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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第2章 学園1年編

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第59話 今日もサボって魔法練習




 学園に戻ると、学園祭の準備で忙しそうだった。ある人は素材を運んでいたり、演劇みたいな練習してたり、料理の研究してたり、魔法を使ってたり。こういうのやっても、なんも楽しくないんだよな、俺にとっちゃ。


 廊下を歩いていると、すでに1年生からして、熱々のカップルが廊下を歩いていた。おうおう、見せつけてくれんなあ、マジで殺してやろうかなあ。顔を見てみると、やはりイケメンだ。ああ、どの世界でも同じだな。こんな現実みてりゃブサも拗れるわ。


 こんなのは今日だけではない。何度もカップルは見ている。1年ではまだ少ないが、2,3年の生徒はけっこう出来上がっていた。もちろん、彼氏の方は皆、イケメン寄りのフツメンかイケメンしか存在しない。イライラすんなあ。どこ行っても顔。


 この世界は女子も普通に戦えて強いし平等に稼げる、だから、女子の男子に求める恋愛要素として、圧倒的な”強さ”、もしくは”容姿”がより顕著に要求されるのだろう。


 前世では”容姿”が前提条件で、そこから”性格”と”収入面”を見てくるからな。顔はどの世界でも重要な要素ってことだ。就活で言えば、書類選考=顔みたいなもんだな。


 だって容姿を見るのは人間の本能だから。女はトキメキを重要視する本能だから。ブサイク見てきゅんとするか?って話だ。俺が女でも絶対にしないな。


「師匠、目が怖いっすよ」


「え?あ、ああ、その、あ、あれ見てください」


「え?」


 俺は適当に窓を指さしてネクラの視線を誘導した。その隙に、俺は風魔法を床に設置して、あのカップルたちを転ばせた。女子は思いっきりスカートをめくらせて派手に転び、男子も女子に覆いかぶさるような形で転んだ。まさに、ラッキースケベみたいな感じ。プハ、ざまあみろ。そのまま破局すりゃ傑作だわ。


 しかし、そんなトラブルがあっても、見つめ合い始める2人。


「ご、ごめん」


「わ、私もごめんね?私も派手に転んじゃったし……わ、わざとじゃないもんね?」


「あ、当たり前だろ、ほら、手掴んで」


「あ、ありがと」


 男子は立ち上がって、女子に手を差し伸べる。なんか、2人は顔を赤くして、さらに仲睦まじくなったような……。立ち上がり、さらに肩をくっつけあいながら歩き始めるカップル。……。やべえ……殺してええええええええええ


「師匠!?あ、あんな奴らほっといていきましょ!?ほら!サボるんすよ!俺達最強っす!」


 ネクラが俺の殺意にビビって、俺の手を引っ張って無理矢理屋上に連れて行かれた。俺は数十分はイライラが収まらずに拳を握り続けていた。


 とりあえずネクラと屋上に行って、いつものようにネクラに魔法を教える。


 教えてる合間に、リングを使い、魔法を発動する練習を行った。今までは、素手から初級魔法程度なら放出できていたし、魔法剣や杖といった、比較的おおざっぱでも魔素を通しやすい大きな道具を介しての放出だった。


 でも、この小さなリングを介して魔素を放出するため、緻密な魔素操作が必要になる。杖の詠唱なら誰でも魔法は使える。


 しかし、詠唱時の魔素の動き、そういうものを自力でコントロールする必要がある。


 それがなかなか難しかった。昔からけっこう体調とか、そういうのには敏感だったので、多少は魔素の流れが分かりやすいのが救いだったが、それでも難しい。


 数時間後、中級風魔法なら、威力は弱いが出せるようにはなった。まあ、このリングで強力な魔法を出すつもりはないし、器用に立ち回れれば十分だと思ってる。


 精神力を使ってかなり体は疲れを感じていて、俺は疲れ果てて、そのまま床にあおむけで倒れ込んだ


 強力な魔法なら、魔法剣から魔法を発動し、軽い魔法なら、動きながらリングを介して器用に魔法を発動する、という戦い方がベストだろう。


 ただ、どうしても、詠唱時の声や口の動きで読まれたり、そもそも詠唱に気を取られたり、なかなか難しい。だからこそ、魔剣士と言う職業は難しいのだろう。


 まあ、リングの扱いは続けてれば上達するだろう。適当でいいんだ。はやく習得するに越したことは無いけど、そもそも戦い自体は好きじゃない。だって怖いじゃん。


 ヤンキーとか不良みたいないかつい奴と戦うとか恐怖でしかない。前世のトラウマもあるしな。最悪、ユリアを置いて逃げるかもしれん。そんな状況にならなければ一番いいんだけどな。


 そんな感じで、学園祭の準備期間中は、屋上でネクラとサボる日々が続いていた。




 ------




 そう言えば、部屋でもリングの魔力操作の練習をしていたら、ユリアにすごい慌てたような早口でこんなことを聞いてきた。


「チ、チチチ……チー君って、その、結婚してたの!?」


 意味わかんなかったけど、ユリアの視線からこのリングを見ていたことで察した。この世界でも”結婚指輪”と言うものがあるんだな。


 俺は誤解を解くために事情を説明した。


「あの、そもそも学生のうちじゃまだ結婚できないし、えっと、これ、魔素を介して魔法を発動するためのただのリングです」


「え?あ、ああそうなんだ!びっくりしたよ……」


「そもそも俺みたいな陰キャに結婚相手できるわけないですからね」


「あっそ」


「?」


 ユリアはむくれて自分の部屋に帰っていった。なんで不機嫌になった?ほんと分からん。


 ちなみに、結婚は学園を卒業すれば認められるようだ。この世界では、”学園の卒業”がこの世界での成人の扱いみたいなものだな。


 結婚か……。前世ではちょうど結婚する人が激減している時期で、少子化まっしぐらだったな。


 娯楽や趣味の多様化、ジェンダー的な男女での対立、ルッキズムのエスカレート、収入減少と物価上昇、単純に自分の時間が奪われることへの嫌悪、恋愛市場の異常な高望み、など色々と原因があるからな。


 まあ俺も結婚願望とか全くなかったな。もちろん、チー牛だから相手がいない。できない。寄ってこない。逆に冤罪でっちあげられるリスクがある。あれ?目から汗が……。


 この世界では、結婚する人はさすがに前世の世界よりは多い印象だ。前世より単純なこの世界では、様々な要因は絡んでこない分、恋愛にリソースを割けるのだろう。学園で相手を見つけて、卒業後に結婚、もしくはギルドでの出会いが多い。


 俺はふと、ユリアを見る。ユリアとなら、結婚……はハードルが高いが、付き合うくらいなら、楽しそうだけどな、優しいし、可愛いし。ユリアって、マジで2次元の理想のヒロインを具現化した存在だよな。


 ただ、結婚後に化ける可能性もあるんだよな。結婚して、ユリアの本性がむき出しになるのが怖いしだるいしめんどくさい。結婚しても、ずっとイチャイチャなままなら……どれだけ幸せか。


 いや、そもそもそんな夢は見るな。現実を見ろ。誰が俺みたいな根暗陰キャと付き合いたい女がいる。いくらイケメンで第一印象をクリアしても、性格が極端にひどければ意味がない。



 はあ……だりいな。


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