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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第2章 学園1年編

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第47話 チー牛同盟の結託?




 そいつは、顔に怒りを浮かべながら俺に”小声で”文句を言ってきた。


「何なんだお前は!?いきなり俺の邪魔しやがって!このクソイケメン野郎が!あ?お前らみたいな恵まれたやつらが、俺みたいな底辺の人生を邪魔してるんだ、お前らの幸せのための生贄になんてなるかよ!」


 おう……めっちゃ言ってくるじゃん……。でも、俺はその態度に安心感を覚えた。こうやって本音を言ってくれるのはありがたい。何より、前世の俺と考えがそっくりすぎて。やっぱりこいつも、苦労しているんだなって。


 だからこそ、俺はこいつを救わなきゃいけない。俺も小声で説得し始めた。


「それだけ分かっているなら、そんな自殺行為はやめてください。あの主席美少女に告白しても、90%フラれます。そもそも、あの人と何か関係はあったんですか?」


 そういうと、こいつは唇をかみしめながら、話し始める。


「あの人は、いじめられた俺を、かっこよく助けてくれた。俺はそれでひとめぼれして……助けてくれるってことは、俺に少しは気があるってことだろ?」


 おう……めっちゃ勘違いしとる。あれ?こいつって意外にも現実は見ないタイプ?いや、恋は盲目というし、恐らくこいつは目の前の感情に流されてまともな思考ができてないんだ。


「よく聞いてください。恐らく、あの人は君になんも興味もありません」


「は?ふざけんな!リオさんの事、ね、狙ってんだろ?だから俺を邪魔してきたんだろ!」


「いやいや全く興味ないです。気強そうだし絶対無理」


「リオさんの悪口言うな!」


「あ、え、すいません……」


 こいつの気迫に思わずビビッて謝ってしまった……。ていうか、ちゃんと説明をしないと。


「あの首席は、正義感が強いだけです。困っている人がいれば助けるタイプです。そうすれば、周りが自分を見る目が良い人というイメージが付きます。簡単な話です。自分のために、他人を助けただけ。君自身には、興味はありません」


「……」


 こいつは押し黙る。俺は説明を続ける。


「それに、女子は好きでもない奴からの好意を気持ち悪がります。それも……君のような、その、えっと、あまりフツメン以下、の人からは……特に」


「ぐ」


「生物学的に女性は健康的な容姿に加え、自分より強い男を好む傾向があり、不健康そうな不細工は感情的にも生理的にも無意識に嫌悪するのが現実です。全員とは言いませんが、あくまでそういう傾向が高いです。私顔じゃないし~とか言って無意識に選別してる可能性が高いです」


「ぐ」


 非常に言いにくいが、諦めてもらうために俺は真実を言うしかない。こいつがフラれて、絶望して、社会的に終わらないためにも。


「もしそれを不快に感じて、周りに言いふらされれば、君の社会的立場は一瞬で落とされます。噂は簡単に広がります。君がリオに告白した、なんてことは」


「……でも、やってみないと、わからない、けど」


「今後のリスクと、今の感情を天秤にかけてください。勝算があるんなら、俺も文句は無いです。俺は君みたいな、人生を狂わせた人間を何人も見て来た。俺はそうなってほしくない。そんな無謀な行動をするのは勇気でもなんでもない、現実を見れないただの馬鹿です」


「さっきから、堂々とよく人の悪口言えるな……ふざけんなよ?お前が恵まれてるからって、好き放題言いやがって!ていうか……俺も何となく、それくらい分かってたわ……でも……」


 気持ちは痛いほどわかる。俺だって、前世でこんな理不尽いろいろ経験した。弱者は、理不尽にさらされ、恵まれたやつはその犠牲の上に成り立つ。これはだれにも変えられない。俺も、今世でイケメンになって痛感した。今のところ、人生上手く行きすぎてる。前世に比べればな。


 こんなコミュ障のままでも、何とか友達もできたし、誰にも邪魔されずに過ごせてる。この世界は理不尽だ。環境や遺伝子、運でここまで人生に格差が生まれるのだから。


「そこで何をこそこそと話している」


『ひっ!』


 突然俺たち二人に声をかけてきたのは、先ほどあそこで立ち止まって待っていた、リオだった。リオは冷ややかな視線を俺たちに向けていた。強者のオーラってやつか……?


 隣にいたチー牛がリオに思い切って口を開いた。


「あ、あの、俺、えっと、その、前リオさんに助けていただいた……ブサというんすけど……」


 俺は思わず吹き出しそうになった。こいつの名前ブサなの?


 リオは特に表情を変えることなく、一瞬ブサを見た後、口を開いた。


「……誰だ、君は。私が助けた?君の顔など覚えていない。君の名前を覚える気もない」


 ブサがショックで気に頭を打ち付け始めた。おいおい、大丈夫かこいつ。


 すると、リオのその視線は俺にのみ向けられ、俺に突き刺さる。


「……お前は、学年10位のチーか。こんなところで何をしていたのだ」


 え?俺の名前を知っている?俺は訳が分からず、隣にいたブサを見たのだが……こいつの目は、俺への怒りと嫉妬で溢れていた。痛いくらい俺を睨みつけていた。なんで?


