第27話 初めての昼休みの雑談
昼休みに入った。
みんな持参した弁当を出して自席やクラスメイトで集まって食べ始めたり、また一部の人は食堂に行き始めた。俺はユリアの作った弁当があるので、これから毎日楽できる。
栄養も考えているようだから、健康だ。素晴らしい。良い嫁になるよ、こいつは。
ふと、教室のドアの入り口を見ると、赤髪の青年の姿が見えた。レッドだ。軽く手を挙げてこちらを見ていた。
「チー、ユリア、行こうぜ」
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俺たちは校舎の広い屋上で、それぞれの弁当を出しながら楽しんでいた。
「これ、ユリアが作ったのか?す、すげえな」
「ありがと、料理を教わっただけだから、誰でもできるよ」
レッドはユリアの作った色とりどりのおかずが入った弁当を見て、目を見開いていた。まあ、男子からしたらすごいと思うよなあ。
ちなみに屋上で食べているのは、特に立ち入り禁止というわけでもなく、人目をそこまで気にしなくていいという理由から、俺が二人に恐る恐る提案した。
レッドもユリアも優しいから、嫌な顔せず賛成してくれた。
俺はユリアとレッドの視線にびくびくしながら、ユリアの弁当を食べる。
俺は人前で食事するのが苦手だ。食べてるところは見られたくないし、自分のペースを乱されるような感じも嫌だ。
まあ、寮ではユリアとは仕方なく一緒に食べていた。毎日食事を作ってもらっているわけだし、しょうがないだろう。レッドが弁当のおかずを一つまみしながら、俺に聞いてくる。
「チーは剣士と魔法師、どっちを目指してるんだ?」
ああ、そういえば、考えたことなかった。魔法と剣を一緒に扱えたら、なんて思っていたから、どっちかにするなんて決めていない。
魔法を使いながら剣を振れるように、杖を埋め込んだ魔法剣を作成した。だが、この世界じゃ数少ない魔剣士を目指すなんて言ったら、目立ちそうだしバカにされそうだなあ……。
一応、剣士と言っておこう。
「あ、えっと、剣士を目……指そうかなあって」
「剣士か!俺と一緒だな!」
するとユリアがきょとんとして、俺を見つめた。
「あれ?チー君って、魔剣士を目指――」
ユリアが魔剣士のことをばらそうとした瞬間。
俺はユリアの目の前で思いっきりバシンッ!と両手を叩いて鳴らして、ユリアの言葉を遮った。ユリアは突然のことに肩をビクンとさせた後、固まって動けないようだ。
余計なことを言うんじゃない!魔剣士なんて言ったらバカにされるだろ!
それよりも普段大人しい俺が急に怪奇な行動に出たことで、レッドはドン引きしていた。
「ど、どうしたんだ?お前……」
「いや、その、蚊が飛んでたので……」
俺は首をポリポリとかきながら、その場で思いついた言い訳を言った。ユリアがなぜかそれを信じた。
「え?あ、そうだったんだ、ありがとチー君!」
蚊が飛んでるとか嘘に決まってんだろ、ユリアさん真に受けるな、やっぱ天然だろこの子。
でも、レッドは首を傾げ疑った。
「え?蚊なんて飛んでたか?てかこの時期に飛んでるっけ?」
もうそう言うことでいいや。あとでユリアに他人に俺が魔剣士目指してること言わないように念押ししとかなければ。そこにレッドが声をかけてくる。
「お前ら仲いいよな、やっぱ付き合ってんの?」
『付き合ってない(ません)』
「おお、息ぴったりじゃん」
レッドはハモった俺たちを見て笑っている。バカにされているようでうざい。俺とユリアが付き合うだ?そんなの無理に決まってるだろ。釣り合わなさすぎる。
俺みたいなやつがこんな美少女と?おかしいだろ。きっとユリアも、俺をただの可哀そうなダメ人間として世話焼いてくれてるだけだ。
「まあ、仲いいのはいいことじゃね?こんな人見知りでビビりなチーがユリアに心許してるんだから。俺もチーに信頼してほしいところだな」
「いや、俺はユリアに心許してませんけど」
「チー君!?」
ユリアが俺に心を許してないと言われたからかショックで泣きそうになっていた。可愛い。
でも、なんか仲良さそうにしたら、調子に乗ってるとか思われそうだし、ユリアにもレッドにもあんまり自分は出したくない。
すると、ユリアは「あ」っと、思い出したかのように、俺に聞いてくる。
「そういえば、チー君さっき何描いてたの?すっごい絵上手いんだね」
「え?あ、いや、黒歴史を掘り返さないでください」
「え、黒歴史だったの?」
「さっき黒歴史になりました」
「もしかして私が原因!?」
ユリアをモデルに絵描いてたなんて言えるわけねえだろ?恥ずかしすぎるわ、黒歴史だわ。するとレッドが気になったのか、俺に聞いてきた。
「俺も知りたいな。どんな絵描いてたんだ?」
「断固拒否します」
「な、なんでだよ、友達だろ?」
「絶対陰キャとかオタクだってバカにする」
「し、しねえって」
「お前キッショ、どんな性癖だよってバカにする」
「それは逆に気になってしまうんだが……」
前世のオタクへの偏見はひどかったからな。男がアニメとかゲームとかしてるだけでオタクだの陰キャだの犯罪者予備軍だと馬鹿にされるような世界だった(イケメンは除く)。
よくキモく見られがちな音ゲーマーでも、イケメンが音ゲーをやればかっこいい。なんでこんな理不尽がまかり通るんだよ畜生め。
更に理不尽なのが、女だってジャニーズやイケメンやBL見てキャーキャー騒ぐくせに、ブサイクだけこういうこと言われる。オタクと何が違うんだよ。
結局誰がやるか、これが人間界の心理なんだよ。
どうせこの世界でもバカにされる。多分俺の絵を見たユリアも心の中ではバカにしてる。あ、今世はイケメンだった。ユリア達からはミステリアスな人って思われてんだろうか?
レッドは俺に聞くのを諦めて、今度はユリアに話しかける。
「なあユリア、そんなにやばい絵なのか?」
「え?やばくなかったよ?すごい上手かったもん」
「どんな絵だったんだ?」
おい、さりげなくユリアから聞こうとするな。しかもユリアは悪気もなく答える。
「えっとね、女の子の絵だったんだけど、すっごく可愛く描いてた……あんまり見たことない感じの、独特な描き方だったよ」
「へえ、いつか見てみたいな」
ユリア……後で覚えてろよ。ペラペラと他人のこと勝手にしゃべりやがって……。俺は無意識に拳を握りしめながら、ユリアを睨んでいた。
「ほえ!?チ、チー君怖いよ?」
「……あ、いや、何でもないっす」
その後も適当に話をして(主にユリアとレッドが)、昼休みを終えたのだった。なんか、やっぱ俺いらねえだろ。




