第36話 意外な奴が犯人だった
今日も少し騒がしかった一日を終え、寮に帰ってユリアの飯を食い、疲れた体を癒すために寝る。
あのいじめイベント以降、特にあの赤髪のヤンキーからの接触はなかった。あんな脅迫みたいなこと言われたら、怖くて警戒するのは当たり前だ。
もう就寝時間だ。だからと言って、油断はできない。寝床をあの赤髪が奇襲してくる可能性だってあるのだ。
ここ1週間はずっと警戒はしていた。騎士として一応、ユリアを守らなきゃいけないしな。もし護衛に失敗してユリアを守れなかったら、メイドに殺されそうで怖い……ぶるぶる。一応、目の前で俺の友人(仮)が殺されるのを見るのは気分が悪いしな。
もちろん、自分の身を守るのが最優先だけどね?
ユリアは今日も俺の部屋で飯を作って一緒に食べた後、しばらく休んで自分の部屋に戻る。
「じゃあ、また明日ね。おやすみ」
「あ、はい」
ユリアは軽く小さく手を振って、自分の部屋へと戻っていく。ユリアの部屋のドアが静かに閉まる。
いつもなら俺も寝るところだが、今日は寝るわけにはいかない。寝るふりしてずっと扉の奥を警戒しなければならない。
ユリアの部屋にいてもいい女の護衛でも雇わせた方がいい気がするんだが……そしたら俺もユリアに付きっきりじゃなくていいし。
とりあえず、罪悪感はあるが、スライド式の扉を少し開けて、ユリアの部屋の様子をうかがう。もし覗いてるのがバレたら……俺の社会的地位が……リスクが……。
でも仕方ないじゃねえか、あの赤髪がどんな嫌がらせしてくるか分からんし、ユリアに死なれても困るし。仕方ないじゃん!仕方ねえって!と何度も自分を言い聞かせた。
にしても、暇だなあ。
暇すぎて途中で眠くならないか心配だけど、眠気に関してはエナドリ飲んだし大丈夫だろう。今のところはな。ちなみに、異世界のエナドリはクッソまずい。緑色の液体で、ほぼ薬みたいな味だった。こんな状況じゃなきゃ二度と飲みたくない。
こうやって張り込むのも、1週間経っている。今日も何もなければ、徹夜生活やめよう。俺の勘違いだったってことで。
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2,3時間くらい経っただろうか。部屋の電気もない暗い中で、俺は暇すぎて、脳内で今も覚えている好きだった音ゲー曲をかけながら、何度も座る体勢を変えつつ待っていた。だけど、特に動きはない。視界もずっと暗い中なのでだんだん慣れてきた。
もう寝てもいいかな……。1週間もあの赤髪からの動きが無い。ただ、外の風吹く音が小さく部屋に響いていた。
……結局、勘違いってことか。そう思ったその時、ユリアの部屋の窓から人影が見えた。そして、窓は閉まっているはずなのに、その人影は窓をすり抜けてきたのだ。
あのヤンキー、そんな特殊な能力があったのか?だが、こいつは俺には気づいていない。……あれ?でも赤髪にしては少し小柄なような……。髪型のシルエット的にも全然違った。
まあいいや。どちらにしろこいつは不法侵入だ。俺はこっそり、服に仕込んでいたミニサイズの杖を取り出し、小声でアイスニードルの詠唱を始めた。詠唱しながら、扉の隙間に杖を突き出す。
そのまま、詠唱を完了させ、侵入した人影に向かって4本の氷の棘を飛ばしていった。侵入者に容赦はしねえ。そして肉に突き刺さる鈍い音が小さく響いた。
「な!?ぐ、ぐおお……いてえええ!」
見事に両手両足に命中し、そのまま壁にドンッと激突した。奴は痛みに発狂していた。相手はバレないように入ったはずなのに、まさかこちらが攻撃されるなんて思わんだろう。
俺はすぐに扉を開けてユリアの部屋に飛び込み、そいつを拘束しようとした。
しかし奴はこちらに気づいた。痛みを耐えながら、奴はナイフを腰から取り出し、こちらに一瞬で投擲していた。俺は頭をすぐに横にずらして躱す。奴は俺の魔法で手をけがしているからか、狙いもブレブレですぐに反応できた。
杖を持ち直し、再びアイスニードルで奴を追撃する。しかし今度はアイスニードルを見事に短剣で捌き切った。
俺はその隙を逃さず、蹴りで奴の短剣を弾き飛ばす。奴は武器を失うが、またナイフか何かを取り出そうとしていたので、すぐにその手を足で踏んで、ナイフを離したところですぐにナイフを部屋の奥に蹴り飛ばした。
奴の表情は暗くて見えないが、ついに、観念したように戦いの意思は無いと、両手を苦しそうに上げた。……終わったか?
ああマジで緊張した。冷静を装っていたが、実際は心臓がバクバクで、手も震えていた。俺は壁に寄りかかって、安堵のため息をついた。てか、相手ナイフ持ちだぞ?恐ろしすぎるだろ。
とりあえずもう安心だろうと、部屋の光魔法の魔道具のスイッチを付けて、辺りが明るくした。
まず目に付いたのは、ベッドの上で、シーツをぎゅっと握りしめ、何が起きたのか分からず震えながら俺を見つめるユリア。パジャマ姿可愛いね。
でも今はそれより、侵入してきた犯人だ。俺は窓の下を見てみたが、そこで手を挙げて床にへたりこんでいたのは、赤髪ではなく、意外な人物であった。あの時のいじめから助けてあげた陰キャ君だった。




