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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第2章 学園1年編

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第25話 今日は色んな意味でドキドキする




 翌日。


「チー君!!!また布団に引きこもってるの!?はやく出てきてってば!!!」


 俺は学園に行きたくなくて、人の目が怖くてまた蓑虫のように布団にくるまってうずくまっていた。


 ユリアがまた俺の布団を引きはがそうとする。このやり取りがちょっと楽しいと思う自分もいる。こんな、人と遊び半分でふざけ合ったことなんてあったっけ。ユリアにとっては迷惑すぎるが。


 でも、行かなきゃいけないんだよな。俺は包まっていた布団を自分ではがして、ベッドの隅に置いた。そしてベッドから起き上がる。ユリアはそれを見て、「え?」と目を丸くしながら、俺を目で追っていた。


「チー……君?」


「だりいけど、行かなきゃ(物語が)進まんし」


「ち、チー君大丈夫!?頭打った!?」


「正常です」


 自分から布団のさなぎから出てきたので、珍しすぎてユリアは俺が頭打ってしまったのだと勘違いしやがった。


「自分から動くなんて……。すごいよ!一歩前進だね」


 ユリアが俺の頭をなで始めた。いつもなら反射的に飛び退くのだが、驚きすぎてその場から動けずに立ち尽くしてしまう俺。


 なんか、お世辞だと分かっていても、頭がダメになってしまいそうになる。少し頬が緩みそうになるのを何とかわざと舌を噛んで、なんとか冷静になる。


 ……クソ、バカにしてんだろてめえ。多分、俺は男だと思われてないのかもしれん。イケメンだから生理的嫌悪がないだけで、チー牛ならそもそもユリアは俺に近づきすらしねえよ。


 俺は少しきつめに睨んでやると、ユリアがハッとして、まるでやけどしたかのようにシュッと手を引っ込めた。


「ご、ごめん!チー君の成長を感じて……。じゃ、じゃあ朝食にしよっか!」


「あ、はい」


 互いに目を逸らし、ちょっと気まずい雰囲気になるが、とりあえずテーブルの席に着く。すでに、パンを焼いた香ばしい匂いが鼻をついていた。


 その後、俺とユリアは、焼きトーストをさくっと平らげて、食器を片付けて、それぞれの部屋で制服に着替える。学園の準備ができて、一緒に部屋の玄関に立った時、ユリアが俺を見てくすっと笑った。


 笑い声に敏感な俺は一瞬、俺をバカにしてきたのかと思って目をぴく付かせてしまった。だがユリアの行動ですぐにドキッとしてしまう。


「チー君、襟、たってるよ?身だしなみは整えないと」


 そう言ってつま先立ちになり、俺の制服の襟をいじり始めた。


 顔が近い、ユリアのかすかな吐息を感じる。じ、地味にエロい……下を見ると、ユリアの襟の隙間から――下着?いや谷間!?見えそう……でもみたのがバレたら社会的に……。


「よし。これでおっけーだね」


 と思ったら襟直しはすぐに終わった。正直ずっと続いてほしかったが。もう少しで見えそうだったのに。バレてないよな?


 にしても、本当に世話焼くのが好きなんだろうな。さっき頭なでてきたときもそうだし。ユリアにとっては俺はただの騎士だけど、ダメなところが多いから、そうしたくなるんだろう。


 本当に、ただの騎士と姫という、それだけの関係なのかもな。今の襟直しだって、恥ずかしげもなく淡々とやっていた。


「じゃあ、行こっか。……どうしたの?怖くなっちゃった?」


「い、いや、なんでもないです」


「そっか」


 言葉にできないような複雑な気分なまま、俺の初めての学園生活が始まった。



 ------



 今日も空は透き通った青空が広がっている。少し肌寒い空気に、ほんのり温かい日差しが照り付けていて絶妙に心地が良い。辺りはまばらに俺達と同じ制服を着た生徒が学園へ向かっている。


 俺達新1年生は濃い青色の制服だが、2,3年はそれぞれ濃い赤、濃い緑を基調とした制服を着ていることに気づいた。まあ、分かりやすくて助かる。


 そんな朝の登校中、レッドが昨日と同じように、急に後ろから声を掛けてきた。


「よ」


「レッドさんですか」


「ハハ、今日はビビらんかったな!」


 そりゃ、今回は最初から気づいていた。


 今日からは常に周囲を警戒して、全神経を触角みたいに研ぎ澄ませているからな。


 父さんとの水流型の剣の稽古で、気配察知や精神統一は軽く習っていた。なのでレッドの気配は簡単に感じられた。まあ、陽キャオーラ注意報が脳に直接響いてたのもあるけどな。