「なんで俺は忘れられて、お前は会ってすらいないのに名前も顔も覚えられてんだよ!」


 ああああそこですかあああ、俺も分かんねえよ、なんで俺覚えられてんのかなああああ。俺は思わずブサから目を逸らした。


 念のため、俺はビビって声を震わせながらも、リオに聞いてみた。


「あの……」


「なんだ」


「その、初めて会いましたよね?なんで俺の名前を?」


「10位以内の奴の顔と名前は覚えている。だが、お前は実力を隠していると見た。不自然だったからな、全ての試験でピッタリ80点。お前に少し興味があった。それだけだ」


 ああ、実力のあるやつとしか関わりたくない、的なよくいる?奴か。俺はこいつに目を付けられたってわけかあ。いやだわ!めんどくせえことになるだろ!現に今めんどくせえことに巻き込まれてるけど!


 隣でわなわなと怒りに震えていたブサが、一旦深呼吸をして落ち着き、俺の目の前に立って、リオに声をかけた。


「リオさん」


「なんだ」


「その、俺をいじめから助けてくれたあのかっこいい後ろ姿に、惚れてしまいました。ど、どうか、俺と付き合ってください」


 あああああああああ!言っちゃったああああ!俺は止められなかった……。俺は思ったよ、ブサと俺の根本的な考えはだいたい同じ。でも、俺の想定外だったのは、ブサの行動力だ。


 俺には行動力は無い、ただ現実を見て嘆いて終わり、リスクをとにかく回避していたが、ブサはやみくもに突っ込むタイプだ。普通のチー牛にはないものなのに……正直その行動力は尊敬するわ。


 くそ、ブサを救えなかった……。リオは一瞬怪訝な顔をして、すぐに答えを返した。


「無理だ」


「……え?」


「私は強者しか興味がない。それに、好きでもない人からの好意ほど、気持ちの悪いことは無い。お前のような、グズでのろまな弱者は尚更よ」


 こ、こいつ言いやがった、真正面から、堂々と……。まあ、本音を包み隠さず言ってくれるのは、俺からしたら好印象なのだが……。普通の人にとっては地獄のような、言葉が棘のように刺さって耐えられないだろう。リオはそのまま踵を翻して、静かに歩いてその場を去った。


 ブサは、完全に固まって停止していた。ああ、だから言ったのに……。


 しばらくすると、ブサはカクカクっと首を回し、俺の方を見た。そして、ねじが外れたように狂いだし、俺の胸倉を掴んで来た。


「お前のせいだ!お前が、お前が邪魔さえしなければ!しなけれ……ば……」


 ブサは急に動きを止める。感情のジェットコースターかな?ブサはそのまま涙を流し始めたのだ。そりゃそうだ、勇気を出した告白を俺に止められ、それがブサの憎んでいるイケメンで、その目の前で結局振られて、このやり場のない怒りなど、俺に向けたくなるのも当然だ。俺は提案する。


「はあ、俺の顔でも殴って晴らしてください」


「……は?あ、ああ」


 ブサは拳を握る。まあ、こんな貧弱な奴のパンチなんて、この身体なら痛くないだろ。そして遠慮なく俺の顔を殴ってきた。……鈍い音がした。俺は思わず怒鳴ってしまった。


「いってえなこの野郎!」


「いやお前が殴っていいって言ったんだろこのイケメン野郎!」


「あ、はい、すみません」


 いや、思いのほか痛くて……。しかし、今のでイライラを落ち着けたブサは、今度は普通に俺に声をかける。


「ちょっといいっすか」


「はい」


「お前はイケメンなのに、なぜか俺の気持ちや、現実を分かってるような言動ばかりで、本気で俺を止めようとしてきた。俺みたいな奴を何人も見て来たってのもそうだし。お前って、何者なんすか?」


「俺は、前世は底辺を生きて来た転生者……って言ったら信じますか」


「……なるほど。変だとは思ってたけど、そういうことか」


 え?信じた?そして急にブサは俺に頭を下げて来た。


「はあ、さっきは取り乱して、その、すいません。確かに無謀だったかもしんない。俺は魔法も剣もできないし、ブサイクな底辺だから、何となく結果は分かってた。いざ言われると、イラってして」


 そんなブサを見てると、泣けてくるわ。ただブサイクに産まれただけで、才能に恵まれなかっただけで、こんなつらい人生送って。


「ブサ」


「はい?」


「俺は本気でブサに、幸せになってほしいと思ってる。いや、多分幸せなんか望んじゃいない、その、ただ普通に生きたい、それだけっすよね」


「……まあ、はい。俺だって、イケメン共みたいに普通に恋をして、普通に剣や魔法を使いこなして、普通に楽しく生きたいだけ。俺だって頑張った、でも無理なんだよ……」


「俺が、底辺だった過去と、恵まれた今の経験を生かして、ブサを、その、普通に生きられる手助けをしましょう」


「……え?本当?」


「はい。俺だって、前世で散々な思いしてきました。そんな思いさせたくない、むしろ地獄はイケメンが味わえばいいとすら思うがな」


「うわあ、今の一言信頼できるわ。ほんと幸せな奴は地獄に落ちてほしい、こういう奴らって俺の事を努力不足って言ってくんだわ」


 ブサは呆れつつも、まるで仲間を見つけたかのように楽しそうに声が弾んでいた。ブサは改めて俺の目の前に立ち、手を差しだしてくる。


「改めて、俺はブサ・チギュア。お前は?」


「俺は、チー・オンターマ」


 俺も手を差しだして、固く握手をする。底辺と元底辺のチームが今、結成されたのだった。



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