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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第2章 学園1年編

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第24話 俺達はただの姫と騎士という関係

 


 俺はユリアに、俺をどう思っているのか聞いた。


「へ?いきなりなに?そりゃ、友達だと思ってるけど」


「すみません、そういうのじゃなくて、えっと、性格の話でさ。こんな性格なのになんで俺と一緒にいるのかわからないんすよ。えっと、その……俺のネガティブ発言に実は内心、イライラしてますよね」


 それを聞いたユリアは俺をじっと見つめた後、指を顎に当てて首をうつむき気味に傾げた。ユリアは考える時、指を顎に当てる。以前、俺のいいところを聞いた時もそうだった。


 本当に俺にイライラしていないなら、すぐに返答するはずなのに考え込んだ。図星だな。そりゃそうだろう、女子は面白い話で楽しませてくれる人が好きだからな。


 俺は怖いけど、ユリアの顔を凝視する。その瞬間、ユリアは少し目を反らす。


「……そんなことないよ?」


 言うと思った。優しいユリアは俺を傷つけまいと嘘をつく。もう少し引き出すか。


「嘘つかないでもらえます?」


「いや、う、嘘なんかじゃ」


「じゃあなんだったんですかね、あの考える仕草。ただうざいかうざくないか答えるだけなのに。それに目を逸らした」


「チー君、どうしたの?なんか怖いよ?」


 ……ああ、やべえ。つい熱くなってた。


 けど、顔と声が良いと、怒っても“正当な怒り”に見えるんだな。


 前世なら、今みたいな言い方したら「キモッ」とか「なにこいつ熱くなってんのw」って笑われて終わりだったろうに。


 イケメンって、ずるいよな……。


 そんなことを思った瞬間、自己嫌悪でさらに冷静になった。


 俺はイライラすると言葉遣いも荒くなったり、暴言を吐いてしまう。


 どうせなら、もっとユリアの本性を暴きたくなってしまった。


 ユリアは俺が初めて感情を出したのを見て、怖がって怯えているのか、肩をすくめて俺を見つめていた。


 ダメだダメだ、こんなことで関係を壊したくない。もっと冷静にならなければ。いくら人間不信でも、人や物に当たってはいけない。


「あ、その、すみません、つい。俺ひどい情緒不安定な性格で……。昔も友達なんてできるわけもなかったし」


「昔?」


「あ、ああ、村にいた頃です」


「そ、そうだよね」


 危なかった。昔というのは”前世”の意味だが、ユリアに転生者とはバレたくはない。そして俺は冷静に呼吸を整えてから、提案をする。


「その、嘘はつかないでほしいです。本当に友達なら。その、俺にならどんなひどい言葉とか本音言ってもいいから。まあ、慣れてるし。

 そうやって隠される方が、えっと、嫌なんです。えー、人間、他人の評価を気にして本音は隠すもんだし、隠されるほうが怖いんだよ」


 先ほどまで怯えていたユリアは、俺の言葉を聞いて、肩の力を抜いて口元を緩ませた。


「そう、だったんだね。ごめんね。チー君のことが少しわかった気がする。さっきはちょっと怖かったけど、チー君が初めて私に素を見せてくれたのかなって思って、少し安心した。

 確かに、嘘はいけないよね。チー君をどう思ってるか、何でチー君と関わろうと思ったのか、正直に話すよ。でも、料理冷めちゃうし、先に食べちゃおっか」


「あ、はい」


 テーブルに並んでいた料理をじっくりと堪能する。今日もおいしい。会話は無く、食器のカチャリという音だけが響く、静かな食事が続いた。2人とも食べ終わり、片付けた後、再び椅子に座り、向き直る。ユリアは語りだす。


「えっと、私が元王族だったのは知ってるよね」


 俺はうなずき、それを見てユリアは続ける。


「私が村に来た理由は、最近活発になっている神声教団から逃れるため。お父様とお母様が私を逃がしてくれた。チー君の村は平和だったけど、それでも、不安な日々を過ごしてた。

 どこに神声教団がいるのかも分からなくて、友達も作れなくて、メイドも私をずっと心配してくれて。そんなときに、夢に、神様なのかな、お告げをもらったんだけど……」


 お告げ?それって俺が転生するときに聞こえた奴だろうか?あいつのしゃべり方は胡散臭かった……俺は念のため確認してみる。


「それって、その、なんか胡散臭いしゃべり方してませんでした?」


「そうそれ、チー君も知ってるの?」


「ま、まあ」


「へえ、すごい偶然……。その神様らしき人から、チー・オンターマを頼れ、友達になれ――ってお告げをもらったんだよね。まあ人なのかも分かんないけど」


 俺の名前をわざわざお告げで?つまり、俺を転生させた奴と同一人物なのはほぼ確定だな。


「それで俺なんかに関わってきたんすか」


「俺なんかって……。そりゃ、最初は少し不安だったよ。あの神様、テンション軽くて妙に胡散臭いしゃべり方だったし。ただ、チー君の剣の稽古を見てるうちに、頑張ってる姿見てさ、チー君ってお父様に似ててかっこいいなあって思って、少し興味を持って。でも実際に会ってみたらここまでネガティブな人だとは思わなかったけど……」


 いや、まあ確かに、他の人から見れば頑張っているように見えるのか?


