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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第2章 学園1年編

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第28話 剣と魔法の授業はだるかった




 昼休みも終わる頃、俺とユリアはレッドと別れ、教室に戻って端っこの席に着いた。俺はユリアに小声で近づきすぎないくらいに耳打ちする。


「あの、魔剣士のことは伏せといてください」


「え?なんで隠すの?」


「変に目立ちたくないので、あと、どうせ馬鹿にされる」


「レッド君はバカになんかしないと思うよ?むしろ応援してくれる。チー君の努力はちゃんと認めてくれるよ」


 俺は”努力”という言葉を聞いて、ぴくっと眉をひそめた。


「は?努力?何の話ですか」


「え、だって、村にいた頃、チー君はお父さんと剣の稽古頑張ってるところずっと見てたし、魔法だってお母さんに習ったって。すごいと思ったもん」


 ……ユリアには俺が努力しているように見えていたのか。でも、あれは違う。ただの暇つぶし、そして自己防衛のために過ぎない。生き伸びるために当たり前のことは、努力なんかじゃない。


 剣も魔法も、憧れから始めたただの趣味。娯楽も無いゲームもないこの世界でやることが無いからやっていただけだ。


 勘違いしないで欲しい。俺は、前も言ったが、”努力”という都合の良い言葉が嫌いだから、あんまり使ってほしくない。


「いや、努力なんて気持ち悪いことしてないから」


「き、気持ち悪い?」


「俺はただの暇つぶしで剣と魔法をやってただけっすから。それに自分の身を守るため。変に期待しないで欲しいし、努力なんて言葉は使わないで欲しい」


「……今までのは、ただの趣味?頑張っていたわけじゃない?」


「はい。頑張るとかだるいし、ださいんで」


「……そ。少しチー君の事、ちょっと勘違いしてた。人それぞれだもんね」


「あ、はい」


 ……ユリアの目が、感情を失くしたように、少し冷たくなっていた気がした。多分、ユリアの目には俺が頑張り屋に見えていた印象が、音をたてて一気に崩れ去ったのだろう。


 過大評価もいいとこだ。なぜ、みんな努力とか頑張るみたいなきれい事が好きなんだろうか。


 俺は前世の容姿、環境、才能がゴミだったから、何をしても、何を頑張っても報われず、それを”努力不足”、”自己責任”と言われてきた。


 それを言うやつらは、環境や運、才能に恵まれてるってことに気づいてない。それをあたかも努力だけで勝ち取ったと誇り、他人に押し付ける。自分にできて、相手はできないのなら、それは努力不足だと言い張る。


 人それぞれ得意なものや不得意なものがあるのは、成功する人や失敗する人がいるのは、人それぞれの生まれた環境やフィジカル、容姿、遺伝子、すべてが同じじゃないからだ。努力だけでみんな成功するなら、誰も苦労などしない。


 人は本当はこの世界が才能や遺伝子、環境によることくらいは気づいている。だけどその現実を認めてしまえば、今までの自分を否定されたように感じる。だから努力信者が生まれ、現実を見て逃げてる人を攻撃するんだ。


 まあ、逆もまた然り。俺のような理不尽な現実を認めている人が、努力不足だの言われれば、自分が運や才能のせいでできなかったという事実を否定されたも同じ。だから、現実主義者は努力信者や自己責任論者にイライラして攻撃する。


 人間は根本的にみんな同じなんだよ。否定されたと感じれば、それを認めたくなくて、無駄な争いを繰り返すもんだ。


 俺は頑張っても努力不足だと言われ続け、それから”努力”という言葉が嫌いになった。何に対してもやる気を失った。現実を見るようになった。


 今の俺は才能と環境、運によって人より強くなっただけだ。俺自身の努力など関係ない。


 そもそも、強くなってどうする?何かしたいことがあるわけでもない。人生の目標など無い。前世も同じだった。だから努力の必要性を感じねえんだ。


 ああ、イケメンになっても俺のひねくれた考え方は変わらないんだな。あはは。




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 昼休みの後は、魔法の授業が始まる。


 魔法が何に使われているのかという話から始まり、その後はまず、簡単な水魔法の初級の授業から始まった。


 ちなみに、全員に簡易的な杖は支給されているので、魔素不足には基本はならない。


 俺は、素手でも一応初級くらいなら発動できるが、目立ちたくないので、杖を使って、わざと出力を抑えながら、授業を受ける。


 ユリアは魔法の才能があるようで、難なく授業について行っている。周りを見ると、魔法の発動に苦戦している人もいれば、簡単に発動している人もいる。子供の頃学んだ、”適性”というやつだろうな。


 意外にも、昨日女子に囲まれていたブルーとかいうやつは、全然魔法を発動できていなかった。剣一筋って感じなのかな。


 ただ、授業中ずっと俺はとあることに悩んでいた。それは、担任のリーファが俺をちらちら見てくることだ。人一倍視線に敏感な俺はすぐに感じ取れた。


 これは、どういうことなのか。まさか、実力を隠しているのがバレているのか?いや、ただ俺を見ているという自意識過剰かもしれない。


 昔から自意識過剰すぎて、「キモい顔だから誰かに見られてる」なんて思い込んでは、「自意識過剰だよ」と言われてきた。でも、俺はそうは思えない。視野は広いほうなので何となくわかるんだよ、きもいものを見る視線ってのは。




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 魔法の授業後は剣の実技訓練だ。


 体育着に着替えた後、グラウンドに出て、基本的にランニング、筋トレ、素振りと言ったメニューをこなす。剣も全員に簡易的な木剣が支給されている。


 ちなみに、剣を持ちながらのランニングなので、実践を意識しているのがわかる。今は木剣だが、本来はもっと重い剣を持つのだ。


 魔法師を目指す人には、けっこうキツいメニューだと思う。俺も最初は、剣を持った時重くて挫折しそうになった。


 素振りもみんな、表情は険しく、木剣を振るのに必死で素振りの型をちゃんと取れていない。


 あの憎きモテモテブルーは……余裕そうに、お手本のような綺麗な素振りを見せていた。水の流れのように半円を素早く描いている。予想通り、剣の腕は確かなようだ。


 隣にいたユリアはえい、えい、と可愛く頑張ってた。可愛い子が頑張ってるところを見るのは好きかもしれん。


 俺は、わざと頑張ってるように見せていた。この木剣はいつも使っている剣よりも軽いから、重たそうに振る加減が難しい。父さんの稽古に比べればぬるすぎるぜ。


 と思っていたら、またリーファからの視線を感じる。俺をちらっと見た後、ブルーの方も交互に見ていたな。怖い。


 学園の一日はこんな感じだった。もちろん、今日はユリアとレッド以外の人と関わることなく終わった。


 まあ、こんな感じの一日が続くんならまだいいわ。まだペアでやるような授業も無いし。陰キャに優しい授業だった。


 にしても、ユリアは今日の昼辺りからそっけない態度を見せている。ユリアからの会話も少しだけ少なかった。


 一応、手料理は作ってくれた。……嘘でも「努力してます」って言っておいた方がよかったんだろうか。少しモヤモヤしながら、今日も眠りについた。




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