顔を見ると、恥ずかしくて目を合わせられなかった。なんか、一瞬ドキッとして、そわそわというか、もうよくわからない感覚だったことは覚えてる。その時、この変な感情に戸惑っちゃったっけ。いまだによくわからない。


 でも、チー君が私のために、ここまでしてくれたって思うと、私もチー君を支えなきゃって思った。


 なのに、昨日はあんなに言われた。わざとだろとか、嫌がらせだろって……。かなりショックだった。本当にチー君のためを思ってやったことだったのに……。チー君が前世でどれだけつらい思いをしたのか、チー君の震える拳や表情、しゃべり方を見れば、分かるくらいだった。なのに、「知ったようなこと言ってんじゃねえよ」って逆切れされた。


 ……はあ。ため息しか出ないよ。昨日と今日で、チー君と話していないし顔も合わせていない。すごく、心に穴が開いたような、日常のピースがひとかけら足りないような、満たされない感情に駆られる。なんでだろう、いや、必然だろうか。


 だって、今までずっと一緒だったんだから。守ってもらうため、なのは前提にあるけど、チー君に私の話をしたり、たまにチー君が話しかけてくれたり、料理を振舞ったり、魔法を教えてもらったり……それがいつもの”当たり前”だった。


 人はきっと、当たり前が日常から消えて、初めて喪失感に気づく。大事だったことに気づくんだろう。


 むぐ~……仲直りしたいけど、ちょっと許せない……。チー君もひどいんだもん、言いすぎだもん……。私はむくれてベッドに顔を突っ込んでいた。


 しばらくして、いつもの夕食の時間になる。


「あ、夕食の準備しなきゃ」


 私はそう呟いて、隣のチー君の部屋に行こうとしたが、立ち止まる。今は喧嘩中なんだ。いつもの癖みたいになってるんだもん。


 チー君って、一人でご飯とか作れるのかな……。ていうか、チー君って私が起こさないとずっと寝ていそうだしなあ。……ああもう、最近チー君のことばっかり考えちゃうじゃん。


 頭を抱えていると、部屋の玄関のドア越しにノックが聞こえた。……誰だろう。神声教団?いや、そんなわけ……でもいつもチー君が人を疑いすぎるせいで私まで慎重になってきたような……。今までの私なら普通に出てたかも。


 私は忍び足でこっそりとドアに近づき、ドアの小さい穴から誰かを確認すると、レッド君だったみたいで胸をなでおろす。私はドアを開けた。


「よっ、ユリア」


「うん。とりあえず入って」


 私はレッド君を招き入れた。レッド君はちょっと緊張して顔をこわばらせながら入っていく。別に私の部屋に何もないのになあ。何をそんな緊張してるんだろう。


 レッド君を椅子に座らせて、私もベッドに腰を掛ける。


「で、どうだった。チー」


「あ、ああ……その、やっぱり怒ってたよ」


「まあそうだよなあ、あいつの性格考えたら」


 レッド君はどうやらチー君のことが心配だったようで、その確認に来たみたいだった。


「で、ユリアの顔を見るに、今は喧嘩中って感じか」


「う、うん」


「そ、そうか……なんかすまねえな」


 にしても、レッド君は部屋に入る時からずっとぎこちないというか、目もあまり合わせないし、どうしたんだろう。


「なあ、今はチーって隣にいないんだよな?」


「う、うん。今は出かけてるけど……」


すると、レッド君は深呼吸を一旦挟んでから、私をまっすぐ見た。そして予想外の言葉を発した。


「ユリアは、俺と、その、付き合うつもりは……ない……のか?」


「ほ、ほえ?」


「だ、だから、俺と付き合ってほしいって」


 あれ、これって告白?え?レッド君から?わ、私のことそういう目で見てたの?私はレッド君は嫌いじゃないし、いい友達だと思ってはいたけど……そもそも、恋愛感情ってものがよくわからない。できるだけ、傷つけないように、私はレッド君に告白を断る。


「その、ごめんなさい。私まだ、そういうの、分からなくて……」


「あ、いや、まあすぐじゃなくていいんだけどさ」


「いや、その、レッド君をそういう目で見たことなくて」


「それはそれでちょっと傷つくな……」


「あ、ご、ごめんね!?でも本当にそう思ってて、なんて言えばいいのか――」


「どうせチーだろ」


「え?あ、いや、チー君も、その……」


「図星か。顔赤いし」


「ち、違うもん!違わなくも、ない、けど……やっぱりまだわかんない、こういうの」


 私はチー君の名前を言われ、急に顔が熱くなってしまった。チー君は確かに好きだけど……こういうのが、異性として好きってことなのかな……。レッドは首筋をかきながら話す。


「まあ、俺も元々、ユリアを狙ってお前らに話しかけたんだけどな」


「ほえ!?そ、そうだったんだ」


「一目惚れってやつだな。付き合ってないっぽかったし、正直チーはおどおどしてたし、俺にもチャンスありそうだと思ってたんだけどな。剣に自信もあったし、良いところ見せてお前を奪ってやろうって。だけどあいつ、俺よりも剣も魔法もできて、妙に人生経験があるような難しいことも知ってて。


 正直内心あいつのことは嫌いでもないけど好きでもなかった。

ただ、剣技大会の時、負けた俺に慰めるでもなく現実突きつけてきて、でもどうすればいいのか考えてくれて、大金出さないと受けれない剣聖の稽古も受けさせてくれるらしくてさ。なんだかんだ良い奴で、完全に男としても俺の負けって感じがして、正直、ユリアが告白断ってくれて安心したわ」


「安心したの?」


「なんか、裏切るみたいで罪悪感出てきてさ。そりゃ、成功すればそれでよかったとも思ってるけど。ユリアとチーが距離置いてる今なら、とも思ってたんだけどな」


 レッド君は、少しすっきりした顔で椅子から立ち上がって、ドアに向かって歩いていく。


「それじゃ、邪魔したわ。俺も共犯みたいなもんだけど、まあ、仲直り頑張れよ」


「あ、うん」


 そのまま顔を見せないようにレッド君は部屋を出ていった。


 仲直り、しないとだけど、あんなにチー君も怒ってたし、どうすればいいんだろう。はあ。ため息ばっかり。とりあえずご飯作りながら考えようと思って、キッチンに向かった。





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