「ああ、あとなあ、さん付けはいらねえよ。友達だろ?」


「え」


 俺はレッドに友達と言われて一瞬戸惑って足を止めた。


「あれ、なんか俺だけ友達だと思ってた?」


「昨日会ったばっかじゃ……」


「そんなことどうでもいいじゃん、俺の事嫌いか?」


「えっと、その、嫌いではないし好きでもない」


「一言余計だ。でもそれならいいじゃん」


 そう言って何の躊躇もなく俺の肩に腕をがしっと組んで来た。一瞬ビクッと身を震わせたが、そこまで抵抗感なかった。なんか、気に入られたみたいでちょっとだけ胸が弾むような気がした。


 そういえば、前世から友達のほとんどいなかった俺には分からないことなのだが、友達の基準というか、どこからが友達なのかが分からない。


 いつの間にか友達になってるパターンもあるのか?自分は友達と思っていても、相手はそうじゃなかったら恥ずかしくね?


 そもそもユリアはともかく、レッドは昨日会ったばかりだ。なんだろ、陽キャが分からない。こいつバカそうだし、嘘ついてるようにも思えないんだよなあ。


「そうだ、昼休みに飯食おうぜ。そこでゆっくりお前の事とか聞きたいからさ」


「あ、はい」


 陰キャの俺が陽キャの頼みを断れるわけないじゃないすかぁ。人の頼みが全部圧に聞こえるの、マジで何とかならんかな。


「私もいい?」


「おう、ユリアだったよな」


「うん、ユリアだよ。ありがとね、レッド君」


「お、おう……」


 ユリアはレッドに笑顔を向ける。ユリアの超絶スマイルには勝てなかったのか、レッドは一瞬目を見開き、すぐに目を逸らした。


 分かるぜ。俺は未だにユリアの最強の顔面偏差値からくる、無自覚スマイルには悩まされるものだ。


「それじゃあな、チー、ユリア」


 いつのまにか、学園の玄関の前まで歩いていたようだ。まあ寮から学園はすぐだしな。レッドは俺たちに別れを告げ、自分の教室へと駆け足で向かって行った。


 レッドを見送った後、俺たちも自分の教室へと向かった。




 ------




 少し早めに教室に着いた。教室に入ると、半分くらいの人が集まっていた。数人固まって、すでにグループを形成しているところも多い。


 さて、俺みたいな陰キャはいるかなあ、と辺りを見回してみる。……まあさすがにいないだろうなあ。陰キャとなら、多分しゃべれると思ったが、陽キャ陰キャ関係なく誰とも話せないんだったわ。コミュ力無さすぎて泣きそう。


 陰キャを探してきょろきょろしていたら、ユリアが物珍しそうに俺を見つめていた。


「誰か探してるの?」


「ああ、いや、陰キャ仲間を」


「うん、なんで?」


 陰キャの気持ちは陰キャにしか分からない。仲間が欲しい。


 陰キャは陰キャ同士陰キャとして緩く接するんだ。って言っても、陰キャが陰キャに話しかけることもきついものだ。


 ちなみに、陰キャと陰キャが出会っても、基本は何も起きない、陰キャは互いに不干渉だからだ。


 陰キャとオタクは違う。陰キャは不干渉なのだ。心ん中ではしゃべってみたい、と思っても行動には移せない。オタクは同じ趣味の人ならガンガン行く(と思う)。


 俺はオタクですらない、正真正銘のチー牛陰キャだったのだ。


 ……てか俺ここまでで何回陰キャって言った?


 しかし俺はようやく見つけた。サラッとした黒髪に、けだるそうな目をした男子生徒が、頬杖をつきながら眠そうにしている。明らかに関わるなオーラを出して教室の窓側の隅っこに座っていた。


 な、仲間だあ……。やったああああ……。でも、な、なんか怖い陰キャだな。関わるなってオーラ出してるし。声かけるのやめとこ。


 それと同時に、あの陰キャをみて、俺は自分で納得した。人が陰キャに声かけない理由、何となくわかった。俺もこんなんだったんだろうな。


 俺も前世では顔や環境が原因で暗くなって、普通の人からは陰キャオーラによって誰からも話しかけられないってことだったんだ。


 でも、逆に良いサンドバッグを見つけたかのように、いじめっ子気質の奴らには話しかけられるとか言う最悪なパターンもあったけどな。


「チー君はあの人が気になるの?」


「え、いや、別に」


「う~ん、気になるなら話しかければ?友達は多いほうがいいと思うよ?」


 まあ確かに友達は多いと楽しいだろうが、俺にとっちゃ一人だけでも十分すぎるのだ。大勢で遊んだときとか、絶対俺だけ浮くだろうし。


 まあ話しかけねえけどな。



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