 俺はあくまで、死が身近なこの世界で、自分の身を守るため、暇つぶしのためにやってただけであって、後はかっこよさそうって理由だけで剣の稽古受けてただけなんだよな。


 俺はユリアのお父さんのようなすごい人間ではない。


「それがきっかけ。にしても、あんなに頑張ってるのになんでここまで自信なさそうなんだろうとは思ったけどさ。めんどくさかったし」


「ごもっともです」


「自分でもそう思ってるなら、克服するべきじゃないの?」


「でも」


「でもじゃないよ。私ももっとチー君には自信をもってほしいんだよね。その、私も友達として、協力するから。一緒に、ゆっくりでも治して行けたらいいんだよ。チー君に何があったのかはわからないけど。言わないってことはきっと言いたくないんだろうし。性格なんてそう簡単に変われないことも分かる。だからさ、一緒に、少しずつでも、変わっていこ?」


 ユリアは目を細めて、俺に笑いかけた。あまりに自然な笑顔に戸惑って、無意識に首をポリポリとかいてしまう。でも、逆に俺は気になってしまった。


「……一つ聞いていいですか」


「なに?」


「それは本当に思っていることなんですか」


 正直分からない。なんで、こんな俺に、ここまで協力してくれようとするのか。普通の人ならめんどくさがらないか?友達だから?騎士だから?イケメンだから?ユリアが良い人すぎて逆に分からなくなってしまう。


 ユリアはサイドの髪をクルクルいじりながら、何かを思い出すように答えた。


「友達だからかな。あのね、私はお母様に教えてもらった『人に優しくすればみんな助けてくれる』って教えをずっと守ってるの。

 チー君も、実際、最初はあんなに私にもおどおどしてたのに、前よりは普通に接してくれたし、めんどくさがりなのに、私のために騎士にまでなってくれた。

 お母様の言う通り、チー君は私の騎士を引き受けてくれた。感謝してるんだよ?それに、なんかダメダメなチー君を見てると、私が何とかしなきゃって思っちゃうんだよね」


「そっすか……」


 友達だから、か。ユリアの父さんも母さんも、きっといい人なんだろうな、ユリアを見ていればそう思う。


 ユリアの母さんやメイドの影響かもしれないけど、世話焼きが好きなんだろうか。


 いくらお告げがあったにしろ、普通は俺みたいな奴には関わりたくもないと思うんだけどな。


 多少はその話を信じてもいいが、まだユリアには何か裏があるかもしれない、それは頭の片隅にでも入れておこう。裏切られてもいいように。


「それで、こんなこと、言うのもあれなんだけどさ」


 ユリアは少しもじもじとし始める。


「改めて、友達としてこれからもお願いしたいんだけどね、いいかな」


 ユリアはおどおどしながら、小さな綺麗な手を俺に差しだす。


「あ、えっと、あ、はい……」


 俺もユリアの手に手を伸ばそうとして……手を伸ばせなかった。ただ手を見せて来ただけかもしれん、んなわけあるか!


 とにかく、まだ女が怖い、触って気持ち悪いとか言われたら、冤罪掛けられたら、という考えがよぎる。あと普通に手汗とか色々気になるし。


「もう、握手を求められたらちゃんと握るの!」


 するとユリアは強引に俺の手を引っ張り、握ってきた。


「ひ!?やめ!」


「ちょ、なんでびっくりするの!?ちょっと傷つくんだけど!?まだ怖いの?」


 まさかユリアが強引に手を握ってくるとはな。


 とは言え、ユリアの手は、暖かく、なんでだろうか、女子の手ってなんだか、自分の手に吸い付くような感じがする。そして、小さくて柔らかい。


 前世を含めて、生まれて初めて、女子の手を触った気がする。同じ人間なのに、なんでこんなに違うんだろうか。


 ユリアは満足したのか、俺の手をほどいて、椅子からザっと立ち上がる。


「よし、明日から学園生活がんばろ!」


「え?あ、その、嫌っす……」


「お~い」


 ユリアはため息をつきながら、「むぐ~、大丈夫かなあこの人……」とつぶやいて、自分の部屋に戻っていった。


 俺は改めて考える。ユリアはあの謎の夢のお告げで俺と関わることにしたと言った。もしかしたら、ユリアはただ俺に守ってもらうためだけに、言葉は悪いけど俺を利用するために接近したとも考えられる。


 もしそうなら、少し悲しいものだな。それでも、見せかけの友情でもいいからこれからも友人として付き合ってほしいものだ。



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